日本障害者歯科学会雑誌
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40 巻, 2 号
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講座
宿題報告
原著
  • 横田 誠, 小笠原 正, 岡田 尚則, 牧井 覚万, 望月 慎恭
    2019 年 40 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    衣服の着脱が自立している自閉スペクトラム症児(以下,ASD児と略す)の歯科場面での行動特性は明らかになっていない.今回,浸潤麻酔下の歯科治療場面での行動を観察し,行動特性とその要因を検討した.

    ASD児16名と定型発達児40名を対象に,歯科治療を12場面に区分し,決定木分析を用いて検討した.12場面の行動は,「適応:終始協力的」「やや不適応:体動・会話はみられたが,診療の妨げにならなかった」「不適応:拒否行動があり,診療の妨げになった」に評価した.

    「適応」が定型発達児では87.5%,ASD児が6.2%と有意に少なかった(p<0.01).ASD児では87.5%の者が浸潤麻酔下での歯科治療が可能であった.各診療場面の適応者は,すべての場面において,ASD児は,定型発達児より有意に少なく(p<0.01),「診療台に座る」「開口指示」「口腔内診査」の3場面の適応要因は,移動運動の発達年齢が4歳6カ月以上であれば,適応性を示す可能性が示唆された.ASD児が適応性に最優先される場面は,「仰臥位にする」「説明(視覚支援)」「表面麻酔塗布」「表面麻酔の待ち時間」「浸潤麻酔」「浸潤麻酔の待ち時間」「歯科処置」「座位に戻す」の8場面であり,やや不適応な行動がみられるのがASD児の特性であることが抽出されたが,診療の妨げにはいたらないことから地域での歯科治療は可能であることが示唆された.

  • 朝比奈 滉直, 小笠原 正, 朝比奈 伯明, 石原 紀彰, 山上 裕介, 秋枝 俊江, 望月 慎恭, 朝比奈 義明, 蓜島 弘之
    2019 年 40 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    リドカインテープを表面麻酔として使用した浸潤麻酔の刺入時と注入時の痛みをアミノ安息香酸エチルと比較した.さらに知的障害者へのリドカインテープ使用による浸潤麻酔時の外部行動について評価したので,報告する.

    はじめに,健常成人9名に対してリドカインテープとアミノ安息香酸エチルの表面麻酔効果をVASとカテゴリカルスケールにて評価を行った.次に,知的障害者20名を対象に,浸潤麻酔時に外部行動として体動,発声,啼泣の有無,表情の変化を評価した.

    健常成人の調査では,リドカインテープ群が刺入時と薬液注入時に「違和感がある」と評価し,「少し痛い」とした者は存在しなかった.アミノ安息香酸エチル群は刺入時に55.6%,薬液注入時に77.8%の者が「少し痛い」と評価した.

    知的障害者への浸潤麻酔時は,リドカインテープ群は,体動,発声,啼泣の有無,表情の変化において全員が平静を維持したが,アミノ安息香酸エチルでは,平静を維持しなかった者が存在した.1つ以上の項目で不適応行動がみられた者を不適応と判定した場合,リドカインテープ群は不適応が0%,アミノ安息香酸エチル群で不適応が50%であった(p<0.05).したがって,リドカインテープは,浸潤麻酔時に痛みを与えず,知的障害者において浸潤麻酔時の不適応行動を引き起こさず,歯科治療時の適応行動を維持するのに有用であることが示唆された.

  • 伊原 良明, 上杉 雄大, 野末 真司, 野口 毅, 高橋 浩二
    2019 年 40 巻 2 号 p. 153-161
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:嚥下障害の診断において嚥下造影検査(VF)は一般的な方法として確立されている.しかし嚥下障害の臨床で重要な情報である患者の姿勢,表情などの情報はVF画像からは得ることができない.今回われわれは,VF画像の情報を補う,検査時の患者の外観画像情報がVFの診断および姿勢評価に与える影響について調査したので報告する.

