応用地質
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47 巻, 2 号
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  • 寺本 雅子, 嶋田 純, 國丸 貴紀
    2006 年47 巻2 号 p. 68-76
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    北海道北部幌延町で掘削された500~700m級の8本のボーリングより採取された岩石コアから, 各深度の間隙水を圧縮法にて採取し, 酸素・水素安定同位体比, 電気伝導度などの地球化学的情報をもとに低透水性堆積岩盤中における地下水の起源・水質の形成機構の解明を試みた. その結果, 本地域の地下水は, “堆積当時に取り込まれた海水・寒冷気候下 (氷期) に地表面から涵養された天水・最終氷期以降に涵養された現在の天水”の3成分をエンドメンバーに持つことがわかった. さらに, この間隙水の3成分の成分分離を行ったところ, 最終氷期終了以降に涵養された天水の浸入深度は最大でも標高-160mにとどまる一方で, 氷期の天水の浸入深度は標高-400mまで達していることが明らかになった. このことは, 氷期の海水準低下に伴う相対的な地下水流動の活発期と, 現在のような間氷期の海進に伴う地下水流動の不活発期の相違を示すものであると考えられる. また, 間隙水の同位体組成および化学特性から考察された天水の浸入深度分布と, 地層の透水係数および水理ポテンシャルの水理試験結果から想定される地下水流動とは整合的であった.
  • 吉田 幸信, 安藤 幹也, 赤木 渉, 菅原 大介, 田村 栄治, 長谷川 修一, 中川 浩二
    2006 年47 巻2 号 p. 77-87
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    和泉層群の砂岩頁岩互層からなる地山を, 熱水変質の履歴の有無と地すべりの履歴の有無によって4種類に分類し, 高速道路トンネルの施工データを用いて分類の妥当性を検証した. その結果, 熱水変質を受けていない場合には, 非地すべり性および地すべり性の地山とも, CおよびD等級の両区間での内空変位は小さいが, 熱水変質を受けた地山では, 地すべりの履歴の有無にかかわらず, CおよびD等級の両区間とも内空変位が大きくなっている. これら4つの地山区分に基づけば, トンネル施工時の地山等級と内空変位の出現傾向を予測することができ, 地山等級や地山挙動を大局的に判定するのに有効である. また, 熱水変質を受けた地山では, 膨潤性粘土鉱物の影響が推察されるため, 地山評価においては膨潤性粘土鉱物の有無の現場確認が重要である.
  • 測定回路への信号線介在と複数センサの並列・直列接続法の有効性に関する検討
    氏平 増之, 小原 健児, 伊藤 史人, アクメトフ ダウレン, 名和 豊春, 長谷川 修一
    2006 年47 巻2 号 p. 88-97
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    スチールワイヤ型ケーブルセンサ (SWCS) は, 通常のスチールワイヤの心材部に振動検出用ケーブルセンサを巻き込んだセンサで引張強度が大きく, 岩盤斜面に敷設した場合は小礫~岩塊の落下衝突振動を検知するので岩盤崩壊の予知に有効である. 現行の計測システムでは, 斜面に格子状に敷設したSWCSの一端に全天候型小型増幅器を接続し, 一旦増幅した信号を信号線経由で計測室へ伝送している. この場合, 斜面の小型増幅器接続部で故障しやすい. また, その際, 斜面上での修理作業は危険を伴う. SWCSの信号を無増幅で直接計測室へ伝送することができればシステム全体の故障発生確率を低減でき安全性も高まる. また, 複数のSWCSを並列あるいは直列に接続し計測チャンネル数を減らすことができれば故障発生頻度の低減・経済性の向上をはかれ, 実用性が高まると考えられる.
    本研究では, 「斜面上に増幅器を取り付けず, どれほどの長さの信号線をSWCS~測定室に介在させ得るか」, 「複数のSWCSを並列, 直列にグループ分けした場合, 静電容量の増加に伴う出力低下が問題になるか」を理論計算, 室内試験, フィールド試験で確かめた. 得られた主な結果は次のようである. 1) 回路方程式を用いた計算, 室内試験から, SWCS一端に増幅器を取り付けないで同軸信号線を延長できる長さは少なくとも120mである. 2) フィールドで各SWCSの一端に同軸信号線100mを接続した場合でも, 信号を増幅しないで測定室へ伝送でき, 落石を検知できる. 3) SWCSの一端に同軸信号線100mを接続した条件下で, 複数のSWCSを並列・直列に接続, グループ化した場合においても落石挙動を検知できる.
  • 北海道日方泊覆道における落石の場合
    細谷 昭悟, 氏平 増之, 宮下 尚志, 池田 泰之, 鈴木 伸二
    2006 年47 巻2 号 p. 98-109
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    著者らは, ロックシェッド, 落石防護壁, 防護網等落石防護工の建設に先立ち落下速度, 落下経路, 跳躍量, 走向方向への広がりなどを推定するための三次元落石シミュレーション法に関する研究を行っている. 既報では, シミュレーションの理論と直線型斜面, 砕石場の斜面を対象とした場合の計算結果を示し, 適合性を検討した. 本研究では, 北海道増毛町の日方泊覆道上部の斜面で発生した小規模な落石例を取り上げ, 既往の計算条件での計算結果と比較し, 計算結果が実際の落石分布とより近くなる計算条件を解析した. この研究で得られた主な結果は以下のようである. 1) 砕石場を対象とした既往の計算条件下では, 実データと比較した場合, 落下速度分布は妥当な分布であったが, 「到達距離が大きい」, 「走向方向への広がりがせまい」, 「跳躍量が大きい」という結果を得た. 衝突後の飛び出し速度鉛直成分が大きめであることが主な理由と推論した. 2) 逆解析から, 粘性減衰定数ηのみを2.0倍まで変化させることで, 落石の実例に近い「到達距離分布」, 「走行方向への広がりの分布」が算出され, 実斜面の落石に対する解析条件を同定できるとした.
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