液化天然ガスの低温貯蔵や放射性廃棄物の地層処分など, 多様な利用が期待されている地下空間の設計にあたっては, 岩石の熱伝導率や熱拡散率など, 熱物性値に関する情報が重要なパラメータとなる.
従来用いられてきた熱伝導率や熱拡散率の測定方法は, 試験片の形状, 加熱条件, 断熱条件などに制約条件が多く, 岩石コアの熱物性値を簡易的に測定することは難しかった. さらに, 岩盤中には多くの不連続面が存在するため, 実際の岩盤の熱物性値については, 岩石コアから得られるデータだけでなく, 不連続面の影響を考慮した原位置での測定が望まれる.
本研究では, 熱物性値の測定原理において, 加熱条件に制約のない任意加熱法を用い, 岩石コアおよび岩盤に対する熱拡散率の測定方法の開発を試みた. この測定方法によれば, 現場から採取された岩石コアをあまり加工せず, 岩石コアを周表面から加熱し, コア内部の温度変化を測定することで, 岩石の熱拡散率が簡易的に求められる. さらに, この測定方法を岩盤に応用し, 岩盤に棒状のヒーターを挿入し, その周辺の温度変化を測定することで, 不連続面を含む岩盤の熱拡散率が簡易的に求められる測定方法も考案した.
本研究で提案する測定方法により, 岩石コアおよび不連続面のない岩盤モデルとしての岩石ブロックの熱拡散率は, それぞれ妥当な値を得ることができた. また, 岩盤の熱拡散率は, 不連続面の影響によって, 著しく低下することがわかった.
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