日本フットケア・足病医学会誌
Online ISSN : 2435-4783
Print ISSN : 2435-4775
2 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
第2回日本フットケア・足病医学会年次学術集会のご案内
オンライン投稿・査読システム運用開始のお知らせ
特集:マウス動物実験からみたリンパ浮腫
  • 中谷 壽男, 中島 由加里, 浅野 きみ
    2021 年 2 巻 3 号 p. 95-102
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
     マウスを用いて, リンパ浮腫の研究を行うための, リンパ系に関する知識は重要である. われわれの研究も踏まえたリンパ系を記載した. 特に, 下腿からの集合リンパ管が鼡径リンパ節につながり, 鼡径リンパ節からの集合リンパ管は腋窩リンパ節に繋がっていることは下腿でリンパ浮腫を作製する時に重要になる. さらに, 毛細リンパ管, 前集合リンパ管, 集合リンパ管の構造も記載した. 腹膜腔などの漿液が排泄されるリンパ管小孔の形態を記載した. リンパ管小孔を形成するリンパ管は毛細リンパ管に相当する構造であり, 漿膜腔と漿膜下リンパ管を結ぶ交通路である. 今後のリンパ浮腫の研究の参考になると思われる.
  • 中島 由加里, 浅野 きみ, 中谷 壽男
    2021 年 2 巻 3 号 p. 103-107
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
     乳がんや子宮がんなどの手術に伴うリンパ節郭清に起因する二次性リンパ浮腫の詳細な発症メカニズムの解明や根治的治療法の確立は, 今後さらなる増加が見込まれるこれらのがんサバイバーにとって喫緊の課題である. これらの解決のためには, 動物リンパ浮腫モデルを用いた基礎研究が必須であるが, 齧歯類を用いてリンパ浮腫の作製を試みても, 一過性に浮腫が出現するのみで, リンパ浮腫が持続するモデルを作製することは困難である. われわれの知見に基づくと, リンパ浮腫モデル作製によく用いられるマウスの下肢では, 腸骨リンパ節からも下肢のリンパが排泄されているため, 下肢リンパ浮腫モデルを作製するためには腸骨リンパ節郭清も必要である. また, 下肢リンパ浮腫モデル作製のため, 下肢のリンパが通る3つの経路を遮断する目的で, 鼠径・膝窩・腸骨リンパ節郭清を行った結果, リンパ浮腫の所見は得られたものの, 完全にリンパ流は遮断できず, 重症なリンパ浮腫モデルは作製できなかった. マウスでは, リンパ浮腫の発症や重症化を防ぐために, リンパ節郭清後早期に迂回路が形成されており, この迂回路もマウスでリンパ浮腫が発現し難いメカニズムの一つとして考えられる.
  • 浅野 きみ, 中島 由加里, 中谷 壽男
    2021 年 2 巻 3 号 p. 108-113
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
     マウスのリンパ浮腫出現を目的に, リンパ節とリンパ節に輸出・輸入する集合リンパ管を切除すると, その末梢で一時的にリンパ浮腫は発生するが, それは継続されない.その理由として, リンパ管迂回路の形成による可能性をわれわれは指摘した. その形成されるリンパ管迂回路は切断された集合リンパ管なのか, それとも集合リンパ管と毛細リンパ管をつなぐ前集合リンパ管が関与しているかは不明であった.われわれは,皮筋より深部の集合リンパ管を頭尾の2カ所で結紮し, 集合リンパ管のリンパ流を遮断した. その結果, 結紮した部位より頭側と尾側の部位に橋状に結ぶ交通路(迂回路)が出現することが判明した.その迂回路のリンパ管内皮細胞には細胞分裂像が観察されないことや,結紮した集合リンパ管よりも浅層である皮筋よりも浅い部位に存在することから, このリンパ管迂回路が前集合リンパ管であることが判明した. 末梢からのリンパが集合リンパ管を流れ, 迂回路を通り, 頭側の集合リンパ管へ流れて, 静脈へと戻ることから, 末梢で形成されるリンパ浮腫が軽減または消失すると考える. 人でもこのような迂回路の形成がされるようであれば, リンパ浮腫が軽減される可能性がある.
