応用地質
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51 巻, 4 号
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論文
  • 川越 健, 浦越 拓野, 太田 岳洋
    2010 年 51 巻 4 号 p. 170-180
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     砂質土地山におけるトンネル掘削では浸透水により切羽が崩壊する場合がある. 浸透水に対する砂質土地山の抵抗性や破壊のメカニズムは土質工学の観点からの研究が多くあり, 均等係数, 細粒分含有率, 湿潤密度, 相対密度などの物性が関係することが明らかにされている. これらの物性は砂層の層相として観察されるものが多い. 砂層の層相はその砂層が形成された堆積環境や続成作用の影響を受ける. そのため, 浸透水に対する砂質土地山の抵抗性はこれらと関係することが考えられる. そこで, トンネル切羽の安定性の検討を念頭に, 更新統砂層から採取した乱れの少ない試料を用いた室内土質試験や水平一次元浸透崩壊実験, 堆積構造や粒度などの層相および砂粒子どうしの接触関係などの微視的構造の観察から堆積環境や続成作用が浸透水に対する砂質土地山の抵抗性に与える影響を検討した. その結果, 限界動水勾配の大きさに対して, 分級の程度は強く影響するが堆積構造の違いはあまり影響しないことがわかった. また, 限界動水勾配の大きさに対して圧密の影響は無視できること, 続成作用により生成されたと考えられる粘土鉱物やその他の膠結物質を含んだ粘土分の量によって限界動水勾配が異なることがわかった. これらのことから, 浸透水に対する砂質土地山の抵抗性は堆積物の分級の程度にかかわる堆積環境と堆積後の膠結作用の影響を受けていると考えられる.
  • 須藤 孝一, 米田 剛, 小川 泰正, 山田 亮一, 井上 千弘, 土屋 範芳
    2010 年 51 巻 4 号 p. 181-190
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究では, 海成堆積層として東北地方に広く分布する竜の口層を対象に, 地質試料からの重金属類の溶出に及ぼす風化作用の影響について, いくつかの露頭から地質試料を採取するとともに, 実験室において風化実験を行い, 検討した. 露頭において風化の進行した地質試料は, 風化の進行していない試料に比べ, カドミウムの溶出量が多く, 土壌汚染対策法における溶出量基準を超過していた. その際に, 地質試料中のカドミウムの多くは, 溶出しやすい交換態として存在していた. 風化の進行していない試料を用いて, 実験室において風化試験を実施したところ, カドミウムの溶出量が劇的に増加し, そのときには溶出液のpHが大きく低下した. 同時に, カドミウムは残渣から交換態へと移行し, 一方, ヒ素は残渣から鉄酸化物態およびリン酸交換態へと移行した. すなわち, 風化作用により, 硫化物などの鉱物として存在していた重金属類は, 溶解しやすい存在形態へと変化したことがわかる. これらの事象は, 土壌汚染対策法に従い地質調査を行う際において, 対象試料の風化程度や採取試料の保存状態によってその溶出量が変化することを考慮しなければならないことを示唆している.
資料
  • 金折 裕司
    2010 年 51 巻 4 号 p. 191-198
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     高島得三(雅号北海)は徴兵として大阪にいるときに外国語を学ぶ必要性を痛感し, 明治5(1872)年, 23歳のときに当時フランス人鉱山師のいた生野銀山(生野学校)に仏語を学ぶために入り, 地質学に出会うことになる. 明治11(1878)年, 29歳のときに森林植物学に転向するまで, 約7年間地質学と地質調査に携わった. 正則の地質学を学んだ和田維四郎の示唆によって森林植物学に転じることになるが, 得三としては実地調査で山河を歩き回ることができれば, 地質学でも森林植物学でも良かったのであろう. そういう意味では, フィールドワークをこよなく愛していたと言えよう. さらに, 得三は若い頃に学んだ地質学と地質調査で培った自然観察眼が画家として大成させたと回顧している. 地位や名誉を欲せず, フィールドワークを重視した得三に現在でもなお学ぶべき点は多い.
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