本研究の目的は,教職経験0年から31年までの小中高校の455名の教師を対象に,生徒への接し方が教職経験を蓄積する過程でどう変化したか面接調査し,教師の生涯発達の各段階の特徴や関心を明らかにすることである.自由目答で得られたスキルや認識の変化項目を,反応量,平均年数,標準偏差の3変数でクラスタ分析した結果,好ましい変化として,(1)対人関係の原則を把握し,経験が別の場面に応用可能になる入門期,(2)褒め方叱り方のコツを掴んで自分の教育意図が達成しやすくなる前期,(3)生徒の主張や気持ちを理解して生徒の生き方が支援可能になる中期,(4)生徒個人の尊厳や家庭状況を理解し,どんな生徒にも愛情と余裕を示せるようになる後期,の4段階で生涯発達を遂げていくことが見いだされた.教育の情報化は,現在教師の教育意図の実現手法が中心であるが,今後学習者理解の手法開発も視野に入れていかないと,達人教師から評価されないことがわかる.
抄録全体を表示