花崗岩の代表試料として稲田花崗岩を用い, マイクロクラックの分布異方性を顕微鏡観察で調べたうえ, 線膨張率, 温度上昇によって生成・開口したマイクロクラックの累積量である永久熱ひずみ, 超音波速度, 一軸圧縮強度, 弾性定数, 引張強度を測定し, それらの異方性を定量的に評価した.
稲田花崗岩中のマイクロクラックはR面とほぼ平行の方位に最も卓越して分布しているため, R面に直交のR方向の線膨張率, 永久熱ひずみ, 圧縮強度, ポアソン比はG, H方向のそれらより大きく, R方向の超音波速度, 一軸圧縮載荷初期のヤング率, 引張強度は小さくなっていることが判明した. 異方性の程度は物性によって異なることが確認された. 異方性が最も顕著な物性は引張強度で, 最大値と最小値との差を平均値で除して定義した異方性度合いが約57%であった. 一方, 圧縮強度50%の応力レベルのヤング率は既存マイクロクラックの選択的配向性の影響をほとんど受けておらず, 異方性が認められなかった. 既存マイクロクラックが温度上昇に伴って進展・開口するため, マイクロクラックの選択的配向性に起因する物性の異方性は, 高温あるいは高温履歴の影響を受けて, さらに強まることが明らかになった.
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