花崗質岩が広く分布する東海地方には,百年以上前に建造された人造石構造物が現存している.人造石工法とは愛知県出身の服部長七により開発され,たたき(三和土)と石材を併用して強度と耐水性を備えた建設工法である.たたきはその名が示す通り,まさ土と消石灰と水の三種を混ぜ合わせた練土をたたき締めたもので,土の締固めと消石灰などの化学反応により強度を得る工法である.愛知県下にも複数の構造物が現存しており,文化財等に指定されると共に現役で活躍している構造物も多い.この報文では今も機能を果たしている明神樋門と旧聚楽園駅近傍の海岸埋め立て地擁壁を対象に,経年劣化等による修復作業について,設計から施工までの貴重な経過を記録する.さらに明神樋門や旧今井貯木場施設の現存する“たたき”を対象に強度測定を試みると共に,たたき材料三種の配合を変えて締固めて養生による強度発現を室内試験で確かめ,修復作業に利用するために最大強度を示す配合比を検討すると共に,室内試験の強度と現存する“たたき”強度の比較検討も行った.