琵琶湖湖底からの湧水は琵琶湖環境に影響を与えていると考えられるが,深部の湖底湧水の実態は明らかになっていなかった.2009年に琵琶湖北西部の最深部付近でメタン99%以上のガスを伴う深部湖底湧水が発見され,この湧水による湖底環境への影響が心配されたが,2013年以降は,同湧水については十分な調査は行われていない.我々は,この深部湖底湧水の実態と湖底環境への影響を明らかにすることを目的として,2020年から,水中音波探査,水質・水温調査,湖底堆積物中の温度勾配測定,ガスの分析等を行ってきた.湖底からのガス噴出で説明される音響異常(ガス音響異常)は,琵琶湖北西部の60m以深の湖底で広範囲に分布していることがわかった.水質・水温調査から,深部湖底湧水の湖底環境への影響は大きくはないと思われ,ガスの主成分であるメタンは,湖底堆積物に由来する有機起源のものであると判明した.ガス音響異常が継続して認められる場所では,湖底堆積物中の温度勾配が大きく,湖底から湧水として出ている地下水が湖底下に熱を供給していると考えると説明できる.以上を元に,琵琶湖の深部湖底から出る湧水とガスの生成機構について考察した.