本研究では,我が国の体系的な情報教育の方向性を国際的な観点から検討するために,日本・韓国・中国の中学生・高校生(以下,中高生)を対象に,情報活用能力の3観点に対する習得意欲及び情報関連用語に対する認知度を比較した.調査は,2009〜2010年に,3カ国の中学生計465名,高校生計376名を対象に実施した.その結果,情報教育における「情報活用の実践力」の習得,「情報社会に参画する態度」の形成に対する習得意欲では,いずれも日本の中高生の平均値が最も高くなった.しかし,日本の中高生は,「情報の科学的理解」に対する志向性が他の2観点に比べて相対的に低く,情報関連用語に対する認知度も韓国・中国に比べて最も低かった.これらのことから,我が国の情報教育は,韓国や中国に比べて教育課程上の位置づけが弱いため,中高生の意欲は高いものの,情報関連用語の認知形成を十分に達成できていない実態が明らかになった.これらの結果に基づいて,今後の我が国の情報教育のあり方について考察した.
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