応用地質
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46 巻 , 5 号
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  • 中筋 章人
    2005 年 46 巻 5 号 p. 250-255
    発行日: 2005/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    「ハザードマップ」とは, 一般的に「災害予測図」とよばれるように, 災害の危険予測情報が表示されていなければならない. この点からすると, 現在一般市民に配布されている土砂災害関係の防災マップは, 「土砂災害ハザードマップ」ではなく「土砂災害危険箇所マップ」である. 土砂災害ハザードマップの研究と実用化が遅れている理由は, 技術的には火山のような噴火災害と比べ災害履歴に乏しく, 水位や流速で被害規模がほぼ決まる洪水災害と比べ発生要因が複雑であることが原因である. つまり土砂災害は, 対象箇所での災害履歴が少ないうえに降雨要因のみならず, 地形や地質要因, さらに複雑な土質や地下水要因が絡み合っていることが災害発生予測を困難にしていると考えられる. さらに, 平成13年4月1日に施行された「土砂災害防止法」では, 新たな危険区域の設定手法が提示されるに至ったが, いろいろ状況が異なる斜面や渓流に対して, 全国一律的に機械的な危険区域設定手法をとろうとしている点に問題がある. このような土砂災害ハザードマップの技術的課題に加えて, その有効利用方法にも大きな問題がある. 平成16年9月末に三重県宮川村で発生した豪雨災害は, 事前に精度の良い土砂災害危険箇所マップが配布されていたにもかかわらず, 避難勧告の遅れなどで多くの犠牲者を出した. この災害では, あらためて自治体の災害に対する意識や経験の少なさから来る「防災力」の弱さと土砂災害危険箇所マップを用いた事前避難訓練の重要性が浮き彫りとなった. 本論では, 「なぜ土砂災害ハザードマップができないのか」に加えて土砂災害危険箇所マップが災害時に「なぜ利活用されなかったのか」についても考察した.
  • 五十嵐 敏文, 斉藤 綾佑, 長澤 俊輔, 朝倉 國臣, 木村 裕俊
    2005 年 46 巻 5 号 p. 256-264
    発行日: 2005/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    黄鉄鉱の酸化に起因する酸性水に対して方解石などの酸緩衝鉱物の影響を把握し, 自然の中和作用を利用することによって黄鉄鉱を含有する岩盤掘削ずりの埋立を合理化するために, 黄鉄鉱を含有する安山岩, 方解石を含有する玄武岩, 黄鉄鉱と方解石の両方を含有する泥岩を用いて, それぞれの粉砕試料に対するカラム溶出試験を実施した. その結果, 玄武岩に対しては方解石の溶解度平衡によってカラム流出水のpH, 主要溶存成分濃度が支配されることが明らかにされた. また, 泥岩に対しては, 黄鉄鉱の酸化・溶解と方解石の溶解とがほぼ同程度の速度で進行し, 黄鉄鉱の酸化生成物である硫酸の中和に方解石が有効に作用することがわかった. しかし, カルシウムおよび硫酸イオン濃度が高い場合には石膏が析出するため, 方解石の中和機能が発揮できないことも明らかにされた. 安山岩に対しては, 方解石は含有しないが斜長石と推定される酸緩衝鉱物が硫酸を消費する現象が認められた. これらの結果は, 黄鉄鉱の酸化・溶解に起因して発生する硫酸を自然の岩石や土壌に含有する方解石などの酸緩衝鉱物によって中和できることを示す.
  • 福田 徹也, 佐々木 靖人, 脇坂 安彦
    2005 年 46 巻 5 号 p. 265-279
    発行日: 2005/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    964か所の崩壊地の空中写真判読により, 崩壊頭部と崩土到達域末端部とでなす見通し仰角の分布確率を求めた. その結果, 誘因, 地域 (地質), 地形状況, 樹木状況の各因子を適切な組み合わせに区分することにより, 見通し仰角の分布は正規性を示すことが明らかとなった. さらに, 降雨による斜面崩壊は, ほとんどの地域 (地質) で地形状況により見通し仰角の分布に差が生じることが判明し, 一方, 地震による斜面崩壊では, 各因子による差は, 有意な差が生じないほど小さいことが判明した.
