本研究は, 電子メールコミュニケーションの過程で, 参加者の感情を測定することができるシステムを, 先行研究で使用していた電子メールシステムの問題点に基づいて, 新たに開発した.先行研究のシステムは, 実験環境で使用するために開発されたものであり, 長期に渡って感情データを収集することを, あまり想定していなかった.しかし, 電子メールコミュニケーションの研究において, 長期間のデータの収集を行うことは重要であると考えられる.そこで, 本稿では, 長期に渡って, 電子メールを受け取るたびに感情が測定できるシステムを開発した.更に, このシステムを大学の授業で使用して収集した感情データの分析例も, 本稿で示した.ここでは, ネガティブ感情と敵意感情の発生に寄与する要因について, やりとりされた電子メール内容と感情データから分析を行った.この分析の結果, 電子メールに書かれている話題が, これらの感情の発生に影響していることが示された.更に, 電子メールの書き方や電子メールの操作ミスによる要因も見られた.加えて, やりとりの流れに注目した詳細な分析を, 5つのやりとりの流れについて試みた.
抄録全体を表示