見守りと監視は表裏一体である.子どもがいつどこで何をしているのかを保護者へ報告することは常に監視されているという捉え方と,見守ってもらえているという捉え方の両方が可能である.これは,システムだけでは解決できる問題ではなく,子ども自身がどう意識するかに依拠する点である.監視として疎まれては,システムを構築しても利用されず目的を果たせない.果たして子どもたちは,監視と捉えるのか見守りと捉えるのだろうか.そこで,子どもがいつどこで何をしているのかを保護者へ報告するための携帯電話によるシステムMMRS(Mind Map and Relief System)を開発し,子どもと保護者に対し,その使用感を尋ねた.その結果,「自分の今の気持ち」や「居場所」を保護者に伝えると「ほっとする」あるいは「ややほっとする」と回答している児童が実験者の8割を越すなど,監視よりも見守られている安心感を示す子どもが多かった.監視ではないかと大人が躊躇する以上に,子どもたちは,危険からきちんと見守ってもらいたいと思っていることを示す結果であった.また,携帯電話の操作性に対しても,子どもたちは8割以上が「使いやすい・やや使いやすい」と回答していた.一方,保護者の側は,「使いやすい・やや使いやすい」と回答した割合は3割に留まったが,子どもの居場所がわかるとほっとすると8割以上が回答しており,保護者向けシステムの操作性の向上などが今後の課題として残された.
抄録全体を表示