応用地質
Online ISSN : 1884-0973
Print ISSN : 0286-7737
ISSN-L : 0286-7737
49 巻, 5 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 産総研岡山応力測定用深部花崗岩コア試料の変質を例に
    吉田 英一, 西本 昌司, 長 秋雄, 山本 鋼志, 勝田 長貴
    2008 年 49 巻 5 号 p. 256-265
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    地下における花崗岩の変質プロセスを解明することを目的に, 岡山市で掘削されたボーリングコアの深さ約100mまでについて, 割目帯近傍における花崗岩中の造岩鉱物の変質状態を調べた. この花崗岩は, 粗粒の石英, 正長石, 斜長石, 黒雲母などからなり, 割目帯に沿って水-岩石反応により形成されたと思われる変質帯が伴われる. 今回, 地下40~50m付近の変質帯を伴う割目帯を詳細に調べた結果, 斜長石の絹雲母化と黒雲母の緑泥石化は割目帯や深度と関係なくコア全体に確認することができた. また, 割目帯の近傍ほど斜長石のスメクタイト化と水酸化鉄の沈殿が明らかに進行しており, 割目帯内部では黒雲母の一部がバーミキュライト化していた. 一方で, カリ長石には変質はほとんど認められない. これら造岩鉱物の変質状態の組み合わせは, マグマ貫入後の冷却に伴う熱水変質と, 割目帯から浸透した比較的低温の天水による変質の2ステージのプロセスによるものと考えられる. このような段階的プロセスは, 地下花崗岩の鉱物変化と化学組成変化の解釈に広く適用し得るものと思われる. また造岩鉱物を用いた変質プロセスの解析手法は, 地下花崗岩の水-岩石反応履歴の解明と地下環境の理解において有効であると考えられる.
  • 朴 赫, 長田 昌彦, 渡辺 邦夫
    2008 年 49 巻 5 号 p. 266-276
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    インタクトな岩石に破断面が形成され, 内部構造が変化する過程における透水特性の変化が議論できるようなせん断-透水-可視化同時試験装置を新たに開発した. この試験装置は, 一面せん断試験と定水位透水試験を同時に実施できるように組み合わせたものであり, インタクトな試料からせん断面ができる過程における供試体表面の変形破壊挙動を合わせて観察できる. このような試験装置の構築により, せん断過程における応力と流量と割れ目面積や局所垂直変位量等の表面情報が独立して取得可能となった. これを堆積軟岩に適用して, 実例を示すとともに, 上に示した各種の情報を整理することにより, 多くの重要な示唆を得ることができ, 本装置の優位性を示した. またこれにより今後のせん断-透水同時試験方法に関して, 一つの方向性を示した.
  • 森 一司, 飯塚 康太
    2008 年 49 巻 5 号 p. 277-284
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    地盤の透水性を評価するうえで, スラグテストは簡単で低コストな方法として, 海外では近年盛んに行われており, わが国でも今後もっと広く行われるようになることが期待される. そこで, 実際の試験の実施や解析にあたっての留意点, とくに測定精度向上のためのノイズ処理や孔内洗浄などの対策と有効性について, 実測データにもとづき検証した.
  • 金折 裕司
    2008 年 49 巻 5 号 p. 285-292
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    高島得三 (雅号北海) は, 明治5 (1872) 年23歳のときに生野鉱山に赴任し, フランス人鉱山技師コワニエについて2年間, フランス語と地質学を学んだ. その後, 郷里の長州萩 (現山口県萩市) に戻り, わずか2年余の間にわが国最初の地質図とその説明書に相当する『山口県地質分色図』と『山口県地質図説』を作成している. 『山口県地質分色図』を現在の『山口県の地質図』と比較してみると, 地層および岩種の分類は対比可能であり, それらの分布もほぼ的確に表現されている. 高島得三はこのような業績を残していることから, わが国最初の“地質屋”であるといえる.
  • 北海道有珠火山を例として
    中筋 章人
    2008 年 49 巻 5 号 p. 293-303
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    2000 (平成12) 年4月に発生した北海道有珠山噴火災害は, 一人の犠牲者も出さずにスムーズな避難活動が行われたが, その避難活動を支援したものの一つとして「有珠山火山防災マップ」が注目された. しかしながら, その後1か月におよび時々刻々と変化した噴火口や地盤変動あるいは熱泥流の発生などの火山活動に対しては, 紙媒体のマップでは迅速に対応しきれなかった.
    本稿では, このように刻々と変化する火山活動の防災対策にリアルタイムで対応するために, 電子媒体による火山ハザードマップと防災システムの必要性と有効性を論じた. とくに噴火活動は, 火砕流など高速で移動する現象が多いことから, 噴火が始まってからシミュレーションで影響区域を計算したのでは間に合わない. そこでGISを活用して, 事前に多種多様な現象と規模の影響範囲を数値シミュレーションしておき, 噴火の前兆あるいは火山活動の変化段階で, 専門家の判断に応じて最適なものを取り出して表示するシステムが有効であると考えた. さらに, 状況に応じた緊急避難活動にもリアルタイムで対応し, その活動を支援する防災システムの必要性も提言した.
feedback
Top