河川敷内の流水は, 旧河道 (主に旧低水路) の影響を受けているといわれているが, 実際のところ定かではなかった. 多摩川の永田地区で, 河川敷内の流水の状況を調査していたが, 橋脚の耐震補強工事により河川敷内の流水に変化が見られた. ここでは, この工事による流水の変化を現地計測から示し, その原因を昔の地図や空中写真などを用いて考察した結果, 以下のことが示された.
1) 河川敷内の流水は, 旧河道の地形が複雑に影響した流水挙動を示し, 橋脚部が1960年以前の旧河道上に位置していたことから, 急激な水位低下を示した箇所が存在した. 一方, 橋脚工事によっても枯渇しなかった池は, 河川敷に隣接する丘陵からの地下水に依存していることが考えられる.
2) 1970年代の河川敷の地形に影響され, 周辺地下水と比較して電気伝導度および水位の高い地下水が別の帯水層となって存在することが明らかとなった. 橋脚工事では, このゾーンの地下水位低下による高電気伝導度の地下水の減少により, その下層の地下水への供給が減り下層の電気伝導度が通常よりも低下した.
3) 旧版地形図, 古地図, 昔の空中写真などを利用した旧河道の地形の解明は, 現状の河川敷内の流水状況を解明する上で重要な手がかりとなる.
抄録全体を表示