    方法:本調査では32名の医療従事者を評価者とし,さらに評価者を嚥下治療経験群(12名),未経験群(20名)に分けて検討した.VFを行った患者のうち検査中に姿勢調整法を適用した6症例についてVF画像のみ(VFI)およびVF画像と検査時の患者の外観画像を合わせた画像(VF+R)を2群の評価者に提示し,VFIの場合とVF+Rの場合について,嚥下障害の評価および姿勢の評価の一致率を分析した.

    結果:嚥下治療経験群,未経験群ともに嚥下評価の一致率に関しては有意差を認めなかった.姿勢の一致率に関してはVFIと比べVF+Rでは頸部屈曲伸展,頸部回旋,体幹側屈とも診断の一致率が有意に高い姿勢を認めた.頸部屈曲伸展では経験群と未経験群の両群において頸部の姿勢調整法のみではなく回旋,体幹の側屈を併用した姿勢においてVF+Rの一致率がVFIより有意に高かった.

    考察:本調査によりVF時の患者の外観画像の記録は嚥下機能の評価に影響を与えることなく,文章,口頭での情報共有と併用することで,より正確な摂食姿勢を共有するための手段として有用であることが示唆された.

  • 笠川(谷口) あや, 関根 伸一, 田中 健司, 廣瀬 陽介, 村上 旬平, 秋山 茂久
    2019 年 40 巻 2 号 p. 162-168
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    障害者歯科治療において,さまざまな理由により円滑な歯科治療を行えない場合がある.行動療法や体動コントロール法では適応困難な症例に対し薬物的行動調整法が選択される場合が多い.また,加えて薬物的行動調整を使用する症例はしばしば日々の口腔衛生管理に難渋する症例も多い.しかしそのう蝕リスクは明らかでない.そこで今回われわれは,薬物的行動調整患者にCaries Management by Risk Assessment(CAMBRA)を用いたう蝕リスク評価を行ったので報告する.

    当部および関連歯科施設で薬物的行動調整を行った30名を対象に,CAMBRAを適応し,う蝕リスクをLow,Middle,High,Extreme(以下L,M,H,E群と表記)の4段階で評価した.30名の平均年齢は31.7歳(SD 11.3歳)であり,う蝕リスクはL群2名,M群5名,H群14名,E群9名であった.う蝕治療群(なんらかのう蝕治療を行った群)は15名(L,M群0名,H群8名,E群7名),非う蝕治療群(う蝕治療以外の歯周治療や口腔外科治療のみを行った群)は15名(L群2名,M群5名,H群6名,E群2名)であった.う蝕高リスク(H,E群)を示したう蝕治療群の患者数は,非う蝕治療群の約2倍であった.L,M群におけるリスク判定時およびリスク判定後初回来院時の歯科処置の主体は,薬物的行動調整下の非う蝕治療であった. H,E群ではリスク判定後初回来院時に通法での治療あるいは転医となった患者は7名であった.

    薬物的行動調整が選択された患者において,CAMBRAによるう蝕リスクは,う蝕治療群のほうが非う蝕治療群よりも有意に高いという結論が得られた.

症例報告
  • 隅 希代子, 関根 伸一, 財間 達也, 森崎 市治郎, 村上 旬平, 秋山 茂久
    2019 年 40 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    異食症(pica)とは,非栄養,非食用の物質を少なくとも1カ月以上の期間繰り返し摂食する障害であり,しばしば知的能力障害や自閉スペクトラム症,統合失調症などに合併する.今回われわれは,歯科定期検診のために受診した際の容態確認時に異食による食道閉塞を疑い,内視鏡的に異物を確認し摘出を行った症例を報告する.

