筆者らは,授業の記録に「自己評価シート」を採用し,学生の学習状況だけでなく,内面的な状態から,学生の授業の受講状態を把握し,授業改善に努めてきた.しかしながら,全体的な把握だけでは,多様な学生の特性を十分に把握できず,指導が浸透していないのではないかと考えた.本研究で用いている「自己評価シート」では,「気分と体調」は授業開始時に,「満足度と理解度」は終了時に記入させている.そこで,これらの記入結果を時間経過的にみて,開始時の「気分」と「体調」から終了時の「満足度」と「理解度」を算出し,この算出結果と実際の記入に差がある学生に注目し,個人的な指導を与えることにした.手法としては学生の授業の受講状態を遷移行列式から求めてみた.本稿は,この行列式を利用して,学生の授業への受講状態を把握し,それをもとに行った個人指導とその試行結果を報告するとともに,これらのFDへの活用を提案するものである.
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