スチールワイヤ型ケーブルセンサ (SWCS) は, 通常のスチールワイヤの心材部に振動検出用ケーブルセンサを巻き込んだセンサで引張強度が大きく, 岩盤斜面に敷設した場合は小礫~岩塊の落下衝突振動を検知するので岩盤崩壊の予知に有効である. 現行の計測システムでは, 斜面に格子状に敷設したSWCSの一端に全天候型小型増幅器を接続し, 一旦増幅した信号を信号線経由で計測室へ伝送している. この場合, 斜面の小型増幅器接続部で故障しやすい. また, その際, 斜面上での修理作業は危険を伴う. SWCSの信号を無増幅で直接計測室へ伝送することができればシステム全体の故障発生確率を低減でき安全性も高まる. また, 複数のSWCSを並列あるいは直列に接続し計測チャンネル数を減らすことができれば故障発生頻度の低減・経済性の向上をはかれ, 実用性が高まると考えられる.
本研究では, 「斜面上に増幅器を取り付けず, どれほどの長さの信号線をSWCS~測定室に介在させ得るか」, 「複数のSWCSを並列, 直列にグループ分けした場合, 静電容量の増加に伴う出力低下が問題になるか」を理論計算, 室内試験, フィールド試験で確かめた. 得られた主な結果は次のようである. 1) 回路方程式を用いた計算, 室内試験から, SWCS一端に増幅器を取り付けないで同軸信号線を延長できる長さは少なくとも120mである. 2) フィールドで各SWCSの一端に同軸信号線100mを接続した場合でも, 信号を増幅しないで測定室へ伝送でき, 落石を検知できる. 3) SWCSの一端に同軸信号線100mを接続した条件下で, 複数のSWCSを並列・直列に接続, グループ化した場合においても落石挙動を検知できる.
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