    患者は知的能力障害と異食のある男性で,受診日の10日前より発熱を繰り返し,経口摂取不全と嚥下困難が続いていた.歯科受診時,随伴する施設職員から経過を聞き,異食による食道閉塞を疑い緊急に内視鏡検査を行ったところ,食道入口部に異物を認めた.麦粒鉗子で異物を慎重に摘出し,粘膜の損傷や異物の残存がないことを確認した.異物は約40×60×5 mmの扁平な板で,床材の一部である疑いが強かった.異物摘出直後に経口摂取不全は解消した.異物摘出後,入所施設内の破損や欠損状況の確認を行い,必要に応じて修理を行った.また施設職員が異食状況を観察,見守りながら安全管理を徹底している.外出時に木の葉や土を異食することを防げないことはあったが,以後の5年間は食道閉塞などの深刻な事態は発生していない.

    知的能力障害者らが故意に異食した場合,本人からの自覚症状の訴えがない場合も多く,診断が遅れ,重篤な合併症を発症する危険がある.異食を軽減するために,また早期発見により必要な処置を行うために,多職種間で連携し情報を共有することが不可欠である.

  • 加納 慶太, 村山 高章, 山本 俊郎, 金村 成智, 吉松 英樹, 秋山 茂久, 森崎 市治郎
    2019 年 40 巻 2 号 p. 174-178
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    類をみないスピードで超高齢社会に突入したわが国では,今後,顎関節脱臼の発生頻度の増加が予測される.特に,脳血管障害や認知症を伴った患者の場合,自己整復はかなり困難であり,二次的に習慣性,陳旧性へと移行することもある.その場合,長期間の閉口障害が続き,正常な咀嚼や嚥下が困難となり,低栄養状態や誤嚥性肺炎発症のリスクが増加するため,早期に対応することが重要である.今回,著者らは脳血管型認知症患者の習慣性顎関節脱臼に対し関節結節切除術が有効であった1例を経験したので,その概要を若干の文献的考察とともに報告する.患者は74歳男性,起床時に顎関節脱臼状態を入所施設職員が発見し,加療目的にて受診した.顔貌所見では開口状態を呈しており,左右耳珠前方に陥凹を認めた.画像所見では,両側の下顎頭が関節結節の前上方に位置していたが,骨形態に明らかな異常所見は認めなかった.初診日に徒手的整復を行ったが,その後5週間に計9回,再脱臼を主訴に当科受診し,その都度徒手的整復を行った.そのため,臨床診断を習慣性顎関節脱臼とし,関節結節切除術を行った.術後17カ月経過するが,再脱臼などを認めていない.習慣性顎関節脱臼に対する治療法は多く報告されているが,その選択に関する基準はなく,対処に難渋することも多い.治療法の選択に際しては,患者の全身状態とその病態に関する十分な診査,および社会的背景を考慮する必要がある.

  • 大久保 真衣, 三浦 慶奈, 西岡 さやか, 杉山 哲也, 石田 瞭, 福田 謙一
    2019 年 40 巻 2 号 p. 179-184
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    重症筋無力症(myasthenia gravis;MG)は自己免疫疾患である.今回われわれは,口がうまく動かない,呂律がまわらないことを主訴に来院し,後にMGと診断しえた1例を経験したので報告する.患者は23歳女性.2017年秋頃から夕食時の口唇閉鎖困難と長時間発話時の構音障害を自覚し,2018年5月に某歯科病院摂食嚥下リハビリテーション科診療受診となった.全身の易疲労感の訴えはなかったが,体重減少を認めた.受診時は午前であったため,構音障害はほぼなく,口唇閉鎖可能であった.また嚥下機能もRSST 3回,MWST 5点で正常範囲であった.しかし夕食の摂取には1時間を要し,スープ類は手で口唇を押さえて摂取しているとのことであった.口腔機能検査として舌圧測定を行ったところ,16.0 Kpaで平均値から大幅に低下していた.また聖隷式嚥下機能質問紙では3項目該当で「摂食嚥下障害あり」と判定された.このため嚥下内視鏡検査を行ったところ,鼻咽腔閉鎖不全および嚥下後咽頭残留が顕著であった.この口腔機能低下症に関する口腔機能検査と嚥下内視鏡検査の結果からMGを疑い神経内科に診療依頼をしたところ,MGとの確定診断を得た.本症例はMGの特徴である日内変動が認められたが,初診時の口腔機能不全の訴えから口腔機能検査と摂食嚥下機能評価を行うことで専門医科に依頼することができ,早期のMG診断につながった.

