応用地質
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40 巻, 2 号
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  • 小松原 琢
    1999 年 40 巻 2 号 p. 60-69
    発行日: 1999/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    伏在断層の活動に伴う地殻変動の特徴をまとめ, 活動履歴調査手法の適用性を検討した.
    東方区日本内帯や北海道西部など厚い新生界が分布する地域の褶曲構造の地下には, しばしば逆断層が伏在することが認められている. これらは, 中規模~大規模地震の震源となりうる.
    このような伏在する逆断層の活動により, その上盤に断層下端までの深度と同じオーダーの幅の背斜変形を伴った隆起が生じる. 折れ曲がった断層の運動は, 複数の褶曲軸や, 階段状の緩傾斜帯を伴う複雑な複背斜構造を作り出す.
    こうした伏在断層の活動時期と変位量を明らかにするためには, 活褶曲を横切る新期堆積物の構造や, 段丘面の高度分布から読み取ることが本質的な方法と言える. しかし, 深い深度に伏在する断層や, 初生的に大きな勾配をもつ河川堆積物に覆われる地域ではこれらは適用しがたい. この場合, 副断層の活動, 噴砂や液状化の発生時期など, 地殻変動を示す他の指標を用いることを考えるべきである. しかし, 各方法とも適用範囲が限られているため, 様々な手法を組み合わせる必要がある. 将来, 地質構造や段丘面の変形を基に, 3次元的な伏在断層の形態とすべり量の分布を推定することにより, 強震動予測に必要な情報が得られるようになる可能性がある.
  • 池田 光良, 三浦 均也, 操上 広志
    1999 年 40 巻 2 号 p. 70-85
    発行日: 1999/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    地下水温は最も有効な環境トレーサーの1つとされており, 地下水の涵養域では平均値よりも低温, 流出域では高温となる. この原理を用いて, これまで地下水流域が明らかにされていなかった北海道美々川地下水域の範囲を次のように推定することができた. (a) 隣接する遠浅川上流域のうち馬追丘陵を除く流域は美々川地下水域に属する. (b) 遠浅川中流域では美々川と遠浅川の地下水分水界が存在する. (c) 西側の境界は西方火山灰台地の90mピークであり, かって漠然と考えられていた支笏湖から美々川流域への漏水は考えにくい. (d) 地下水温から推定された地下水分水界は有限要素法による熱移流拡散解析, 地下水面の位置, および水収支による結果と整合する.
    近年, 地下水温は地球温暖化の指標として注目されている. 本調査地でも, 都市化に伴う地下水温の上昇が見出された. また, 土木工事の大型化に伴い, 地下水流動系規模の環境影響評価が必要となってきている. 今回の調査結果は以上のような目的に対しても, 地下水温調査が有効であることを示唆している.
  • 亀井 健史, 神田 貢, 石原 廣和
    1999 年 40 巻 2 号 p. 86-98
    発行日: 1999/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究では, 汽水域における完新世以降の環境変化と地盤工学的特性を明らかにするために, 出雲平野において連続不攪乱試料を採取し, 地球化学的分析と一連の土質試験を実施した. その結果, 全有機炭素 (TOC), 全窒素 (TN), 全硫黄 (TS) の深度分布を明らかにし, 地球化学的層序の意義を示唆した. また, 完新世における海進, 海退および河川の埋積によって形成された出雲平野の形成過程を明らかにした. さらに, 炭素・窒素・イオウの元素を対象とした地球化学的分析により堆積環境の違いを定量的に評価し, それに地形学的・地史学的な解釈を加えることによって, 理学的, 工学的両見地から出雲平野の形成過程と地盤工学的性質を解明した. また, これまで定性的に考えられてきた土の強度変形特性に及ぼすセメンテーションの効果が, CNS元素分析から得られたCaCO3量によってほぼ定量的に表せることを実証した.
    以上のことから, 地盤が有する広域性と土構造物に必要とされる長期性・安全性さらには自然環境との調和を考えた場合, これまでのように地盤工学, 地球化学, 地理学 (海水準変動), 地形学, 地史学等の個々の分野が個別に研究するのではなく, 境界領域を越えた学際的な研究を行うことがきわめて重要であることを示唆している.
  • 徳永 朋祥
    1999 年 40 巻 2 号 p. 99-106
    発行日: 1999/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1995年兵庫県南部地震に伴って発生した淡路島北部における地下水変動データを用いて, 当該地域の水理特性 (透水係数の変化の割合, 比産出率 (Specific yield)) を推定した. ここでは, 淡路島北部を横断する断面を用い, Dupuit-Ghyben-Herzbergモデルと単純なDupuitモデルを組み合わせることによって現象を表現することを試みた. 計測された断層沿いの湧出量の経時変化と山地部における地下水位の低下を拘束条件として地震前後の透水係数の変化と比産出率を推定したところ, 透水係数は地震後に地震前の5倍以上に増加し, 比産出率は0.3から1.7%程度であるという結果が得られた. また, 本モデルの結果から, 地震前後の湧水の主成分の変化の原因の可能性として, 帯水層への塩水の浸入に伴う深層地下水の排出が考えられた. さらに, 地震直後の湧水量の増加は, 透水係数の増加の割合に非常に敏感であることから, 地震直後の湧水量の計測が重要であることが示された.
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