応用地質
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45 巻, 3 号
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  • 廣野 哲朗, 中嶋 悟, 林 為人, 高橋 学
    2004 年 45 巻 3 号 p. 118-124
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ナノスケールの空隙 (以下, ナノポアと略す) をもつ岩石および堆積物の溶存イオンの実効拡散係数の評価のため, 多種類の岩石・堆積物を用いてヨウ素イオンの透過拡散試験を行い, ナノポアにおけるヨウ素イオンの拡散係数の測定を行った. その結果, ナノポア中の間隙水を介するイオンの実効拡散係数は自由水中のそれと比べて約1桁低い値を示し, かつ間隙径が小さくなるほど, その値が低下する傾向が認められた. ナノスケールでの薄膜水の赤外分光法による過去の研究報告では, 水の物性は温度・圧力のみならず鉱物表面との相互作用およびその作用が及ぶ範囲にも依存し, その分子構造の緻密化は100nm以下で顕著に現れることが示唆されている. この分子構造の変化が本研究でのイオンの実効拡散係数の低下の原因と考えられる. また, 岩石が100nm以下のナノポアを多く含む場合, 等価管路モデルで透水係数の推定を行った最近の研究報告では, 間隙径による水の粘性係数の変化を考慮することにより実験値により近い値が得られている. このように, ナノポアにおける水分子の構造化に起因する溶存イオンの実効拡散係数および透水係数の低下は, 地下深部での物質移動を定量的に評価するうえで無視できない要素と言える.
  • 幌延深地層研究計画サイトへの適用
    伊藤 一誠, 唐崎 建二, 畑中 耕一郎, 内田 雅大
    2004 年 45 巻 3 号 p. 125-134
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    堆積岩地域の水理地質構造を把握するうえで, 断層あるいはキャップロック構造等の水理的不連続構造の水理特性は重要な要素である. 水理地質モデルの確実性はデータの量に依存するが, 実際には, 調査初期段階の数少ないデータから水理地質構造の概要モデルを作成し, 調査データの増加に従い, 細部の更新等を行うことが望ましい. したがって, 最小限のデータから水理特性を把握する手段を持つことが必要とされる.
    本論では, 間隙水圧モニタリングやボーリング掘削時の孔内水位変化, あるいは揚水試験における平衡水位等で得られる間隙水圧分布に注目し, 核燃料サイクル開発機構幌延深地層研究センター周辺地域を対象として, 間隙水圧分布データを観測データとして用いた逆解析手法の適用性の検討を行った. その結果, 幌延地域において特徴的な間隙水圧分布を再現するためには, 代替モデルとして, 従来の水理地質構造モデルでは考慮されていないキャップロックの存在を考慮することが有効であること, より深部のデ-タを得ることによって, 近傍に存在する断層の水理地質構造を推定できる可能性があるという知見が得られ, 間隙水圧のみを観測値として用いた逆解析は, 水理地質構造を定量的に把握する第一段階としては有効であることが示された.
  • 桑野 健, 佐々木 靖人
    2004 年 45 巻 3 号 p. 135-144
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    豊浜トンネル岩盤崩落事故などで知られるように岩盤崩壊は深刻な影響を与えることがある. そのため岩盤崩壊の防災管理手法としてGISを利用したハザードマップの作成が研究されている. ハザードマップ作成に向けて, 筆者らは多変量統計解析による崩土到達範囲確率予測手法をすでに提案しており, 予測値と実測値との間で良い相関を得ている. 本研究では, その予測手法を実際の道路斜面で使用する場合の有効性を検証するため, 現地岩盤崩壊との比較を行った. さらに到達範囲を検討するうえで重要となる崩土の平面的広がり (崩土形状) について, 予測値と過去の崩壊記録とを対比することにより, 最も精度良く危険地域を表示できる崩土形状を検討した.
    その結果, 提案した崩土到達範囲の確率予測手法は, 崩壊形態が岩盤崩壊であれば適用が可能であることが判明した. また, 崩土形状を到達距離と飛散幅を各辺とする矩形にすることにより, 崩土は概ね累積分布確率40~60%の範囲内に収まることが認められ, その有効性が検証された. ただし, 斜面条件によっては到達範囲が大きく広がる可能性があるので注意が必要である. 今後は本研究の結果を利用して, 岩盤崩壊のGISを利用したハザードマップシステムの構築を目指す.
  • 杉山 和稔, 池田 則生, 齋藤 茂幸
    2004 年 45 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    鉱山の鉱脈データを用いることによって, 通常の地質調査では確認できない断層の規模を推定する方法を検討した. 地下の断層の全体像がよく記載されている鉱山資料より脈幅のデータを解析したところ, 断層全体にわたって脈幅の周期的膨縮パターンが認められた. このような断層の形状を合理的に説明できるいくつかの仮定を取り入れることによって, 外挿法により断層の見かけ変位量と長さを推定した.
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