重症心身障害児(者)が日々安楽な日常を維持するため,個々の障害のニーズを的確に把握し特性に応じた適切な介入を行うことが必要となる.その際,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:以下ICF)の概念は有用である.今回ICFシートを用いた多職種連携に対する歯科的介入において,歯科衛生ケアプロセスを応用し,有用であった症例を経験したので報告する.
症例:52歳,男性,障害名:脳性麻痺.主訴:口腔機能の管理.現症:当院重心棟入所者で日常姿勢は右側臥位.右側彎・胸郭変形は中等度,筋緊張,四肢拘縮あり,努力性呼吸あり.栄養摂取は胃ろう.口腔内状況:口腔乾燥と剥離上皮膜の付着を認める.
経過および考察:当院のICFシートにて情報収集し,多職種でカンファランスを行った結果,側彎と胸郭変形から呼吸への配慮,分泌物誤嚥への配慮が必要であること,また口腔乾燥および剥離上皮膜と舌苔の付着が問題となった.この点を念頭におき歯科衛生ケアプロセスの手法を用い,収集した情報から介入の優先順位を決定後,口腔ケアシートによる情報共有を図りつつ介入を行った.看護師の技術的な差はあったが,口腔ケアと保湿の励行により唾液の粘稠度が下がり,口腔内の剥離上皮膜の付着はみられず,さらに介入後の肺炎の発症はみられなかった.呼吸状態も安定し,院外療育も可能となった.
ICFシートを用いた多職種連携において歯科衛生ケアプロセスを用いたことで,円滑な連携,情報交換が可能となり,患者に有益な効果をもたらしたと考えられた.
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