伏在断層の活動に伴う地殻変動の特徴をまとめ, 活動履歴調査手法の適用性を検討した.
東方区日本内帯や北海道西部など厚い新生界が分布する地域の褶曲構造の地下には, しばしば逆断層が伏在することが認められている. これらは, 中規模~大規模地震の震源となりうる.
このような伏在する逆断層の活動により, その上盤に断層下端までの深度と同じオーダーの幅の背斜変形を伴った隆起が生じる. 折れ曲がった断層の運動は, 複数の褶曲軸や, 階段状の緩傾斜帯を伴う複雑な複背斜構造を作り出す.
こうした伏在断層の活動時期と変位量を明らかにするためには, 活褶曲を横切る新期堆積物の構造や, 段丘面の高度分布から読み取ることが本質的な方法と言える. しかし, 深い深度に伏在する断層や, 初生的に大きな勾配をもつ河川堆積物に覆われる地域ではこれらは適用しがたい. この場合, 副断層の活動, 噴砂や液状化の発生時期など, 地殻変動を示す他の指標を用いることを考えるべきである. しかし, 各方法とも適用範囲が限られているため, 様々な手法を組み合わせる必要がある. 将来, 地質構造や段丘面の変形を基に, 3次元的な伏在断層の形態とすべり量の分布を推定することにより, 強震動予測に必要な情報が得られるようになる可能性がある.
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