鹿児島県北薩地域にて建設された北薩トンネルでは,掘削中に高濃度のヒ素を含む地下水が大量に湧出し,地域の水環境への影響が懸念された.そのため,ヒ素濃度が高く湧水量が多い区間にて極超微粒子セメントを使用した岩盤グラウチングにより減水対策工を行い,同区間からの湧水量を大幅に減水した.今回,亀裂性岩盤を対象とした極超微粒子セメントによる減水対策工を通じてトンネル坑内からのグラウチングの施工管理方法や注入改良効果の評価法を確立した.また,ルジオン値とグラウト打設孔の打設密度との近似式から規定孔終了後の注入改良効果を推定することができた.さらに,その注入改良効果は岩盤の割れ目の間隔や開口度,ならびにグラウト打設方向と割れ目方向の交差角などと関連性があることが判明した.
沿岸域の高透水性の地層を対象に,設置型の自動記録式観測機器を用いて地下水の水位や水質を連続観測すると,得られる時系列観測データには,約半日または約1 日周期の潮汐成分の影響による規則的な変動と,気圧変化等に起因するより長周期の成分からなる変動が含まれることが多い.卓越する潮汐成分の周期または周波数は正確に知られているため,変動成分を周波数で選別するデジタルフィルタを用いることで,観測データに含まれる卓越潮汐成分とより長周期の成分を分離できる.30分および10分間隔の時系列データに用いるための,約1 日以下の周期の卓越潮汐成分を低減・除去しつつ長周期成分を保持できる低域通過フィルタの具体例を示す.移動平均フィルタと窓関数を用いたコサインフィルタを紹介し,さらに30分間隔データに対して特定の卓越潮汐成分を完全に除去するよう設計して作成したタイドキラーフィルタを紹介する.これら非再帰型デジタルフィルタの時系列データへの適用は,一般的な表計算ソフトの組み込み関数の入力により可能であり,沿岸域における地下水観測データを扱う際に有用と考えられる.
地質踏査の三種の神器の一つである野帳について,紙からデジタルガジェットであるタブレットPCを利用し,デジタル記録を行った事例を,使用したハードウェア,ソフトウェアを含めて利点,欠点,特徴を含めて具体的に紹介する.
地質踏査の三種の神器の一つであるクリノメーターについて,古典的アナログ機器といえる国内外の製品版クリノメーターを紹介すると共に,現在ダウンロード可能な同機能アプリ(iOSおよびアンドロイド版)について,デジタルガジェットとして紹介する.