BIM(Building Information Modeling)は,建築物や構造物のライフサイクルを通して関係者全体で情報を共有し,迅速な意思決定や合意形成などを実現するための枠組みであり,地質・地盤のリスク情報の共有と引継ぎを可能とするものである.一方でbSI(buildingSMART International)が策定しISO規格となったBIMのデータ交換標準IFC4.3(Industry Foundation Classesバージョン4.3)で扱う地盤データは,主に土質地盤を対象としている.bSIでは,軟岩や岩盤も網羅するとともに,地盤モデルの信頼性評価に必要なモデルの基データ,地質モデルや地質工学・水理地質モデル,不確実性に関する情報の保持と可視化が可能なボクセルモデルも扱えるIFC4.4が開発され,BIMで地質・地盤のリスク情報を共有するための土台は整った.しかし,実際の適用にあたっては,建物モデルの詳細度(LOD:Level Of Development)に整合した地質・地盤モデルの更新の枠組みの実現,関係者全体で用語の定義や呼称の共通認識を持つための標準辞書の作成など課題は多く,学協会や技術者間の協働によるBIM適用の実証とデータ交換仕様の発展が望まれる.
東京南西部の武蔵野台地地下に拡がる埋没谷に分布する世田谷層は更新統の軟弱な粘性土である.このような堆積物の3次元的な分布は多数のボーリング柱状図から推定するほかない.本研究では下部東京層に相当する世田谷層を対象としてボーリング柱状図による世田谷層分布域の検討を行う.加えて,ボーリングコアにより採取した世田谷層試料を用いた圧密試験を行い,3次元分布と物性値から世田谷層の形成後の変遷を議論した.その結果は次のようにまとめることができる.1)世田谷層の上位にある武蔵野礫層の下面標高には起伏がある.これは世田谷層の圧密によるものと考えられる.2)定ひずみ圧密試験の結果から下末吉面に位置する世田谷層ではセメンテーションが起こっておらず遅延圧密が進んでおり,武蔵野面に位置する世田谷層では若干のセメンテーションと遅延圧密に加えて有効上載荷重の減少による過圧密が起こっていると考えられる.
産総研地質調査総合センターでは,地質層序研究や公共工事で作成されたボーリングデータを用いて,都市の地下数十メートルまでの地層の広がりを詳細に示す,3次元地質地盤図の整備を進めている.この取り組みでは,ボーリングデータ地点における地層境界面の標高データ作成,標高データを用いた地層境界面の形状推定,層序情報に基づく地層境界面の重ね合わせという3つの処理を通して地質サーフェスモデルを構築している.また,Web上で地質サーフェスモデルの立体表示や断面図作成,地層境界面の等高線図表示などを行うためのシステム開発も実施している.地質サーフェスモデルは,地質構造の高い視認性をもつことから,都市部の浅部地下地質のより良い理解に役立つと期待される.また,データの高い再現性や活用性から,都市デジタルツイン構築のようなまちづくりのDXでの利活用が期待される.今後,3次元地質地盤図の利活用拡大を進めるためには,地盤物性データの拡充,地質サーフェスモデルをはじめとする3次元データの更新性の確保と品質分布の提示,標準ファイル形式やWeb APIによる各種データの提供などが必要である.