原著
  • -後方視的調査から考える-
    本間 智明, 小林 平, 長谷川 美紗, 井場 和敏, 小島 輝久, 高桑 翼, 村上 嘉章
    2021 年 2 巻 3 号 p. 114-120
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
     【目的】重症下肢虚血に対して下腿バイパス術を施行した患者において, 術後の歩行リハビリテーション (以下, リハビリ) が潰瘍治癒に与える影響を検討した.
     【方法】2014年から2017年に重症下肢虚血に対して下腿バイパス術および包括的リハビリを行った74例を対象とし, 退院時functional independence measure (以下, FIM) の歩行点数より歩行可能群と歩行不能群に分類し, 患者背景, 潰瘍治癒率, 大切断回避生存 (amputation free survival: 以下, AFS) 率について比較した.
     【結果】55例(74%)が歩行退院し,64例(86%)で潰瘍治癒が得られた.Kaplan-Meier法による潰瘍治癒率は両群で有意差を認めなかった(6ヵ月の潰瘍治癒率,歩行可能群82%,歩行不能群85%, p=0.75). AFS率は歩行可能群で有意に高かった(3年AFS率, 歩行可能群60%, 歩行不能群16%, p=0.047).
     【結論】下腿バイパス術後の歩行リハビリは潰瘍治癒を阻害せず, 歩行可能であることは予後を改善する可能性がある.
実践報告
  • 牛山 浅美, 小島 淳夫, 中 正剛, 鎌田 順道
    2021 年 2 巻 3 号 p. 121-127
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
     弾性ストッキング (Elastic Compression Stocking, 以下ECS) 着用による皮膚接触圧 (Skin Contact Pressure, 以下SCP) に対する保護材や被覆材の影響について検討した. 健康成人15名30肢を対象とした. ECSはコンプリネット®プロ ハイソックスタイプ (テルモ・ビーエスエヌ株式会社) を用いた. SCPはストッキング・包帯圧力測定器AMI3037-SB (株式会社エイエムアイ・テクノ) を使用して, 下腿周囲径最大部の前面3点を測定した. ECS単独によるSCPと比べ, 被覆材を装着した部位ではSCP上昇傾向を, 装着しない部位はSCP低下傾向を認めた. 特に, ウレタンシートはECSとの併用において, 装着部位のSCPを上昇や集中させる目的に適していることが示唆された. ただし, アーティフレックスは装着部位のSCP低下傾向を唯一認めた. アーティフレックスは装着部位のSCPを上昇させずに, 不規則な凹凸形状のSCPを分散し, 局所のSCPを軽減する役割に適していることが示唆された.
資料
  • 馬場 まゆみ
    2021 年 2 巻 3 号 p. 128-134
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
     ハンセン病はらい菌による感染症である. らい菌は皮膚のマクロファージやシュワン細胞内に生存し, 早期に治療を行えば治癒する疾患であるが, 適切な治療を受けられない場合には重篤な末梢神経障害が残り, 四肢の感覚障害, 視力障害など, さまざまな症状を呈する. 日本人の発症は年間0~1名であるが, 在日外国人の発症が年間数名報告されている.
     ハンセン病による創傷形成のメカニズムは糖尿病足病変のメカニズムとの共通点も多いが,血流障害の原因や易感染性は異なる.また,慢性的な刺激からverrucous carcinomaや瘢痕癌が発生することがある.
     強制隔離政策により非人道的な扱いを受けた経験をもつハンセン病回復者は,現在でもハンセン病の既往を家族にも話すことができないことが少なくない.また過去にハンセン病を理由に一般の医療施設での診察を拒否された経験がある場合,専門外来の受診を恐れ,症状が悪化するまで受診を躊躇することもある.
     本稿ではハンセン病による足病変の特徴,および本邦におけるハンセン病問題について述べる.
日本フットケア・足病医学会 役員・評議員名簿
feedback
Top