応用地質
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46 巻, 6 号
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  • 黒木 貴一, 福塚 康三郎, 野口 貴至
    2006 年 46 巻 6 号 p. 311-319
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    河床高度や河床勾配は斜面の地形形成を考えるうえで重要な地形要素である. 大分県日田市前津江地区を対象に, 空中写真で地形を判読するとともに, 河川縦断曲線および河床勾配の縦断曲線を作成した. この結果から地すべりなどの斜面崩壊地形と河川の地形形態との空間関係を検討した. 前津江地区では195か所の斜面崩壊地形を判読でき, それらは低標高部に多い尾根移動型, 中間的な標高帯に多い末端凹凸型と崖錐型, 高標高部に多い頂部凹凸型に区分できる. 河川縦断曲線の凸の曲線区間は, 規模の大きい斜面崩壊地形の崩落堆により河床の高まった場所に対応する. 河床勾配の縦断曲線は, 崩落堆が河川に影響を与えている凸の曲線区間を, 河川縦断曲線よりも多く明瞭に示せる. したがって, 河川縦断曲線上の凸の曲線区間を調べることで斜面崩壊の影響範囲を簡便に推定できると考える. さらに河床勾配の縦断曲線を作成することにより, その影響範囲をより明瞭に示すことができる. またGISソフトと地理情報を使用して, 短時間で河川縦断曲線などを描画できた.
  • 永田 秀尚, 阪口 透, 小嶋 智
    2006 年 46 巻 6 号 p. 320-330
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    20万分の1「岐阜」図幅の範囲について, 地すべり地形や線状凹地のような不安定地形の分布と地形・地質がどのような関係を持っているかをGISを用いて解析した. その結果, 手取層群・美濃帯石灰岩のように地すべり地形の発達しやすい地質単元があることが明らかとなった. 逆に白亜紀花南岩のように地すべり地形の発達しにくい地質単元もあった. 全国的に花崗岩類は地すべり地形が発達しにくい岩相であると考えられているが, 解析範囲における新第三紀やジュラ紀の花崗岩では地すべり地形が発達しやすい. また, 地すべり地形とは独立に地形図から抽出された線状凹地は, 地すべり地形と関係をもっもののほか, 地すべり地形に先立って発達するものもあり, 両者はともに斜面の不安定度の指標となる地形であることが明らかとなった, また, 多くの線状凹地の形成は浸食小起伏面の開析にともなうものである可能性が高いことを示した.
  • 50m-DEMによる自然災害評価の限界と期待
    太田 岳洋
    2006 年 46 巻 6 号 p. 331-340
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    鉄道や道路などの長大線形構造物に対して自然災害の危険性を評価するには, 広域的かっ客観的でさらには経済的な調査が望まれる. そこで, 最も容易に取得可能な地形情報である国土地理院発行の数値地図50mメッシュ (標高) (通称: 50m-DEM) による自然災害の危険性評価の可能性を検討することを目的に, 三浦半島全域について50m-DEMを用いた地形計測を行い, 求められた地形特性値から三浦半島における地形的特徴と斜面崩壊地の地形的特徴, それらと地質の関係について検討した.
    その結果, 各地形特性値の頻度分布の特徴は, それぞれの地層の岩相を反映していると考えられ, 地形特性値から斜面崩壊箇所の地形的な特異性などを抽出することは困難であった. このため, 50m-DEMを用いた地形計測から個々の斜面の崩壊などの災害に関する危険性を評価することは困難であると考えられる. しかし, 50m-DEMは広域に均一な精度のデータであることや細密なDEMに比べて圧倒的に安価であることなどから, 広域的な一次スクリーニング手法としての有効性について, さらに検討する必要がある.
  • 福塚 康三郎, 森 正明, 岩尾 雄四郎, 黒木 貴一, 大成 和明
    2006 年 46 巻 6 号 p. 341-346
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究では, 佐賀平野北西部の標高10m以下の低地において, 地形と土地利用の変遷を明らかにし, 既存の文献資料を用いてクリークと表層地盤との関係を検討した. その結果, 軟弱地盤とクリークの分布はおおむね一致することが指摘され, クリークは表層地盤の推定可能な地形要素の一つであることが示された. さらに, クリークの一部は農地整備や都市化に伴い, 改変もしくは埋め戻されているケースがあるため, 旧地形情報による地形判読の重要性を指摘した.
    道路計画を検討するうえで, 新旧地形情報を活用して表層地盤を推定することは, 概略設計段階における有効的な地盤評価手法である. とくに, 旧地形情報は, コスト縮減やPI (パブリックインボルブメント) におけるコミュニケーション資料として活用することも可能である.
  • 太田 岳洋, 八戸 昭一
    2006 年 46 巻 6 号 p. 347-360
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    数値標高モデル (DEM) を用いた地形計測手法とその応用例に関する文献調査を行った. DEMを用いた地形計測の現状と今後期待される応用項目および問題点は, 以下のとおりである.
    1) 既往研究において計測された地形特性値は, 局所地形量, 区域地形量および流域地形量に分類される. さらに, 区域地形量は区域統計量, 区域計測量および空間変動分析により求められる値に分類され, 流域地形量は流域統計量と流域計測量に分類される.
    2) DEMによる地形計測の応用例としては, (1) 地形の判読と分類への応用, (2) 地形発達論や地形変化モデルへの応用, (3) 地質構造や岩相分布の把握への応用, (4) 自然災害評価の試み, などがある.
    3) DEMによる地形計測は, 地形学, 地質学および自然災害評価などへの応用が期待できるが, 各計測に関して必要なDEMの格子間隔や標高の精度および有効な地形特性値を明らかにすることが今後の課題である.
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