三軸圧縮試験機の圧力容器と比抵抗測定装置とを組み合わせることにより封圧と間隙水圧を負荷した条件における岩石比抵抗の測定システムを構築した. これを用いた測定例として, 最大約30MPaの有効拘束圧までの圧力条件下において, 水深約2,000mの熊野舟状海盆にある泥火山の上部斜面で採取した泥岩試料の比抵抗を測定した. この測定システムでは再現性の高い岩石の比抵抗測定を行うことができた. また, 供試体にジャケットを被せることにより, 供試体が開放状態にある従来の測定法と比べて, 供試体の乾燥の防止や供試体外表面の余分な付着水の除去が簡単にできるメリットがある. 限られた個数の熊野海盆の泥岩試料および間隙水の電気伝導度条件において, 泥岩の比抵抗を測定した結果, 最大約30MPaまでの有効拘束圧までは, 比抵抗の顕著な急変点が認められなかった. したがって, 泥岩などの比抵抗値を左右する要素である粘土鉱物などの電気二重層の性質に間隙水圧が影響を与えないと仮定すれば, 熊野海盆の泥岩試料が過去に受けた最大応力履歴は約30MPaよりさらに大きく, その起源は海底下2kmより以深であった可能性があると考えられる. また, き裂を含む供試体の比抵抗は, 圧力増加に伴ってき裂が閉塞するため, インタクト供試体より圧力の影響を受けやすいことが確認された.
抄録全体を表示