応用地質
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41 巻, 1 号
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  • 木谷 日出男
    2000 年 41 巻 1 号 p. 2-11
    発行日: 2000/04/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    土砂地山は粘性土, 砂質土, 礫質土および火山砕屑物等の特殊土の総称であり, 低い強度を共通の条件とする. このうち, 粘性土を除く粒状土からなる土砂地山ではトンネル建設上の重要な問題としてトンネル湧水に伴う切羽の流出の発生がある. そのため, 粒状土からなる地山でのトンネル設計では切羽の安定性が必要条件となっている. 筆者は切羽の状態変化を明瞭に区分することを目的として, 施工データの統計手法による分析, モデル実験や数値解析によるパラメータ解析に基づく境界条件の考察を主に砂質土地山を対象として行った.
    本論では, これらの成果に基づき, 鉄道トンネルに適用する砂質土の地山状態の分類法を以下のように提案する.
    [IN]: 切羽がほぼ安定した状態とみなされる地山
    [IL]: 切羽が不安定で, わずかな変化によって流出する可能性のある状態の地山
    [特L]: [IL] よりもさらに切羽の自立性が著しく低い状況にあり, トンネル掘削に支障する重大な状態変化が予測される状態の地山
    [IN] と [IL] の境界値は細粒分含有率 (Fc) により区分し, Fc≧10%を [IN] の条件とする. また, [IL] と [特L] の境界値は相対密度 (Dr) により区分し, Dr<80%を [特L] の条件とする. なお, この分類基準の適用条件として, 切羽中心からの圧力水頭条件をWL<10mとする.
    さらに, 砂質土以外の粒状土の評価に関する実験的検討や複雑な地質構成からなる層状の地盤構造としての特徴の考察から, 土砂地山の分類の手順を提案する.
  • 石原 廣和, 亀井 健史, 中村 唯史
    2000 年 41 巻 1 号 p. 12-23
    発行日: 2000/04/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究では, 全有機炭素・全窒素・全硫黄に代表される元素分析と一連の土質試験結果を基に, 出雲平野神西湖周辺の完新世堆積物の堆積環境とその元素分析結果の地盤工学への応用を検討している. その結果, CNS元素分析結果に基づいた地球化学的層序を明らかにし, C/S比・C/N比・TSが堆積環境評価に有意であることを示唆した. また, 完新世における海進, 海退および河川の埋積によって形成された出雲平野南西部の地盤の形成過程を明らかにした. さらに, これまで定性的に考えられてきた土のセメンテーションの効果が, CNS元素分析から得られたCaCO3量によってほぼ定量的に表され, その値が土の原位置における強度変形特性とよく対応していることを実証した.
    以上のことから, 本論文では地盤が有する広域性と土構造物に必要とされる長期性・安全性さらには自然環境との調和を考えた場合, 今後は個々の分野が個別に研究するのではなく, 境界領域を越えた学際的な研究を行うことがきわめて重要であることを示唆している.
  • 倉岡 千郎, 門間 敬一, 守随 治雄
    2000 年 41 巻 1 号 p. 24-33
    発行日: 2000/04/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    不連続面を直接モデル化する主な解析手法として, RBSM, JFEM, DDA等があり, RBSMとJFEMは基本的に微少変形問題に限られるが, DEMとDDAは大変形挙動の解析に適用できる. そして, DEMは, 剛体ブロックの解析だけでなく, ブロック要素をさらに差分法で離散化することにより連続体の解析も可能なコードが開発されている. そこで本手法を用いて, 実斜面 (岩盤斜面) の解析を行い, 岩盤や不連続面のモデル化方法について検討した.
    一方, 不連続性岩盤斜面の解析は不確実性が高く, 解析により確定的な安全率を判定することはむずかしい. そこで, 実験計画法に基づいた感度解析を行い, すべり面の安全率に対する不連続面の長さ, および岩塊強度の相対的な影響度を分析した. その結果, 影響の大きい要因が確認されるとともに, 相対的に重要でない要因が判定することができた. したがって本手法を対策計画, モニタリング, 調査試験等に反映させることが可能と考えられる.
  • 森 一司
    2000 年 41 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2000/04/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    西アフリカに広がるサヘル地帯においては, ワジ川氾濫原に分布する沖積層中の地下水が乾季のかんがい用水源として重要である. 物理探査により基盤深度や地下水位を精度よく推定することができれば, 井戸掘削の費用や労力を低減することが可能である. 弾性波探査で通常用いられるダイナマイト類は, 本地域で使用することが難しいため, ハンマー起震による小規模な屈折法弾性波探査を実施しその有効性を検討した. 探査結果を既往ボーリングデータと対比した結果, 推定基盤深度と実測基盤深度との相関係数は0.72, 推定地下水位と実測地下水位との相関係数は0.88を示した. 本方法は基盤深度がおおむね20m未満の地域において, 沖積層の厚さや地下水位を予察的に推定する方法として適しており, サヘル地帯における浅層地下水調査に広く活用できるものと考えられる.
  • 長 秋雄, 薛 自求, 高橋 誠
    2000 年 41 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2000/04/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    茨城県つくば市で行われた地下水観測井掘削孔の深度670m付近で, 水圧破砕試験とASR法・DSCA法による地下応力の測定を行った. 水圧破砕試験ではブレークダウン圧が49MPaであり, 水平最小応力と水平最大応力をそれぞれ30MPa, 40MPa程度と推定した. ASR試験では, 最大主ひずみと中間主ひずみがほぼ水平面内に, 最小主ひずみがほぼ鉛直方向に位置した. 鉛直応力を被り圧12MPaとすると, 水平最小応力15MPa・水平最大応力21MPaである. これらの応力値は, 両方法での応力値が異なるものの, つくば周辺で行われた他の水圧破砕法による応力測定結果と調和的であり, つくばの地下400~600m以深の基盤の花崗岩では水平面内の2主応力が鉛直応力より大きい. この地下応力状態は, 国内の地下発電所・トンネル・鉱山での応力解放法による地下応力状態と異なる.
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