2種類の粉砕した黄鉄鉱試料に対する酸化・溶解速度を評価するために, 好気的条件下でのバッチ溶出試験を行い, 溶出水のpH, 酸化生成物である鉄イオンや硫酸イオン濃度の変化を測定した. その結果, 溶出水pHは黄鉄鉱の種類, 固液比, 溶出期間に依存し, 溶出水pHの低下とともに電気伝導度, 鉄イオン濃度, 硫酸イオン濃度が上昇した. 化学形態分析によれば, 鉄はFe (II) イオンとして, イオウは硫酸イオンとして溶出した. Fe (II) イオンや硫酸イオンの溶出速度に関しては, 2種類の試料どちらに対しても溶出初期においては, 固相濃度に関する一次反応によって溶出することが明らかになった. 溶出期間の増加とともに, いったん溶出水濃度が一定になった1つの試料に対しては, その後溶出期間の1/2乗で溶出水中のFe (II) イオンや硫酸イオン濃度が増加することがわかった. これは, 黄鉄鉱内部における拡散が溶出速度を律速することを示唆している. すなわち, 溶出初期においては黄鉄鉱表面からの溶出が, その後黄鉄鉱酸化物層を通しての拡散という2段階の溶出機構によって黄鉄鉱の酸化・溶解反応が進行することが見出された. ここで見積られた拡散係数がおよそ10
-16cm
2/sという低い値であったことから, 黄鉄鉱の酸化・溶解に伴う影響は溶出初期に大きいことが予想された. また, 黄鉄鉱の粒径が小さくなるとともに, pHが低下し, 電気伝導度, Fe (II) イオン濃度, 硫酸イオン濃度が上昇したが, 溶出速度に顕著な相違は認められなかった.
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