応用地質
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41 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 金折 裕司
    2001 年 41 巻 6 号 p. 323-332
    発行日: 2001/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    断層には規模の大小にかかわらず必ず破砕帯が伴われている. 破砕帯の存在は基礎岩盤の安定性に深くかかわってくるため, 大ダムや大規模地下発電所, 原子力発電所など大規模構造物の立地選定や耐震設計を行ううえで, その性状や分布が明らかにされてきた最近になって, 断層破砕帯を構成する物質には, 断層岩という新しいカテゴリーが与えられ, その知見は飛躍的に増加した. 実際の断層調査にあたっては, 断層岩は露頭での肉眼鑑定や光学顕微鏡による観察で容易に分類できるため, 単なる破砕帯という記述だけではなく, 断層岩の種類を明記しておく必要がある. 一方, 断層周辺の母岩内には断層運動の影響を受けたゾーンの存在が知られており, それらはプロセスゾーンと呼ばれている. プロセスゾーンはその外側の母岩に比べ, 節理や小断層, 微小割れ目が数多く発達していることで特徴づけられる. しかしながら, それらの変形構造が断層運動に直接かかわって形成されたものであるのかを判断することは, 困難な場合が多い. プロセスゾーンの存在は, 長期間の地下水流動や物質拡散に影響を与えることが予測されるため, 高レベル放射性廃棄物の地層処分を検討するうえで, その性質を十分に把握しておかなければならない.
  • 向山 栄
    2001 年 41 巻 6 号 p. 333-342
    発行日: 2001/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1995年度以降全国で実施されている活断層調査は, いくつかの地球科学的な調査を組み合わせて, 最終的に地震発生の長期的予測を求あている. 活断層調査結果は, 適切な土地利用や都市全体の耐震性の向上といった, 社会的な意志決定や合意形成による施策のために用いられるので, 調査結果が信頼できる情報に基づいていることが不可欠である. しかし成果を受けとる行政の防災担当者にとって, 活断層調査の最終結果は表現が曖昧で受け入れにくい. また, 結論を得るに至る過程は非専門家にとっては複雑でわかりにくく, 各調査段階でどのような前提のもとでどのような議論がなされているか, 得られた結果は信頼できるかどうかの判断がつきにくい. したがって, 活断層調査の報告書には, 各調査段階における課題は何か, それがどのように解決されたか, 残されている問題は何かを明示する必要がある. また調査結果の不確実な点が結論にどのように影響するかも明示する必要がある.
    また, 予測が確実にできない災害に対する減災の努力を最大限に発揮するには, 調査が行われ正しい情報が提示されるだけでは不十分であり, 関係者の間での信頼できるコミュニケーションが醸成されることが重要である.
  • その現状と展望
    池田 敏明, 久保田 博章, 乗安 直人
    2001 年 41 巻 6 号 p. 343-350
    発行日: 2001/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Up to now geotechnical information has been offered by various organizations but often with differing data content and presentation methods, lack of detail in the data and other inconveniences for users. Amid dramatic improvements in the capabilities of information related equipment a unification of the contents and items that geotechnical information should contain is required. At the same time, in design and similar applications an improvement in reliability is required and there is a desire for statistical processing of geotechnical information that includes formation and sedimentation eras.
    In order for such requirements to be met many aspects concerning the data necessary for geotechnical information need to be urgently considered, as the unification of such data is ongoing. Additionally it is desirable to utilize geotechnical information, rather than only for geological surveys and design, and to combine it organically with geographic information. This paper catalogs the problems posed by these requirements.
  • 藤田 崇, 横田 修一郎, 中筋 章人
    2001 年 41 巻 6 号 p. 351-362
    発行日: 2001/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    多くの急斜面が発達するわが国では, 毎年各所で地すべりなどの斜面変動が発生している. これにより, 人命の損失を含む甚大な被害が生じ, 最大の自然災害の大きな部分を占める. しかし, 斜面変動発生の予知・予測は困難であり, それに伴う災害防止・軽減も十分とはいえない.
    わが国では, 火山地域を除いて公開されたハザードマップは決して多くはない. これはハザードマップ作成にあたって次のような困難さによるものである. それは, 斜面の不安定性の評価の技術的問題ソースデータとそのデジタル化ならびにGISの適用の遅れ, 情報公開の問題, とくに住民との関係の円滑化不足などである. 2001年には土砂災害防止法が施行されるので, ハザードマップの必要性はいっそう高まるであろう. 本稿では比較的進んでいる火山のハザードマップを具体的にとり上げ, 火山噴火の予知・予測, 災害の種類, 過去の災害実績に基づく災害の想定とマップの作成手法, 災害シナリオの想定などを紹介する.
  • -山口県油谷半島を例として-
    久永 喜代志, 金折 裕司
    2001 年 41 巻 6 号 p. 363-370
    発行日: 2001/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    山口県の油谷半島は各省庁の地すべり防止区域が密集する地すべり地帯であり, これまで防止区域ごとに地すべり対策事業が行われてきた. しかしながら, 防止区域ごとに地すべり機構や対策に関する考え方が異なり, 区域を越えて巨視的かつ統一的に評価することができないという問題点をかかえてきた. 油谷半島の地形・地質は巨視的には各防止区域とも共通していることから, 今回, ケーススタディーとして日本海に面する9防止区域を包括する広範囲を対象とした総合的な地すべりの調査と解析を行った. 解析の結果, 過去における層厚50m以上の大規模な地すべり活動を示唆する地質構造とそれに起因した現在の地すべり形態が想定された. それぞれの防止区域においては緩斜面に立地する集落周辺の比較的浅いすべりを対象として調査・対策が行われてきたものの, 防止区域を跨ぐ広範囲を対象とした深いすべりを視野に入れる必要があった. したがって今後の地すべり事業においては, 地すべり所管省庁, 指定区域などの既成の枠組みから脱却して, 地すべりを巨視的にとらえた総合的な地すべりの調査と対策が望まれる.
  • 河内 邦夫, 高橋 宣之, 矢部 和夫, 浦野 慎一
    2001 年 41 巻 6 号 p. 371-382
    発行日: 2001/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    著者らが作った深さ別の見掛け電導度が測れる新しい携帯型電導度計とGPS測位を使って湿原の環境調査を風蓮湿原で行った. 測定位置の確認は, 海上保安庁が運用しているDGPS局を利用するDGPS測位を用いた. 汎用のDGPS機器類, モバイルパソコン, 12Vバッテリ, アンテナ類などを小さくまとめ, アルミ製の背負子を背負って湿原内を歩き回って調査した. 湿原内は林内の一部を除いて視界が開け, 測位精度は電導度測定中はすべて2.5mRMS以下を確保できたと推察された. 今回のシステムによって, 2日間で東西2km×南北0.7kmの範囲の調査が2人でできた. 求めた電導度分布から放牧場, 国道, 風蓮川に近い地区の電導度は, 湿原内部より高く, とくにそれらの縁は最も高かった. 空中写真と簡単な現場踏査によって求めた植生との比較を行ったところ, 湿原内の林のほとんどはこの電導度の高いところにあり, 放牧場と国道に近いところに集中していた. 電導度が高いハンノキ林の湿原への侵入により自然植生している貴重なチャミズゴケ群落が退化していく兆候が見られ今後の注意が必要であることがわかった. 本調査法は, 湿原の保全に対する方策を見出す調査法として有効な方法の一つになると考えられる.
  • 大野 博之
    2001 年 41 巻 6 号 p. 383-386
    発行日: 2001/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 2001 年 41 巻 6 号 p. 413
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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