応用地質
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51 巻, 6 号
特集 地盤中の熱と応用地質
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論文
  • ―遮水層の連続性と地下水水質に関する検討―
    大谷 具幸, 神谷 浩二, 金井 梢, 澤村 悠, 小嶋 智, 山崎 勲, 香田 明彦, 戸塚 雄三
    2011 年 51 巻 6 号 p. 257-264
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     地下水利用型地中熱利用の導入可能性を評価するために, 扇状地地域である岐阜県岐阜市の地質・地下水情報を用いて, 遮水層の連続性と地下水水質の検討を行った. 前者のためには, ケイソウ化石による堆積環境の推定と揚水に伴う帯水層の水位変動の測定を行った. その結果, ケイソウ化石は淡水生であり, 遮水層は後背湿地で堆積し, 地層の連続性は悪いと推定される. また, 遮水層の上下にある2層の帯水層が水位変動の測定から水理的には連結していることが認められた. 後者では, 市街地地域を中心に溶存成分の少ない地下水が分布することが確認された. 遊離炭酸濃度は基準値を超える地域が多いものの, 地下水利用空調機器の利用状況を加味すると, およそ<10mg/Lであれば利用可能であるとみなすことができる. このように, 遮水層が連続しないことから地下水利用型地中熱利用のために揚水してもその影響は一帯水層に集中しないこと, 地下水水質の面からは地下水をヒートポンプ等に直接導入できるような良好な水質を有する地域が多いことが確認できた.
報告
  • ―小規模オフィスビルへの地中熱ヒートポンプシステムの導入―
    笹田 政克, 高杉 真司, 舘野 正之
    2011 年 51 巻 6 号 p. 265-272
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     都心千代田区の小規模オフィスビルに導入した地中熱ヒートポンプシステムは, 不凍液を循環させて地盤との熱交換を行うクローズドループで, 空水冷ハイブリッド型のヒートポンプを用いてオフィスの冷暖房を行っている. 2008年11月から運転を開始し, 最初の1年間の実績では, 年間成績係数(APF)が4.3, 暖冷房時の成績係数(COP)がそれぞれ3.6, 5.8であった. また, 電力消費量では, 空気熱源ヒートポンプの実績に対して, 49%の高い省エネ率を実現した. 地中熱交換器はボアホール型のもので, 75m深度のものが8本, 駐車場の下に埋設されている. 地質は, 関東ローム層, 東京層および舎人層の砂, シルト, 砂礫からなる第四紀の地層であり, サーマルレスポンステストにより求めたこれらの地層全体の有効熱伝導率は1.8W/(m・K)である. 運転開始後1年間の運転による地盤からの採熱量は51GJ, 地盤への放熱量は53GJで, バランスのとれた熱利用実績となった. 地盤と熱交換する循環流体(不凍液)の温度は, ヒートポンプの入口で年間13~26℃の範囲であり, 運転1年後の温度は運転開始時と同じ18℃であった. 1年間の採放熱量, 循環流体の温度実績をもとに行ったシミュレーションでは, 持続的な運転が可能であることが示された.
  • 松山 一夫, 武田 康人, 下田 昌宏, 高村 光一, 小野 高志
    2011 年 51 巻 6 号 p. 273-279
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     八丈島における地熱調査は, 東京電力(株)により1984年度から開始され, 1989年度からは(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による地熱開発促進調査が行われ, 東山南部地域に300℃以上の高温地熱資源が存在することが確認された.
     この地熱開発促進調査の結果を受けて, 東京電力(株)では地熱発電所立地地点調査を行い, 1995年度に3本の調査井を掘削して蒸気生産に成功し, 発電所建設を経て, 1999年3月25日に営業運転を開始した. 現在, 生産井1本により平均出力2,000kWの発電を安定して継続しており, 八丈島のベース電源として利用され, 地熱発電所の運転により従来の内燃力発電と比較して, 二酸化炭素の排出量が約4割削減されている.
     一方, 八丈町は, 地熱発電所の建設と並行して1992年度から温泉開発を進め, 4つの町営有料温泉利用施設を建設し, その利用者は年間約17万人である. また, 冬季間, 地熱発電所の余熱を利用して発電所周辺の温室ハウスへ熱供給を行っている.
     本報告は, 八丈島における地熱開発の経過, 地熱資源の分布状況および地熱利用の現況について述べる.
  • 宮越 昭暢, 當舎 利行, 高倉 伸一
    2011 年 51 巻 6 号 p. 280-287
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     地下浅部の帯水層を対象としたCO2圧入実験を実施して, CO2ガスの圧入に伴う地下熱環境の変化を把握した. ガス注入井に認められた一時的な地下温度の低下を除き, CO2ガス圧入による帯水層内の温度上昇が認められた. 地下温度の上昇は, CO2ガスを圧入した帯水層の上面付近で最も大きかった. このことは, 圧入したCO2ガスが帯水層上面に沿って広がったことを示唆している. また, 地下水水質の時系列変化から, CO2ガスの溶解に伴うpHの低下と酸化還元電位の上昇が認められており, 帯水層内の鉱物の酸化に伴う発熱が地下温度上昇の要因となった可能性が考えられた. 地下温度の上昇は時間の経過とともに縮小したが, 圧入終了後35日を経過しても確認された. 本実験により, 深度約50mという地下浅部であっても, CO2ガスの圧入に伴う地下熱環境の変化が長期にわたって継続することが示唆された.
解説
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