応用地質
Online ISSN : 1884-0973
Print ISSN : 0286-7737
ISSN-L : 0286-7737
51 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論文
  • 城森 明, 光畑 裕司, 西村 進, 城森 信豪, 近藤 隆資, 高橋 哲矢
    2010 年 51 巻 2 号 p. 62-72
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     地下深部の構造を探査する方法として, 数km隔てた送信源から電磁信号を送信し, 地下で誘導された電磁場を受信点で測定することにより, 地下数kmまでの比抵抗構造を探査する方法がある. この方法は電磁探査の一種でありCSMT探査やTDEM探査と呼ばれている. 電磁探査では誘導された微弱な電磁信号を確実に受信し, 抽出することが大きな課題となる. 一方, 商用電源など人工的なものから発生する電磁ノイズが電磁探査にとってノイズとなる.
     本研究では, ノイズが多く含まれる受信波形の中から微弱な信号を抽出するための効率の良い波形処理方法を検討した. その結果, 周波数分解能(スペクトル分解能)を向上させることが重要との結論に達した. そのためには処理する時系列データの時間長を長くする必要があり, 送信と受信の時刻同期精度が重要となる.
     本研究では, GPSの時刻パルスにより, 内蔵した高精度時計を同期させることのできる高い周波数分解能を備えた地下深部電磁探査装置(Geo-SEM)を開発した. この装置を用いることで, ノイズの多い街中でも電磁探査の測定が可能となる. さらに開発した装置を用いた調査事例として, 南紀白浜温泉地域で実施した探査について報告する.
  • 牧野 隆吾, Ibrahim DJAMALUDDIN, 江﨑 哲郎
    2010 年 51 巻 2 号 p. 73-84
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     北部九州の旧産炭地域において1965年から2009年の間に発生した, 石炭採掘が残した地下空洞を起因とする浅所陥没について, 発生時期, 発生位置, 発生規模, 関係炭鉱に関するGISデータベースを構築した. その結果, 陥没の特徴として, 陥没孔の形はほぼ円形で, 陥没孔の直径はほとんどが3m以下であることがわかった. 一雨ごとの降雨量と発生数には高い相関が認められ, 大局的には, 降雨量が異常に多いと発生数も多く, 各炭鉱の開山した時期を陥没発生場所の採掘時期とすれば, 陥没の発生は徐々に減少するが, 開山後100年程度続くことなどが明らかになった. GISを用いた空間解析の結果, 陥没のほとんどは, 炭層が浅く鉱区面積の小さな中小炭鉱が稼行していた区域に集中しており, 空洞天盤深度, 山丈と陥没深さから陥没が発生する限界の空洞天盤深度を推定すると, 一般に約30mと考えられる. 空洞調査にあたっては,採掘跡空洞は人為によるものであり, その採掘された時代の採掘技術, 経済的社会的背景を考えることが重要である. 空洞の対策については, 工法の長所や欠点を熟慮するとともに, 事業の計画段階から古洞の問題を認識し, 採掘や陥没の履歴調査を十分に行い, 最小の対策数量とする合理的な調査, 設計が望まれる.
報告
  • 高橋 良, 遠藤 祐司, 丸谷 薫
    2010 年 51 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     北海道内に設置されている533施設の産業廃棄物最終処分場に関する既存資料の収集と最終処分場周辺での地質調査を行い, 立地地層の水理地質学的特徴についてまとめた. 本研究では立地地層をその透水性の観点から不透水層タイプ, 透水性地質タイプ, 浅部透水―深部不透水層タイプ, 透水性不均質タイプの4タイプに区分した. 北海道内の多くの最終処分場は沖積層や火砕堆積物などの未固結で透水性の良い堆積物に立地している. そのため, 56.3%の最終処分場が透水性地質タイプの地層に立地していることがわかった. このタイプに立地する最終処分場からの浸透水は地下深部まで移動しやすいと考えられ, もし浸透水に有害物質が含まれている場合, それが広範囲に移動することが考えられる. したがって, 最終処分場周辺での地下水質の観測が重要な役割を持つと考えられる. 一方, 最も浸透水の拡散の危険性が小さいと考えられる不透水層タイプに立地する最終処分場は26.5%であった. 本研究で得られた各最終処分場の水理地質学的なデータは, その周辺において地質・地下水汚染などが発生した場合に, 迅速に状況判断を行い, 汚染拡大を防ぐための対策を行う際の重要な情報になる.
短報
  • 竹村 貴人, 長田 昌彦, 藤井 幸泰, 金丸 龍夫, 高橋 学
    2010 年 51 巻 2 号 p. 92-96
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     岩盤の長期的な透水特性を推定するために, 壁面で亀裂が開口している透水性亀裂と亀裂が方解石により充塡されている低透水性亀裂の透水特性の比較を行い, それぞれの亀裂の3次元構造の評価をX線CTにより行った. その結果, 方解石により充塡されている亀裂は, 壁面で不透水もしくは低透水性亀裂であっても内部ではチャネル状に連続しており, 透水亀裂として機能していることが確認された. また, 方解石は長期的にみると溶解が進行することから, 方解石に充塡されている亀裂は開口亀裂の透水係数と潜在的に同等の透水特性を持つものとして評価したほうが良いことがわかった.
feedback
Top