1990年11月の雲仙普賢岳の噴火や2000年3月の有珠山噴火, あるいは2000年7月の三宅島の水蒸気爆発や火山ガスの噴出など過去幾多の火山活動は人々の生活を苦しあている. 一方, 火山地域では温泉や自然豊かな景観など観光資源に恵まれているほか, 火山地形特有の裾野の広い高原地形が分布しており, ここでは酪農を中心とした農業や, 別荘地などのリゾート施設がある. 火山地域の人々は, これらの自然災害がもたらすリスクを知ることは重要であり, 自然災害の特徴を把握し, 自然災害のリスクをいかに減らすかはわれわれ技術者が考えていかなくてはならない. したがって, 本論文では火山地域の地形・地質の特徴とそれに起因する自然災害とその対応方法を明らかにすることを目的とし, 調査を行った. 調査方法は那須火山地域およびそれに隣接する足尾山地の地形判読と, その地形データの解析・地質情報・土地利用情報の分析およびこれらの総合解析である. これらの解析により, 以下に示す結論を得た.
1) 急峻な斜面の多いわが国の山地部の中でも火山地域では, その山麓に人の生活の場になり得る広い緩斜面があることが定量的に把握できた.
2) ただし, 火山地域の緩斜面はその成因上いろいろな自然災害が発生する可能性があることがわかった.
3) さらに, これらの自然災害は火山噴火に伴うものと豪雨による土砂災害などがあり, それぞれの自然災害に対応しながら, 平穏時の豊かな自然を享受するためには時間の概念を入れたリスク管理や土地利用の工夫が必要であることを提案した.
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