宮崎県耳川流域塚原地点において,2005年に発生した深層崩壊箇所では,崩壊斜面や地下において数 cm~数 mの大きさの角礫を主体とする固結した角礫岩が新鮮岩盤の上部に広く分布しており,角礫岩卓越層を形成している.
露頭およびボーリングコアを用いた微細構造の詳細観察結果を基に,角礫岩を角礫化の進行の程度により5つに区分した.さらに,角礫の粒度分布特性と角礫岩卓越層の連続性の検討より,角礫岩卓越層には斜面方向に傾斜する細粒化したゾーンが複数存在することが明らかとなった.
角礫岩卓越層には粘土や明瞭な面構造は認められないことから,これは断層による破壊構造ではなく,地下浅部で重力によるひずみの集中によって形成された破壊構造と考えられる.
角礫岩卓越層の複数のゾーンは,耳川が河床を深く下刻していく中で,不安定になった斜面内部において形成されたものと考えられ,ひずみが最も集中する部分において破壊は進行するものの,斜面全体に連続するようなすべり面が形成されず,河床の下刻とともに,複数にブロック化しながら角礫化が進行したものと考えられる.
2005年の深層崩壊では新鮮岩盤と角礫岩卓越層との境界付近ですべりが発生しており,今回分布が明らかとなった角礫岩卓越層は,今後発生する深層崩壊の前駆体の可能性があり,深層崩壊発生の素因を評価する際に重要な地質構造と考えられる.
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