血友病Aと脳性麻痺を有し,歯周疾患に罹患している患者に対して,行動管理方法を使い分けながら定期的にOne-Stage Full-Mouth Scaling and Root Planing(OS-FM-SRP)を施行して歯周病管理を行い,管理中の歯周ポケットの深さと歯周病原細菌の変化について調べた.
歯周治療開始前の歯周病検査では全顎的に4mm以上6mm以下の歯周ポケットが認められたため,全身麻酔下で第Ⅷ因子補充後,経口抗菌療法とOS-FM-SRPの併用療法を施行した.術後は1カ月ごとに外来での定期管理を行いながら,6カ月ごとに第Ⅷ因子補充後,静脈内鎮静下でOS-FM-SRPを行った.歯周病再評価では,全顎的に歯周ポケットは3mm以下を維持していた.
歯周病の病状変化を評価するため,歯周病原細菌である
Porphyromonas gingivalis(
P.g),
Aggregatibacter actinomycetemcomitans(
A.a)の2菌種について,継続的な定量検査を行った.
P.gは全身麻酔下OS-FM-SRP直後から菌数が減少し,低値で維持されたものの,術後6カ月で増加した.静脈内鎮静下でのOS-FM-SRPで減少した後,さらに6カ月後に増加する傾向にあったが,再度,静脈内鎮静下でのOS-FM-SRPを行ったところ,菌数は減少した.一方,
A.aは,
P.gよりも菌数が少なかったものの,全身麻酔下SRP後1週間は高値を維持したが,1カ月で減少し,現在までほぼ低値を維持している.
以上より,患者の歯周疾患の病状を把握し,患者の全身状態を考慮して行動調整法と治療方針を決定することが,歯周治療を効果的に奏効させるのに有効であると考えられた.
抄録全体を表示