障害のある患者が口腔外科小手術(minor oral surgery,MOS)の適応とされた際,全身麻酔法や静脈内鎮静法での対応が困難な施設ではMOSの実施可否の判断が難しいと考えられる.われわれは,①保護者の同意がある,②一定時間体位を保持できる,③体動コントロールで体位を保持できる,④MOSは30分以内で終了可能である,の4条件を満たす場合にMOSを実施してきた.今回,障害のある患者へのMOS適応について検討を行い,以下の結果を得た.
1.当センターのMOS適応基準を満たした患者は62名で,実施61名,中止1名であった.MOSは難抜歯術が39件と最多で,他に歯根端切除術,口腔内消炎手術などが行われていた.
2.体動コントロール法は介助者による徒手的抑制,抑制具の使用であった.
3.抜去した下顎埋伏智歯は,Pell and Gregoryの分類でClassⅠA,ⅠB,ⅡA,ⅡBに該当する症例のみで,ClassⅢやPosition Cに該当する症例はなかった.
4.中止例の原因は,頰をすぼめる動作により術野の確保が困難となったことであった.
以上より,術野確保が可能なことも当センターのMOS適応基準に加える必要があると考えられた.下顎埋伏智歯抜歯はPell and Gregoryの分類のⅠA,ⅠB,ⅡA,ⅡBに分類される症例であれば外来局所麻酔下に手術可能であると考えられた.
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