目的:ジェルタイプの保湿剤の使用は,介助歯磨き後の唾液中細菌数の増加を抑制するか否かについて検討を行った.さらに保湿剤の使用が歯肉上に細菌を残存させているか否かについても検討した.
対象と方法:調査対象者は,24歯以上を有する健常成人17名とした(平均30.0±2.0歳).介助歯磨き時の唾液量の調査は,スクラビング法にて介助歯磨きを3分間行った後に唾液を紙コップに排出させ,電子天秤で重さを測定した.水0.3m
l使用とジェル0.3m
l使用の介助歯磨きは,日を代えて調査を実施した.なおジェルは,「お口を洗うジェル
®」を用いた.調査する24時間前より歯磨きを中止させた.5分間仰臥位にて安静後に口腔内に溜まった唾液を1m
l採取し,細菌カウンタ
®(パナソニックヘルスケア製)にて総細菌数を測定した.同時に定圧検体採取器具(パナソニックヘルスケア製)に装着したルシパックPen
®(キッコーマンバイオケミファ製)で上顎中切歯頰側歯肉部を3往復擦過し,ルミテスターPD-30
®にて発光量(RLU)を清浄度として測定した.その後,ジェル0.3m
lを歯ブラシにつけて,スクラビング法にて介助歯磨きを3分間行った.介助歯磨き後に同様に唾液中の総細菌数の測定と歯肉擦過によるATPふき取り検査にて発光量を測定した.対照として,別日に水0.3m
lを用いて介助歯磨きを行い,同様の測定を行った.
結果:ジェル使用時の唾液量は統計学的に有意差が認められなかった.介助歯磨き後の唾液中の細菌数は,ジェル,水ともに有意に増加した.介助歯磨き後の唾液中の細菌数増加率は,ジェル(中央値35.3%)が水(中央値162.5%)より有意に低かった.介助歯磨き後の歯肉表面上の発光量増加率は,ジェルが76.5%,水は-52.3%で,ジェルは水よりも有意に歯肉表面が汚染されていた.
結論:介助歯磨き時のジェル使用は,唾液中の細菌数の増加を抑制していた.そしてジェル使用は,水使用よりも歯肉表面に細菌を残存させていることが認められた.ジェル使用は,介助歯磨き時の唾液の垂れ込みから誤嚥を引き起こすという口腔ケア関連性誤嚥性肺炎の発症リスクを低下させる可能性が示された.
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