  • 長沼 由泰, 高橋 温, 星 久美, 猪狩 和子
    2019 年 40 巻 2 号 p. 185-190
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    障害のある小児の口腔外傷の発症頻度は定型発達児よりも高く,障害が重複するほどその受傷頻度は高くなる傾向があり,治療法の選択にあたって制限を生じることがある.

    今回,われわれは知的能力障害児の下顎骨骨折に対し保存療法を選択した症例を経験した. 症例は重度の知的能力障害とてんかんを有する14歳女子で,転倒により顔面を強打し,受傷2日後に左頰部の腫脹と開口障害を主訴に受診した.画像診断により左側下顎骨関節突起部骨折と下顎右側小臼歯部骨体部の不全骨折を認めた.歯の脱臼や破折,軟組織の損傷は確認されなかった.関節突起部に関しては,軽度の下顎偏位がみられたが,ガイドラインに即して筋機能訓練と経過観察による保存的治療の適応と判断した.骨体部は不全骨折であったが再転倒などによる完全骨折への移行の可能性がありなんらかの固定術が望まれた.これらの方針を保護者に説明したが,重度の知的障害のため機能訓練や固定術への適応は困難であり保護者も積極的介入を望まなかったため,軟食摂取と開口制限指示のみの経過観察を選択した.受傷27日後,開口量は自発的に30 mmを認め,食事量も回復し,CT所見で骨折部の骨形成を認めた.受傷119日後には骨体部・関節突起部とも骨連続性の回復が観察され,下顎の偏位は認めなかった.受傷217日後には骨癒着を認め骨折線の消失が確認された.受傷後1年経過し開口障害や顔面非対称を生じることなく良好な治癒が得られた.

  • 田中 恵, 加藤 篤, 鴨狩 たまき, 松井 かおる, 横山 善弘
    2019 年 40 巻 2 号 p. 191-199
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    重症心身障害児(者)が日々安楽な日常を維持するため,個々の障害のニーズを的確に把握し特性に応じた適切な介入を行うことが必要となる.その際,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:以下ICF)の概念は有用である.今回ICFシートを用いた多職種連携に対する歯科的介入において,歯科衛生ケアプロセスを応用し,有用であった症例を経験したので報告する.

    症例:52歳,男性,障害名:脳性麻痺.主訴:口腔機能の管理.現症:当院重心棟入所者で日常姿勢は右側臥位.右側彎・胸郭変形は中等度,筋緊張,四肢拘縮あり,努力性呼吸あり.栄養摂取は胃ろう.口腔内状況:口腔乾燥と剥離上皮膜の付着を認める.

    経過および考察:当院のICFシートにて情報収集し,多職種でカンファランスを行った結果,側彎と胸郭変形から呼吸への配慮,分泌物誤嚥への配慮が必要であること,また口腔乾燥および剥離上皮膜と舌苔の付着が問題となった.この点を念頭におき歯科衛生ケアプロセスの手法を用い,収集した情報から介入の優先順位を決定後,口腔ケアシートによる情報共有を図りつつ介入を行った.看護師の技術的な差はあったが,口腔ケアと保湿の励行により唾液の粘稠度が下がり,口腔内の剥離上皮膜の付着はみられず,さらに介入後の肺炎の発症はみられなかった.呼吸状態も安定し,院外療育も可能となった.

    ICFシートを用いた多職種連携において歯科衛生ケアプロセスを用いたことで,円滑な連携,情報交換が可能となり,患者に有益な効果をもたらしたと考えられた.

