本研究は, 岡山県中西部の成羽層群 (中生代三畳紀層) に発達する野田地すべりを研究対象とし, すべり面の微細構造, 含まれる粘土鉱物, 炭質物に関し鉱物学的研究を行ったものである.
すべり面の微細構造に関して, 光学的分析法・特性X線化学分析法などにより, 種々の変形構造を観察した. 定方位試料の最大すべり変位を示す研磨片ではリニアメント解析から発達する主要な剪断面を明確にし, 地すべりに伴う流動破砕現象は, X線走査画像でも明瞭に捉えられた.
X線粉末回折結果では, 粘土鉱物としてイラスト, 緑泥石, スメクタイト, バーミキュライト, カオリン鉱物が同定された. 粒度分析結果・粘土鉱物種と深度別分布の特徴を明らかにした. 炭質物のX線粉末回折結果では, すべり面に位置する炭質物の
d (002) 値が, その周囲の炭質物に比較してより小さい値を示し, より結晶度が高いことが明らかとなった.
これらすべり面の微細剪断構造・粘土鉱物・炭質物のX線粉末回折の結果に基づき, 粘土鉱物・炭質物の変遷, すべり面の微細剪断構造を論じ, 地すべりの発達との関係を考察した.
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