岩石の帯磁率は含有される強磁性鉱物の種類,量,粒径などと相関することで知られ,簡便な装置により非破壊で測定できるため,岩石の地質学的特徴を迅速に把握する際に活用できると期待される.一方で,帯磁率は多様な指標に対して感度を有するが故に,測定対象が複数の特徴を有する場合,その特徴が重なり合ってしまうことがある.これを克服できれば,幅広い現場での情報収集作業に貢献があるが,そのような検討事例は乏しい.本研究では,大島半島北部で実施された大深度ボーリングのコア試料を使用して,夜久野オフィオライトの地殻セクションの帯磁率を連続的に測定し,帯磁率から複合的な地質学的特徴がどのように把握できるか検討した.岩石の組織観察,鉱物モード組成分析,X線CT撮影,ポータブルXRF測定から検証した結果,地質境界や変質の影響がセンチメートルスケールの帯磁率の変化に反映され,玄武岩類の化学組成がメートルスケール以上の帯磁率の変化に反映されることが明らかとなった.本研究で議論された帯磁率の絶対値や変化のスケールに着目して複合的な地質学的特徴を把握する手法は,多様な現場の野外調査やコア記載において,応用されることが期待される.