応用地質
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59 巻, 6 号
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論文
  • 熱田 真一, 孫 躍, 太田 岳洋
    2019 年 59 巻 6 号 p. 430-445
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー

    建設発生土に含まれる自然由来重金属等の評価において,水-岩石反応に着目した溶出機構の検討が重要である.

    本研究では,溶出検液のpH領域が異なる自然由来重金属含有土をもとに,実際の鉱物組成及び化学組成と,pH-Eh図等の熱力学的検討に基づく理想的な固相種と溶存種の相平衡の変化から重金属等の存在形態に沿った砒素の溶出機構の検討を行った.

    固液比一定条件下での溶出量試験は,水-岩石反応時間をふまえた振とう時間ごとの砒素溶出量を分析し,pH領域が異なる自然由来重金属含有土における溶出時間と溶出率を検討した.また,pH-Eh図上で溶出機構を評価し,固相種の溶解度と,溶存種の鉱物表面での吸着等を基に,水-岩石反応に基づいた短時間でできる簡便な溶出機構の評価方法について提案した.

    土槽実験では,地下水中の還元条件下で水-岩石反応を考慮し,間隙率,推定透水係数に基づいて固液比と流れ場条件での溶出機構を検討し,砒素が亜砒酸塩(H3AsO30)として溶出する機構と,その後の移流による砒素濃度変化を明らかにした.

報告
  • 小暮 哲也, 仲 優太朗, 佐々木 宏太, 遠藤 俊祐
    2019 年 59 巻 6 号 p. 446-452
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー

    物理・力学的性質を評価するため,文化庁から許可を得て天然記念物である島根県石見畳ヶ浦の波食棚構成砂岩(中部中新統唐(とうがね)鐘累層)および石灰質ノジュールを採取した.砂岩およびノジュールの密度はそれぞれ2.16~2.21Mg/m3,2.50~2.58Mg/m3であり,間隙率は砂岩で10.6~14.9%,ノジュールでは2.40~4.82%であった.また,P波速度は砂岩で2.30~2.99km/s,ノジュールでは3.69~4.63km/sであった.一軸圧縮試験および圧裂引張試験の結果,圧縮強度は砂岩で18.1~26.7MPa,ノジュールで56.9~128MPaであり,引張強度は砂岩で1.52~6.04MPa,ノジュールで4.03~10.9MPaであった.間隙率と引張強度の比として表される易風化指数は,砂岩で2.1~7.6×10-2MPa-1,ノジュールで2.4~6.7×10-3MPa-1であった.ノジュールの鏡下観察からは炭酸塩によるマトリックスの充填が確認されたが,強度が低い砂岩には見られなかった.以上の結果より,ノジュールは炭酸塩の膠着作用により砂岩に比べ緻密かつ強固であり,風化しにくいことがわかった.

資料
特集「防災と応用地質学-地質技術者の社会的役割-」
報告
  • ―平成29年7月九州北部豪雨災害の事例―
    松澤 真
    2019 年 59 巻 6 号 p. 466-471
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー

    平成29年7月の九州北部豪雨により火山岩地域で発生した3箇所の崩壊を対象として崩壊地の現地調査,近隣住民への崩壊時刻のヒアリング,レーダ雨量の解析を実施し,崩壊の発生タイミングと雨量・崩壊形態との関係について検討を行った.調査の結果,大規模崩壊箇所は,斜面に斜交する断層により地下水を貯留しやすい構造をもっていた事,中規模崩壊箇所は緩い流れ盤構造である事,表層崩壊箇所は斜面上部のキャップロック構造により雨水起因の地下水の供給が遅れた可能性がある事が明らかとなった.このような地質構造を反映した結果,一般的に崩壊が発生する順番とは逆に大規模崩壊,中規模崩壊,表層崩壊の順に崩壊が発生していた.

  • 木下 博久, 長谷川 修一, 野々村 敦子, 山中 稔
    2019 年 59 巻 6 号 p. 472-484
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー

    流域スケールにおける斜面崩壊の潜在的危険度を評価することを目的として,谷密度のみを変数とする簡便な評価手法を提案し,その有効性,適用性を検討した.国土地理院発行2万5千分の1地形図及び10mDEMを用いた地形解析から谷線を抽出し,谷密度を算出した.谷線はコンターの平均曲率(H)から求め,H>0.1を閾値とすることで,谷地形としての再現性が高くなることを確認した.表層崩壊,土石流を主とする既往土砂災害を対象として,災害発生斜面の流域の谷密度と比較した結果,谷密度が高い流域ほど豪雨時に不安定となり崩壊が発生しやすい場所が多く存在すること,また,谷頭付近を発生源とする崩壊が多いなどの傾向が認められた.谷密度と崩壊頻度との関係は,0.5~1.5km2程度の流域において比較的良い相関(r=0.60~0.66)を示した.このことから,対象とする解析領域の大きさを考慮することで,本手法は表層崩壊や土石流といった斜面崩壊の危険度評価に有効な手法となり得ると考えられる.今後さらに既往災害事例との比較を重ね,また,地形地質的素因が谷密度に与える影響を考慮するなどで,様々な崩壊タイプに対する本手法の汎用性,適用性の拡大が期待される.

  • 吉村 辰朗, 吉松 史徳
    2019 年 59 巻 6 号 p. 485-494
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー

    斜面崩壊において,滑落崖および側方崖付近に断裂が分布している.移動土塊の形成は,主断裂・共役断裂による分断が起因している.主断裂・共役断裂分布と地形・地質特性を重ね合わせることによって,崩壊発生機構と場所の予測が可能となると考える.凸状台地状地形を呈する移動土塊が断裂に伴う「地形の逆転」によって旧谷地形に分布した地質体である場合,接触不整合面が「すべり面」となる可能性が高い.移動土塊の規模が大きく,地下深部の不安定化(火山砕屑物の風化,深い位置のすべり面形成)が進行した場合には深層崩壊に転化すると考えられる.コア観察による「すべり面」検出では,形態のみでは「すべり面」の識別が困難であるため,地質の定量化(コアγ線測定)による判別手法が考えられる.

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