応用地質
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42 巻, 2 号
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  • 遠藤 毅, 川島 眞一, 川合 将文
    2001 年 42 巻 2 号 p. 74-87
    発行日: 2001/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    大正時代の中ごろから激しさを増した東京都東部に位置する下町低地の地盤沈下は, 高潮被害の続出や湿地化による疫病罹災の増加等から昭和初期には社会問題に発展した. 一方, 当初, 地殻変動に起因するとされていた沈下原因は, 多くの原因模索の後, 第二次世界大戦終期に地下水の揚水であることが実証され, 昭和30年代半ばから地盤沈下抑止を目的に地下水の揚水規制が施されている. その結果, 地盤沈下は昭和40年代後半から東京都全域にわたり減少する傾向を示し, 昭和50年半ばから沈静状態にある. しかし, 沈下開始から沈静化に至る約70年間, 下町低地の歴史は相続く地盤沈下と洪水・高潮の被害への対応に終始したと言っても過言ではない. 昭和初期における地盤沈下原因の模索, 地下水揚水説の実証, その後の沈静化に至る一連の地盤沈下問題の整理・集約は, わが国の近代科学史, とくに, 公害史のうえで有意義なことと考える. そこで, 本論では下町低地を中心に, 地盤沈下の推移について, その概要を述べる.
  • 井上 基, 山田 琢哉, 田中 元, 北川 隆司
    2001 年 42 巻 2 号 p. 88-100
    発行日: 2001/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究は, 岡山県中西部の成羽層群 (中生代三畳紀層) に発達する野田地すべりを研究対象とし, すべり面の微細構造, 含まれる粘土鉱物, 炭質物に関し鉱物学的研究を行ったものである.
    すべり面の微細構造に関して, 光学的分析法・特性X線化学分析法などにより, 種々の変形構造を観察した. 定方位試料の最大すべり変位を示す研磨片ではリニアメント解析から発達する主要な剪断面を明確にし, 地すべりに伴う流動破砕現象は, X線走査画像でも明瞭に捉えられた.
    X線粉末回折結果では, 粘土鉱物としてイラスト, 緑泥石, スメクタイト, バーミキュライト, カオリン鉱物が同定された. 粒度分析結果・粘土鉱物種と深度別分布の特徴を明らかにした. 炭質物のX線粉末回折結果では, すべり面に位置する炭質物のd (002) 値が, その周囲の炭質物に比較してより小さい値を示し, より結晶度が高いことが明らかとなった.
    これらすべり面の微細剪断構造・粘土鉱物・炭質物のX線粉末回折の結果に基づき, 粘土鉱物・炭質物の変遷, すべり面の微細剪断構造を論じ, 地すべりの発達との関係を考察した.
  • 佐々木 靖人
    2001 年 42 巻 2 号 p. 101-113
    発行日: 2001/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1997年鹿児島県北西部地震における森林の崩壊防止効果を, 幼樹林と周囲の成樹林の崩壊分布の比較で試算した.
    数年前に植樹された震源付近の幼樹林において多くの斜面崩壊が発生した. 一方, 周囲の成樹林では崩壊密度は相対的に低かった. これは根系の発達の違いによるものと考えられる. 著者は幼樹林に沿った測線上において斜面傾斜, 表土深, 土質を調査し, 崩壊が発生した斜面では非崩壊の斜面に比べ表土が相対的に厚かったことを明らかにした. 安定な最大表土深は, 斜面勾配46度の幼樹林で115cm, 成樹林では140cmと見積もった. 各サイトでの土の粘着力の差, すなわち根系の効果は水平震度0.5, 斜面勾配46度, 土の内部摩擦角30度の場合で, 2.65kPaである. この値は過去の研究において実験的に得られたいくつかのデータと類似し, 水平震度で0.15に相当する. 根系は降雨時と同様に地震時においても表土が崩壊するのをある程度防ぐことができると結論される.
  • 災害データによる素因の分析
    野口 達雄, 杉山 友康
    2001 年 42 巻 2 号 p. 114-122
    発行日: 2001/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    落石・岩盤崩壊の発生には, 地形・地質的なものを主体に多くの素因がかかわっており, 岩石斜面の安定性を評価するためには, これらの素因の考察が重要である. そこで, 鉄道沿線の岩石斜面の保守管理を念頭に置き, より的確で実用的な安定性評価法を提案することを目的として, これらの素因の分析を行った. 前報では既存の安定性評価法で扱われている素因の分析結果について報告したが, 本報告は, 過去の災害データから抽出した素因について分析した結果をまとめるとともに, 前報で報告した分析結果と合わせた考察も行ったものである. その結果, 転落型落石, 剥落型落石, 岩石崩壊それぞれについて, 発生しやすい条件やとくに関連が強い要因を明らかにすることができた. また, 素因には, 落石・岩盤崩壊の発生に直接関与するもののほか, 発生に至るまでの斜面の不安定化にかかわるものと線路への影響度にかかわるものがあり, 安定性評価を行う際には, このことを十分認識することが重要であることも確認できた.
  • 大島 洋志, 松本 雄二, 市橋 学, 柿原 宏
    2001 年 42 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2001/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    南九州には特殊地質のシラスが広域に分布している. このシラス地帯に新幹線を建設する場合, 地下水面下のトンネルの設計・施工法が大きな課題となる. ここではこの課題に対して, 路線選定段階, トンネルの設計段階ならびに施工段階で払った3つの対策, すなわち縦断線形での配慮, 透水性路盤の採用, 切羽の自立性を確保するためのウェルポイントによる地下水位低下工法の採用, について記述する.
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