小児の日帰り全身麻酔は,患児への心理的影響を最小にし,院内感染リスクを軽減させ,患児や親の満足度を向上し,病床の有効利用や医療費の削減につながるなど,利点が多い.当院小児歯科における日帰り全身麻酔の現状を把握し,その安全性を確認するために,後ろ向き調査による検討を行った.
2018年4月~2020年3月に,日帰り全身麻酔を行った小児歯科症例253例を対象とした.男児176例,女児77例で,年齢の中央値[四分位範囲]は7.5歳[5.5, 9.1]であった.ASA(American Society of Anesthesiologists)PS(physical status)-1が145例,PS-2が108例で,自閉スペクトラム症や注意欠如多動性障害,Down症候群などの染色体異常や先天代謝異常,中枢神経系疾患などに合併する精神・発達障害などの障害児がPS-2の半数を占めた.全身麻酔の適応は,多数歯う蝕など侵襲の大きい処置,歯科恐怖症や低年齢による非協力,治療を要する重度の精神・発達障害による非協力であった.
麻酔時間は1.8時間[1.3, 3.2]で,90%以上の症例で吸入麻酔による緩徐導入に続き,静脈麻酔で麻酔維持が行われていた.手術室退室から帰宅許可までの時間は1.5時間[1.3, 1.7]で,帰宅後24時間以内に救急外来へ受診または電話相談を要した症例はなかった.1例が術後高熱のため帰宅基準を満たせず入院となった.麻酔関連有害事象は8例で,歯科処置中止や予期せぬ入院を要する症例はなかったが,8例中2例で抜管後に一時的な重篤な低酸素症を伴う周術期呼吸器合併症が発症し,麻酔管理上,十分な注意が必要であると思われた.
抄録全体を表示