応用地質
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46 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • みずみちの捕捉と低透水性岩盤への浸透流の検出
    関 陽児, 菱田 省一, 小西 千里, 内藤 一樹, 渡部 芳夫
    2005 年 46 巻 4 号 p. 190-197
    発行日: 2005/10/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    掘削孔周辺の地下水の流動実態, 特に岩盤中の開口割れ目に代表される「みずみち」を通る地下水の動きを把握するために, 新第三系堆積岩と基盤花歯岩を貫く孔井を対象として, 高感度孔内流速検層により孔井内の湧水箇所と逸水箇所の捕捉を試みた. ヒートパルス式孔内流速計を改良して検出可能孔内流速を0.03cm/sまで高感度化した装置で深度1mごとに孔内流速検層を実施し, 孔内流速分布に基づいて孔内の逸水および湧水区間を特定した. その結果, 孔内水の逸・湧水区間の多くは, コアやボアホールカメラで認められた開口割れ目や割れ目の密集部等と一致し, ヒートパルス式孔内流速検層が岩盤中のみずみちの捕捉に有効であることがわかった. 主要な逸・湧水区間を対象にダブルパッカーを用いて透水試験を実施した結果, 逸・湧水部の多くは健岩部に比べて大きな透水係数を示したが, 健岩部と変わらない透水係数を示すケースも認められた. これは, 透水試験で識別できなかったみずみちを, ヒートパルス式孔内流速検層が捕捉しうる可能性を示している. さらに, 低透水性の岩盤中へ浸透する微量の孔内水の検出にも, ヒートパルス式孔内流速計の適用が可能であることがわかった.
  • 林 謙二, 山 真典, 米田 哲朗
    2005 年 46 巻 4 号 p. 198-206
    発行日: 2005/10/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    北海道中央部に位置する幌内層は古第三紀始新世の海成泥岩からなり, その風化状態から強風化帯, 中風化帯, 弱風化帯, 未風化帯の4つに区分されている. その区分は各風化帯における泥岩中の緑泥石の性質変化とも対応する. さらに泥岩中の黄鉄鉱および方解石の含有量は, 風化が進行するに従って減少する傾向を示し, とくに強風化帯ではこれらの鉱物が溶解し除去される. それらは黄鉄鉱の酸化による硫酸生成が原因と考えられる. 亀裂が発達している風化泥岩ほどスレーキング実験による劣化が著しく, 容易に崩壊する. 緑泥石の鉱物学的性質および泥岩の化学組成は, 幌内層泥岩の風化指標になると考えられる.
  • 石田 聡, 森 一司, 土原 健雄, 今泉 眞之
    2005 年 46 巻 4 号 p. 207-219
    発行日: 2005/10/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    新潟県魚沼丘陵の段丘砂礫層分布域の直径2m, 深さ約3mの人工かん養施設で, 1日10時間×5日間の人工かん養試験を2回行い, トレーサー試験, 中性子水分検層, 地下水面付近のラドン濃度測定からマクロポアの卓越流の実態を調査した. 1回目の試験におけるトレーサー試験では, 地下水位の上昇がかん養開始から2.5時間後, トレーサーの到達が3.5時間後, トレーサーピークが9.5時間後に観測された. 2回目の試験における中性子水分検層では, 不飽和帯の体積含水率は数%のオーダーで浅層から深層にかけて徐々に上昇した. 体積含水率の増加域は, 飽和透水係数の違いを反映して, 深度6m以浅では0.9m/h, それ以深では2.6m/hで下降した. 地下水位はかん養開始6時間後から上昇を開始したが, 地下水面付近のラドン濃度はかん養開始7時間後から漸減した. これらの調査結果から推定される卓越流の降下速度は, 飽和透水係数から推定される降下速度の3倍程度であった. 地下水位が上昇し始めた時間は, マクロポアを流れるトレーサーやかん養水が毛管帯に達した時間と推定された.
  • 林 為人, 後藤 忠徳, 中村 敏明, 三ヶ田 均
    2005 年 46 巻 4 号 p. 220-226
    発行日: 2005/10/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    三軸圧縮試験機の圧力容器と比抵抗測定装置とを組み合わせることにより封圧と間隙水圧を負荷した条件における岩石比抵抗の測定システムを構築した. これを用いた測定例として, 最大約30MPaの有効拘束圧までの圧力条件下において, 水深約2,000mの熊野舟状海盆にある泥火山の上部斜面で採取した泥岩試料の比抵抗を測定した. この測定システムでは再現性の高い岩石の比抵抗測定を行うことができた. また, 供試体にジャケットを被せることにより, 供試体が開放状態にある従来の測定法と比べて, 供試体の乾燥の防止や供試体外表面の余分な付着水の除去が簡単にできるメリットがある. 限られた個数の熊野海盆の泥岩試料および間隙水の電気伝導度条件において, 泥岩の比抵抗を測定した結果, 最大約30MPaまでの有効拘束圧までは, 比抵抗の顕著な急変点が認められなかった. したがって, 泥岩などの比抵抗値を左右する要素である粘土鉱物などの電気二重層の性質に間隙水圧が影響を与えないと仮定すれば, 熊野海盆の泥岩試料が過去に受けた最大応力履歴は約30MPaよりさらに大きく, その起源は海底下2kmより以深であった可能性があると考えられる. また, き裂を含む供試体の比抵抗は, 圧力増加に伴ってき裂が閉塞するため, インタクト供試体より圧力の影響を受けやすいことが確認された.
  • 藤井 幸泰, 竹村 貴人, 高橋 学, 林 為人, 赤岩 俊治
    2005 年 46 巻 4 号 p. 227-231
    発行日: 2005/10/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    稲田花崗岩のrift, grain, hardway面にそれぞれ平行に一軸引張割れ目を発生させ, これらを肉眼と鏡下で観察した. 引張割れ目はほとんどが造岩鉱物粒子を切って形成されており, 粒子境界を通過している部分は10%前後である. 引張割れ目の壁面構成鉱物比を母岩の構成鉱物比と比較すると, rift面に平行な割れ目は母岩とほぼ同じ鉱物比をもつ. 一方, grainとhardway面に平行な割れ目の壁面鉱物は, 長石が多く石英が少ない特徴を持ち, 特にhardway面と平行な割れ目で顕著である. これら各面に平行な割れ目の壁面鉱物比のちがいは, 石英と長石内に選択的に分布・配列した初期クラックと, 石英が長石より割れにくい性質が原因と考えられる.
  • 古江 良治, 岩月 輝希, 濱 克宏
    2005 年 46 巻 4 号 p. 232-236
    発行日: 2005/10/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ボーリング孔を用いて深層地下水の地球化学調査をする際に, 排除しきれなかった掘削水の混入, 異なる帯水層の地下水の混合, 大気と地下水の反応や圧力解放の影響など, 地球化学データを取得する上で様々な技術的課題が挙げられる. ここでは, それらの課題の解決手法について調査の実例に基づき検討し, 掘削水の化学成分と蛍光染料濃度を管理することにより, 排除しきれなかった掘削水の混入や, 異なる帯水層の地下水の混合を評価することができることを示した. また, 大気と地下水の反応や圧力解放による脱ガスなどにより地下水の水質が変化する可能性があるため, 原位置においてpHや酸化還元電位を測定することが最善であると考えられる.
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