応用地質
Online ISSN : 1884-0973
Print ISSN : 0286-7737
55 巻 , 6 号
特集 激甚化する気象災害への対応-応用地質学的観点から-
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論説
  • 稲垣 秀輝
    2015 年 55 巻 6 号 p. 279-289
    発行日: 2015/02/10
    公開日: 2015/07/19
    ジャーナル フリー
     我国における火山地域の分布は,国土の1/4を占めている.この火山地域では,火山噴火災害の他,地震時や降雨時に土砂災害が発生しやすい.ここでは,火山地域の自然災害を概観し,その上で近年発生した6つの異常気象時の土砂災害についてまとめ,豪雨災時の斜面崩壊が,火山地域特有の地形・地質に基づく表層崩壊が主であり,特に浸食に弱い火山灰層は斜面に平行に堆積しており豪雨時に崩壊しやすいことを示す.また,規模の大きな災害としてはキャップロック型の崩壊がある.火山地域は,土地利用上林地になりやすく,表層崩壊が発生した場合には立木が流木となり,流木は下流域被害の増大や災害廃棄物処理の課題となる.
     最後に,激甚化する豪雨災害を対象とした火山地域での土地利用のあり方や法的制度のあり方等について論じた.
論文
  • 林 信雄, 田中 和広, 吉武 宏晃
    2015 年 55 巻 6 号 p. 290-306
    発行日: 2015/02/10
    公開日: 2015/07/19
    ジャーナル フリー
     宮崎県耳川流域塚原地点において,2005年に発生した深層崩壊箇所では,崩壊斜面や地下において数 cm~数 mの大きさの角礫を主体とする固結した角礫岩が新鮮岩盤の上部に広く分布しており,角礫岩卓越層を形成している.
     露頭およびボーリングコアを用いた微細構造の詳細観察結果を基に,角礫岩を角礫化の進行の程度により5つに区分した.さらに,角礫の粒度分布特性と角礫岩卓越層の連続性の検討より,角礫岩卓越層には斜面方向に傾斜する細粒化したゾーンが複数存在することが明らかとなった.
     角礫岩卓越層には粘土や明瞭な面構造は認められないことから,これは断層による破壊構造ではなく,地下浅部で重力によるひずみの集中によって形成された破壊構造と考えられる.
     角礫岩卓越層の複数のゾーンは,耳川が河床を深く下刻していく中で,不安定になった斜面内部において形成されたものと考えられ,ひずみが最も集中する部分において破壊は進行するものの,斜面全体に連続するようなすべり面が形成されず,河床の下刻とともに,複数にブロック化しながら角礫化が進行したものと考えられる.
     2005年の深層崩壊では新鮮岩盤と角礫岩卓越層との境界付近ですべりが発生しており,今回分布が明らかとなった角礫岩卓越層は,今後発生する深層崩壊の前駆体の可能性があり,深層崩壊発生の素因を評価する際に重要な地質構造と考えられる.
  • 黒木 貴一, 磯 望, 黒田 圭介, 宗 建郎, 後藤 健介
    2015 年 55 巻 6 号 p. 307-316
    発行日: 2015/02/10
    公開日: 2015/07/19
    ジャーナル フリー
     大淀川と本庄川の微地形に関し5 mDEMによる地形分析結果と,2005年台風14号での内水氾濫による浸水域との関係を検討した.本研究は陰影図による地形区分,地形縦断曲線による浸水域の地形量の評価で構成される.地形縦断曲線は地形別の平均標高と比高に基づく.上下流方向に見た地形縦断曲線の凹凸形状を識別し,堤内外でその対照を行って地形量を評価した.
     平均標高による地形縦断曲線では,上流よりも下流の標高が上昇する凸部を識別でき,堤外地形の凸部は堤内地形のものより少し下流に出現する.各凸部は支流の合流点や河口の近傍にある.比高による地形縦断曲線は,平均標高による曲線よりも凹凸形状が明瞭となる.このため平均標高による曲線の凸部に対応する約5 km延長の凸部に加え,約1 km延長の小凸部が識別できる.各凸部の範囲では,堤外地形は,堤内地形のものよりも下流で比高が極大となる.小凸部は合流での流速低下による土砂堆積の増加を,凸部は河道の屈曲部や狭窄部での流速低下による土砂堆積の可能性も示す.
     比高による地形縦断曲線では,浸水区間では堤外地形の比高が高まり,堤内地形の比高は低まる,非浸水区間では堤内地形の比高が高まり,堤外地形の比高は低まる傾向がある.これより低地と高水敷にあたる河床1の比高差に基づくグラフの凹凸形状から内水氾濫による浸水区間と非浸水区間を識別できることが分かった.
報告
  • 石川 昌幹, 酒井 俊典, 岡島 賢治, 古根川 竜夫, 片岡 泰, 阪口 和之, 中谷 仁, 長谷川 謙二, 林 健二, 由井 恒彦
    2015 年 55 巻 6 号 p. 317-324
    発行日: 2015/02/10
    公開日: 2015/07/19
    ジャーナル フリー
     平成23年9月に来襲した台風12号により三重県東紀州地域では多数の斜面崩壊が発生した.斜面崩壊の状況について崩壊前後の空中写真,地質図,DEMデータをもとに整理した結果,全崩壊箇所290箇所のうち,全体の約90%が熊野酸性火成岩類分布域で発生していた.崩壊箇所の斜面の向きは,多くの崩壊が南東から南西の南向きに集中し,斜面勾配は,熊野酸性火成岩類南岩体では30〜40°,熊野酸性火成岩類北岩体では35〜45°に集中していた.また,崩壊箇所の崩壊前の斜面の水平断面形は,谷型斜面47%,直線斜面48%であるのに対し,尾根型斜面が5%と発生は少なかった.現地調査を実施した箇所では,崩壊はDL~DM級岩盤あるいは崖錐堆積物とDH級岩盤との境界を崩壊面として発生しており,崩壊地の一部では,崩壊面はシーティング節理沿いに形成されていた.また,その他の崩壊地では,柱状節理に谷側への傾斜が確認され重力変形が顕著な箇所で生じたと考えられた.崩壊面の一部では,湧水が確認された.節理沿いのDH級岩盤の透水係数は10-5~10-6 m/s程度であるとともに,湧水の電気伝導度は3〜4 mS/mと低く,斜面崩壊に降雨時の浅層地下水が関与していると考えられた.
解説
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