    これらの結果に基づき, 斜面崩壊による見通し仰角の分布確率を応用したランダムウォークによる崩土到達範囲の確率予測シミュレーションについて検討を行った. このシミュレーションは, (1) 崩壊源からのランダムウォークの移動距離を見通し仰角の分布確率からモンテカルロ法によって求める, (2) その移動距離に応じたランダムウォークを地形に沿って行う, (3) この一連の処理を十分 (100回以上) に繰り返す, ことにより崩土の到達範囲を確率的に予測する手法である. この手法によるシミュレーション結果は, おおむね過去の崩壊事例と整合した. このシミュレーションは表層崩壊のハザードマップ作成の有効な方法となる.
  • 竹村 貴人, Aliakbar GOLSHANI, 小田 匡寛, 鈴本 健一郎, 中間 茂雄
    2005 年 46 巻 5 号 p. 280-286
    発行日: 2005/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    地下空洞近傍における岩石・岩盤の長期的な力学・水理学的安定性の確保を考えるためには, 深部地質環境下でのクリープ破壊およそれに伴うダメージの進展を評価する必要がある・本研究では, 拘束圧と湿潤環境を変化させたクリープ試験を行い, これら深部地質環境の違いが岩石の長期的挙動に及ぼす影響について検討した. 実験の結果, 以下のことが明らかになった.
    1) クリープ破壊直前の試料の内部には微小なせん断帯が確認された. このことより, 3次クリープ開始後の挙動は軸差応力の増加による破壊過程の破壊後領域に相当すると考えられる.
    2) 稲田花崗岩のクリープ破壊は深部地質環境のうち, 拘束圧の増加がクラックの進展速度を鈍化させ, 水の存在がクラックの進展速度を促進させる効果があるといえる.
    3) 雲母系鉱物の含有量が異なる花崗岩類では, その含有量が高いほどクリープ破壊に至る時間は短いことが明らかになった. このような, 構成鉱物の組み合わせによる岩石の力学的挙動の違いは, 岩体のどの部分が長期的な安定性を持つのかを考える際の重要な指標となると考えられる.
  • 楊 普才, 横山 昇, 井上 公夫, 網野 功輔
    2005 年 46 巻 5 号 p. 287-292
    発行日: 2005/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    フィリピン・ピナッボ火山では, 1991年の噴火後, 直径2,000m, 深度600mの火口湖が形成された. この火口湖から流下する放射線状の水系は, 新しい火砕流堆積物層を深く浸食して, 急谷斜面での崩壊やラハールが発生されやすい状態となっている. そのため, 急谷斜面での崩壊や, それに伴うラハールの発生によるピナッボ火山山麓地域の被災が懸念されていた. 2002年7月10日の集中豪雨時にピナッボ火山西麓を流れるブカオ川においてラハールが発生し, 地元の人々の大きな関心が集まった. このラハールの発生原因は火口湖北西斜面に位置するマラオノットノッチの決壊によるものであると推定された. 筆者らはこの推定結果に基づき, マラオノットノッチの決壊メカニズムや, ラハールの発生原因等を観察するためマラオノットノッチ付近でのヘリコプターからの目視および現地踏査を実施した. 本報告では, これらの調査結果をまとめ, 地質的にマラオノットノッチ決壊の原因を考察し, さらに再決壊に対する対策を提案した.
  • 千木良 雅弘, 中筋 章人, 福井 謙三, 棚瀬 充史, 須藤 宏
    2005 年 46 巻 5 号 p. 293-302
    発行日: 2005/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    平成16年10月23日新潟県中越地方をマグニチュード6.8の内陸直下型地震が襲い, 強震動・液状化・斜面変動により, 中越地域のインフラストラクチャーに甚大な被害が発生した. とくに旧山古志村を中心とする山地には, 多数の地すべり・崩壊が発生した.
    地震直後の平成16年12月5~7日に, 日本応用地質学会と日本地すべり学会による第1回目の合同現地調査が旧山古志村を中心に行われ, その成果の一部は平成17年2月5日の合同調査報告会にて発表された. その後, 融雪期の土砂移動状況を確認する目的で, 第2回目の合同現地調査が平成17年5月21~23日に行われた. 現地調査の結果, 新潟県中越地震によって発生した地すべり・崩壊は, 融雪期を経ても全体的に想定していたほど大きな変動は見られなかった. しかし, 今後の豪雨時に大きく土砂移動すると考えられる前兆現象が随所で見られ, 長期的な監視体制整備の必要性が強く感じられた. 本報告は, これらの状況を具体的に示すために, 代表的な6か所の地すべり・崩壊事例をとりあげて記述するものである.
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