応用地質
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48 巻, 1 号
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  • 若松 尚則, 渡辺 邦夫, 高瀬 博康, 松井 裕哉
    2007 年 48 巻 1 号 p. 2-14
    発行日: 2007/04/10
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    建設が計画されている構造物そのものや施工時の地下環境に対する影響および安全性の評価は現代社会では極めて重要である. その場合, 評価に用いた論拠の明確化と評価プロセスの再現性を保証しておくことが不可欠である. この評価の論拠として地質情報を用いる場合, その情報に一般的に含まれる不確実性を妥当に取り扱うことが重要となる. 不確実性を考慮できる評価手法の一つとして, 意思決定支援ツールESL (Evidential Support Logic) が最近提案された. 本論では, 地下構造物建設にかかわる二つの事例を取り上げ, とくに水理地質にかかわる問題についてESL手法の適用方法と課題について整理・検討した. 地下構造物建設における地下水への影響の評価の事例では, (1) 水理地質情報, (2) 水利用状況, (3) 工事計画の情報, に基づいてESLのロジックツリーを構築し, 次にロジックツリーを用いて, 建設に伴って生ずる可能性のある地下水障害が回避できるかどうかに関して第一段階的な評価を行った. また, 水理地質に関する追加調査と工事計画や工法等の変更によって環境影響と情報の不確実性の低減が図られることを示した. もう一つは地下水流動解析のための概念モデルの評価の事例であり, 対象地域の地下水流れに影響する断層の性質という, 岩盤の水理地質構成要素についての評価を行った. これらの適用事例を通して, ESL手法の環境評価に対する有効性や課題が明らかとなった.
  • 第三紀層 (油谷) ・結晶片岩 (周南) ・片麻岩 (柳井) 地域の比較
    津田 秀典, 加納 隆
    2007 年 48 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2007/04/10
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    山口県内の油谷・周南・柳井の3地域を例として, 第三紀層・結晶片岩・片麻岩-花崗岩地帯地すべりの地形・地質の性質を相互比較し, 各地すべり地帯の広域的特徴とその発達過程の違いについて考察した. その際, 地すべり地が複合して集合体を形成することに着目し, その集合様式により, 単独型と複合型 (親子型・並列型・群集型) の地形タイプに区分した. また, とくに個々の地すべりユニットの重複関係から, 各地形タイプの発達史の復元を試みた. 油谷地域には, 第三紀層分布域の概ね全域に, 緩傾斜の基岩構造に規制された単独型および複合型の大型地すべりが発達する. これらは単独型地すべりを原型として, 親子型および並列型の複合型地すべりへと移行する. 周南・柳井地域には, 浸食谷に沿って集積した崩積土中に, 中小規模の地すべりユニットが集合した群集型地すべりが多数存在する. 周南地域は結晶片岩, 柳井地域は片麻岩および片麻状花崗岩という基岩地質の違いに応じて群集形態は異なるが, 両地域とも油谷地域に比べ急傾斜で崩壊的な要素を含む地すべりが多い.
  • 伊藤 孝, 酒井 英男, 森本 真由美, 宍倉 正展, 遠田 晋次
    2007 年 48 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2007/04/10
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    木曽山脈西縁断層帯の上松断層が走る大木地区で行われたトレンチ調査において, 2か所のトレンチ (S1トレンチとS2トレンチ) の壁面に現れた傾斜層の成因に関する古地磁気学的研究を行った. バルジ地形に沿って最大40°で傾斜した堆積層の成因について, 断層運動による変形か初生的な堆積構造であるかが問題となり, 古地磁気学的手法による検討を行った. トレンチ壁面において, 同一層準の傾斜部と水平部から定方位試料を採取して残留磁化測定と段階交流消磁実験を行った結果, 残留磁化は安定した一次成分と二次成分に区分できた. Q比は低く, 非履歴残留磁化/自然残留磁化の強度比は高いなどの磁化特性から, 一次成分は堆積残留磁化が起源として考えられた. 一次成分の磁化は, 傾斜層の傾動補正をすると集中度が悪くなることから, 傾斜層は初生的堆積構造であると考えられた. 二次成分は, S1トレンチとS2トレンチで磁化方向と集中度が有意に異なった. S1トレンチの残留磁化の二次成分は粘性残留磁化と見なすことができる. S2トレンチの残留磁化の二次成分の磁化方向は大きく東偏するが, 集中度は良く, 保磁力はS1トレンチのそれより小さいなどの磁化特性を持ち, 粘性残留磁化以外の磁化 (例えば雷による等温残留磁化) の影響で獲得された可能性が考えられる.
  • 森岡 達也, 佐川 厚志, 金折 裕司, 田中 竹延
    2007 年 48 巻 1 号 p. 35-47
    発行日: 2007/04/10
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    山口県中部の徳佐-地福断層と木戸山西方断層の性状および活動性を明らかにする目的で, 阿東町内の篠目地区と田代地区において, 地形判読, 断層露頭, トレンチおよびボーリング調査を実施した. 篠目地区の木戸山西方断層の活断層露頭では, 礫層中に幅約10cmの断層ガウジが明瞭に認められた. 断層に切られている斜面堆積層の14C年代から, 木戸山西方断層の最新活動時期は約5,400年前以降と判断される. 一方, 徳佐-地福断層のトレンチ調査では, 約70cm南上がり変位の断層が確認され, 断層を覆う礫層の14C年代から, 最新活動時期は約7,600年前以前または約6,300年前以降となる. 田代地区では, 徳佐-地福断層のトレンチ調査により断層を覆うシルト試料の14C年代から, 最新活動時期は約5,200年前以前となる. さらに, 群列ボーリング調査によって, この断層を覆う腐植質シルト試料と断層に切られる含礫シルト試料の14C年代から, 最新活動時期は7,000または5,200年前以前もしくは6,700~5,200年前であると判断される. 上記の年代を総合すると, 徳佐-地福断層の最新活動時期は5,200年前以前であると判断される.
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