応用地質
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57 巻, 6 号
特集「新しい計測技術と応用地質学」
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論説
  • 伊藤 久敏, 長谷川 修一
    2017 年 57 巻 6 号 p. 257-265
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー

    U-Pb年代測定法は,地質学の分野では,地球最古の岩石・鉱物の年代測定に用いられるなど,数億~数十億年前といった古い時代の試料を対象とした年代測定法として広く知られていた.しかし,最近では,比較的容易に入手可能な機器を用い,第四紀試料に対しても高精度に年代測定が可能となっており,応用地質学的な適用が可能になってきたと考えられる.

    ここでは,U-Pb年代測定法の原理,ジルコンを用いたU-Pb年代測定手順・実験方法を概説するとともに,U-Pb年代値の解釈における留意点等を提示する.また,U-Pb年代測定法の適用例(第四紀テフラの年代測定,地熱資源の評価等)について紹介するとともに,新たな適用例として,第四紀に発生したと考えられている地すべり(松島巨大地すべり)への適用結果を報告する.結果として,想定された地すべり面とその上下から得られた凝灰岩および凝灰質砂岩の3箇所からいずれも約15Maの年代が得られたことから,年代学的には地すべり説を実証する直接的なデータは得られなかったが,この例のようにジルコンのU-Pb年代測定法は,応用地質学的に重要な地質現象(地すべり,活断層など)の理解に適用可能であり,今後の幅広い適用が期待される.

論文
  • 鈴木 敬一, 金沢 淳
    2017 年 57 巻 6 号 p. 266-276
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー

    本研究では,地下や大型構造物の密度構造を評価する技術として宇宙線ミュー粒子の物理探査への適用性の検討結果を紹介する.筆者らの調査対象は,地盤の空洞や原子炉の内部構造,断層破砕帯,貯水池の水位変化などで,適用した深さは数mから300m程度までである.また,宇宙線ミュー粒子の物理探査は,対象とする応用地質学的な条件によって計測時間が大きく異なるために,条件の変化に応じた計測時間の長さについて数値計算や計測事例により検討した.

    数値計算では,直径24.5cmの二つの検出器による同時計数法(検出器間の距離140cm)を行う際に,土被り,密度及び天頂角等に応じて必要となる計測時間について検討した.その結果,例えば,土被り50mにおいて0.2g/cm3の密度差のある範囲が直径5mの場合,有意な計数差が確認されるまでの計測時間は,天頂角30度以内では,5日間程度であることが示された.

    また,全方位計数法(直径24.5cmの球体)での計測結果では,同時計数法に比べて解像度が低下するものの,土被り11mで空洞の厚さが約3mの場合,必要な計測時間は1地点あたり10分程度であることが示された.

  • 菊地 輝行, 秦野 輝儀, 千田 良道, 西山 哲
    2017 年 57 巻 6 号 p. 277-288
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー

    航空機によるレーザ計測は,地形の3次元データを精度よく取得できる測量技術として確立しており,最近では,多時期の計測結果を用いて大規模な地すべりや河川・砂防分野における土砂量の算定などに活用されている.しかしながら,数センチメートルオーダーでの緩慢な地すべりの変動を精度よく把握することは難しいのが現状である.そこで本研究は,グラウンドデータから任意の距離に位置する点群だけを抜き出した下層モデル(S-DEM:Substratum Digital Elevation Model)を利用した微地形を判別する手法および高精度で斜面の変動量を解析する手法を開発し,地すべり地内で発生した岩屑すべりの変動状況を詳細に推察できる成果を得たので報告する.

速報論文
  • ―白山甚之助谷周辺の地すべりを例に―
    石塚 師也, 藤井 幸泰, 金子 誠, 高橋 亨, 松岡 俊文
    2017 年 57 巻 6 号 p. 289-294
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー

    近年,リモートセンシング技術の1つである干渉SAR解析を用いた地すべり地表変動のモニタリングが注目されている.干渉SAR解析では,地球上を周回する衛星搭載の合成開口レーダ(Synthetic aperture radar; SAR)のデータを用いるため,従来は観測することの難しかった変動量の面的分布を得られることに大きな利点をもつ.本研究では,日本有数の地すべり地帯である白山甚之助谷,別当谷および,湯の谷を対象として,我が国のSAR衛星であるALOS-2のデータを用いて干渉SAR解析を行い,近年の地すべり地表変動量を検出した.解析の結果,2014年8月から2016年6月の期間において,年間約5~10cmの地すべり地表変動を捉えた.また,地表変動の空間分布は,従来の研究により確認されている地すべりブロックと整合的であり,本研究により,近年活動している可能性のある地すべりブロックが明らかになったと言える.本研究の結果は,干渉SAR解析技術を用いた地すべり地表変動量の把握の有効性を示すものである.

報告
  • 黒木 貴一
    2017 年 57 巻 6 号 p. 295-300
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー

    本稿では,福岡城の急傾斜の城壁を例に,SfMとGISを用いて地形を効果的に表現する工夫を行ったことを報告する.通常の二次元の地図表現では,垂直に対し水平の延長が小さい急傾斜地の形状を十分に示せない.そこで,城壁に置く基準点3点の座標を,市販の表計算ソフトにより平行および回転移動の計算を経て,原点,X軸,XY平面に乗るものに変換する,基準面変換を考えた.座標変換した基準点を用いて,城壁の変換DEMをSfMにより計算し,それよりGISで地形解析を行った.変換DEMでは,通常の地図表現に比べ積石や隙間の微細な凹凸がよく表現できた.さらに空間フィルタリングを通じて城壁の不自然な形状とその範囲を読み取れた.したがって表計算ソフトによる基準点の移動計算,SfMによる変換DEM計算,GISによる空間フィルタリングを組み合わせる本手法は,急傾斜地に対する地形・地質の課題解決に活用できると考える.

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