応用地質
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53 巻, 6 号
特集 震災の対応および復興にかかわる応用地質学の貢献
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論文
  • ―2011年4月11日福島県浜通りの地震に伴う事例―
    品川 俊介, 阿南 修司, 佐々木 靖人, 向山 栄, 本間 信一, 小林 容子
    原稿種別: 論文
    2013 年 53 巻 6 号 p. 271-281
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
     新たな手法を用いて,2011年 4 月11日福島県浜通りの地震に伴う地表地震断層周辺の変位量分布を推定した.この手法は,地震前後の 2 時期の航空レーザー測量結果による数値地形モデルの差分解析を行うものである.
     解析結果は,地表で確認された変位量分布とおおむね整合的であった.また,解析結果は地震に伴う傾動運動や地盤沈下を示唆している.
     本手法は,従来一般に行われてきた現地調査では把握できなかった情報を迅速に提供可能であることから,地震直後の地表変位量分布の調査に非常に有効であると考えられる.
報告
  • 釜井 俊孝
    原稿種別: 報告
    2013 年 53 巻 6 号 p. 282-291
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震によって,仙台市緑ヶ丘4丁目では造成地盤地すべりが発生した.ここでは,約1年間にわたる地すべり変動(地表傾斜,地中傾斜),地表地震動,間隙水圧の精密動的観測結果を報告する.この斜面では,本震から10~11か月後まで,地山を巻き込む重力性の斜面変動が継続した.しかし,地中傾斜は盛土下底のすべり層で最大であり,盛土全体の地すべりが,今回の斜面変動の主体である.地中傾斜の地震応答は,すべり層や亜炭層など地盤内の弱層で最大となり,それよりも上部の盛土では増幅率が小さくなる傾向が認められた.この弱層による免震効果は,弱層の層厚や地震の震央距離によって異なり,地すべりの構造が,地震応答に強く影響を及ぼしている.過剰間隙水圧は最大水平地動速度にほぼ比例して増加した.この関係から,80 cm/sを越える強震動によって,過剰間隙水圧の増加によるすべり層強度の喪失が発生し,地すべりに至ったと推定される.また,すべり層における局所破壊が成長し,より規模の大きい地すべり変動に発展する過程が観測された.今回のような精密動的観測は,強震時における地すべりの挙動を知るうえで,基礎的な知見を提供するものとして重要である.
  • ―2011年東北地方太平洋沖地震を例として―
    村尾 英彦, 釜井 俊孝, 太田 英将
    原稿種別: 報告
    2013 年 53 巻 6 号 p. 292-301
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震によって,都市域住宅地における斜面災害が多発した.これらの斜面災害は,主に谷埋め盛土,腹付け盛土の造成地の変動が原因であり,家屋が全壊,半壊する被害に加え,ライフラインが破壊され,深刻な被害が生じている.日本国内の都市域に多数存在する盛土造成地における,今後の地震災害を防ぐことを目的として,42地点の調査結果をもとに,斜面変動のタイプを5つのタイプに分類し,各タイプにおける被害の特徴をまとめた.5つの分類は,タイプ1:谷埋め型盛土の変動,タイプ2:腹付け型盛土の変動,タイプ3:谷埋め型+腹付け型盛土の変動,タイプ4:盛土の崖崩れ,タイプ5:表層すべりである.タイプ5の表層すべりは,今回の地震で明らかとなった被害であり,盛土末端部が液状化することによって,斜面が不安定化するものである.いずれのタイプも,被害は盛土領域内で生じている.また,1978年宮城県沖地震後に施工された,地すべり対策工事の耐震補強としての有効性に関する考察を行った.この考察から,地すべり対策工(杭工,地下水排除工)が,地震時における盛土斜面の大変形に対して効果を発揮することを確認した.一方で,地すべり対策工のみでは,住宅基礎周辺の変形を抑えることができず,今後は,その変動抵抗性を向上させる対策工の考案が必要であることを確認した.加えて盛土土塊内に,土塊を分断するような,強度の大きい領域を作り出し,変動土塊に作用する側部抵抗を増加させることにより,盛土の変動を抑えることが可能であることを確認した.
  • 塩見 良三, 石川 智, 原口 強, 高橋 智幸, 上田 圭一, 鹿島 薫
    原稿種別: 報告
    2013 年 53 巻 6 号 p. 302-312
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
     本稿では,2009年に気仙沼湾内3地点で採取された1960年チリ津波に伴う堆積物コアを用いて実施した各種コア解析のうち,とくに珪藻遺骸に着目してその群集解析から土砂移動の推定を行った内容について報告する.
     津波堆積物中の珪藻遺骸群集には多くの淡水生珪藻種が含まれており,気仙沼湾における海底表層堆積物に含まれている淡水生珪藻遺骸の割合を大きく上回っていた.これは,津波堆積物の多くが引き波時における陸域からの土砂の移動によることを明らかにしている.また,海水生浮遊性種Thalassiosira属が繰り返し増加する現象は,津波に伴う押し波の繰り返しを示すものと推定される.珪藻遺骸群集の特徴からは,3本のコアは津波堆積物の基底まで達しておらず,津波堆積物の層厚はより大きかったことになる.
     さらに,気仙沼湾では,2011年3月以降も継続的な現地調査が続けられているが,これらのデータの解析および試料中の珪藻遺骸の分析を今後進めていく予定である.これによって,2011年3月の東北地方太平洋沖地震に伴う,湾内の地形変動と珪藻遺骸を指標とした土砂の運搬堆積過程を明らかにできるものと期待される.
解説
資料
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