臨床集計
  • 伊藤 陽子, 小松 知子, 李 昌一, 岩瀬 靖彦
    2019 年 40 巻 2 号 p. 200-208
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    歯科医師と栄養士の協働実態および歯科医師が栄養士に求めるスキルや効果,協働促進の課題を明らかにするため,静岡県駿東歯科医師会,三島市歯科医師会,沼津市歯科医師会の会員219名に調査票を配布し,95名から回答を得た(回収率43%).協働で栄養士に求めるスキルは「摂食嚥下機能評価に対応した栄養状態の評価・判定ができる」ことにより「評価に基づいた食事形態の提案をする」であり,これにより「患者のQOLおよび栄養状態の改善が図れる」効果を期待していた.10名の歯科医師が栄養士との協働を経験しており,頻度は5名が1カ月に1回以上,6名がさらに増やしたいと考えていた.協働(17件)の内容は「嚥下調整食の食事形態の提案・指導」「低栄養の栄養指導」の順で多く,全件でその効果を「とても感じる」と評価していた.また,協働経験のない85名中79名(93%)が「必要があれば協働したい」と考えていた.協働できない理由は「連携の方法や依頼先がわからない」「栄養士に対して歯科との連携や協働のアピールが不十分」「栄養士のできることがわからない」であった.協働促進のためには,栄養士は歯科医師の求めるスキルを身につけること,歯科医師,栄養士の双方において専門分野の相互理解を深めることなど,協働のシステムの充実と周知が必要であることから,地域での多職種連携につながる研修会やワーキンググループの活動が有効であると考えられた.

  • 加藤 喜久, 砂田 勝久, 長嶺 和希, 寺元 平, 真喜屋 睦子, 上地 智博, 真境名 勉, 砂川 恵, 上原 由和, 松本 早世, 新 ...
    2019 年 40 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    沖縄県は,昭和50年9月より口腔衛生センター(現口腔保健医療センター)において歯科医師会が中心となって,心身障害児(者)全身麻酔下歯科治療事業,障害者歯科地域協力医研修会などの障害者歯科治療を行ってきた.平成26年4月にセンターが新築移設され,平成28年7月には全麻事業が終了となった.移転後は常勤医1人体制から,治療医1名,歯科麻酔科医1人を加えた3人体制に移行し受診患者数が倍増した.その結果,受診患者数の増加,障害の多様化,対応法ならびに居住地域などに変化がありさまざまな対応が要求されるようになった。離島をはじめとする僻地での障害者歯科医療も,センターと連携を取りながら地域完結型へ移行しつつあるが,いまだ十分に機能しているとはいいがたい.今後は,県内各地域の病院歯科や口腔外科をはじめ,地域協力医との後方支援システムを研修会や実習などを通じて構築していく必要があると考えられた.

  • 山田 裕之, 田村 文誉, 矢島 悠里, 杉本 明, 辰野 隆, 田村 光平, 水上 美樹, 土方 深雪, 小坂 美樹, 小方 清和, 横山 ...
    2019 年 40 巻 2 号 p. 215-222
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    東京都内の在宅重症心身障害児(在宅障害児)の現状と歯科的要望を把握することを目的に,訪問看護ステーション(事業所)に対してアンケート調査を行った.方法は,東京訪問看護ステーション協議会が掲載している全施設である東京都内の584事業所を対象とし,アンケートを郵送にて実施した.アンケートの回答は,事業所の訪問看護師に記入を依頼した.内容は,事業所が受け入れている在宅障害児の状況,「口腔ケア」「摂食機能療法」「歯科治療」の要望について,小児の歯科訪問診療が行える歯科医院との連携について質問した.回収率は,31.5%(184/584事業所)であった.このうち,92事業所で合計512人の在宅障害児を受け入れていた.受け入れている92事業所のうち,在宅障害児に対応できる歯科医院と連携している事業所は,18事業所(19.1%)と少数であった.在宅障害児に歯科的介入が必要と考えている事業所は,「口腔ケア」では72事業所,「摂食機能療法」では65事業所,「歯科治療」では44事業所であり,歯科と連携している事業所数よりも多かった.今回の調査結果から,小児歯科訪問診療の必要性が示された.しかし,実際に事業所と連携している歯科医院が少ないため,歯科が十分に在宅障害児に対応できていないことが明らかになり,医科歯科連携も円滑に行えていない現状が推察された.

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