日本フットケア・足病医学会誌
Online ISSN : 2435-4783
Print ISSN : 2435-4775
5 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
第5回日本フットケア・足病医学会年次学術集会のご案内
特集:透析運動療法とフットケアの接点
  • 安藤 康宏
    2024 年 5 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     本稿では運動療法を専門としないフットケアチームの透析医療スタッフを想定読者とし, 足病領域に限定しない透析患者への運動療法の概要について解説する. 運動療法は医療に限定しない極めて広大な領域であり, 総論といえども限られた紙面で全てを網羅することはできないので, 透析患者への運動療法に取り組むにあたり理解しておくべき項目として, 透析運動療法の経緯,運動療法の効果, 運動処方に必要な総論的基礎知識 (トレーニングの3原理・5原則, 安全限界と有効限界, 運動処方, 継続性を高める工夫), 透析患者の主要足病変であるLEAD (Low Extremity Arterial Disease) を中心にフットケアにおける運動療法, の4つを取り上げる. なお, すべての運動療法が必ず行き当たる最大の障壁は継続性であり, 透析運動療法もその解決への実践的試行錯誤を通じたスキルアップこそが最重要である. そしてこの障壁に行き当たった時に確認すべきポイントはすべて「トレーニングの3原理・5原則」のなかにあることをあらかじめ強調しておきたい.

  • 矢部 広樹
    2024 年 5 巻 2 号 p. 63-69
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     本稿では, 運動療法が循環動態, 特にエネルギー産生, 交感神経と副交感神経の活動や血圧に与える生理学的なメカニズムについて解説し, 透析環境下での特殊な条件における運動がこれらのメカニズムに及ぼす影響を考察する. 特に, 透析中の運動療法の循環動態に影響を与える運動処方の要因として, 運動強度と運動種目が重要であり, 末梢組織の血流を向上させるためのこれらの設定方法について言及する. また透析における除水と運動療法が循環動態に与える変化として, 血圧, 心拍数, 末梢血管抵抗, 末梢血流量, 筋酸素飽和度に焦点を当て, 透析患者に対する運動療法の安全性と効果的な運動処方の重要性について述べる. さらに, フットケアの観点から, 運動療法が下肢の循環血流量に及ぼす影響, 特にPAD患者における運動療法の役割についても考察する.

  • 大山 恵子
    2024 年 5 巻 2 号 p. 70-75
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     運動をしない透析患者は生命予後が悪いこと1), 適度な運動を行うことが透析患者の運動耐容能の改善や, ADL, 生命予後の向上に役立つことなどが示され2), 令和4 (2022) 年度診療報酬改定において「透析時運動指導等加算」が加わり, 透析中の運動療法への関心が高まっている. 一方で, 透析患者は高齢でサルコペニアやフレイルを合併することが多く3), 糖尿病, 高血圧, 脂質異常症など動脈硬化の危険因子の集積から, 慢性閉塞性動脈硬化症 (arteriosclerosis obliterans : ASO) による末梢動脈疾患 (peripheral artery disease : PAD) の合併も高率で 4), 透析患者に対する運動療法が循環動態への悪影響や下肢虚血の増悪をもたらすことが懸念される. 本稿では, 透析中の運動による循環動態への影響, 末梢循環への影響, plasma refilling rate (PRR) への影響などについて当施設での成績を紹介するとともに, 透析患者のフットケアに関して当施設で実施している対策を中心に略述する.

  • 荒木 昇平, 櫻井 雄太, 宇井 広士, 吉岡 和泉, 坂野 元彦, 幸田 剣
    2024 年 5 巻 2 号 p. 76-82
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     血液透析患者は末梢動脈疾患 (PAD) を高率に合併し, 重症化すると皮膚潰瘍・壊疽を合併して切断に至る症例もある. 切断に至るとADL能力が低下し, 予後不良となる. 重症虚血肢に至る前にPADに対する治療を始めることが重要である. PAD患者に対する有酸素運動の効果は多数報告があり, ガイドラインでも推奨されている. 一方, 透析患者のPADに対する効果は明らかにされていない. 本稿では透析中の運動が微小循環の指標である皮膚灌流圧 (SPP) に与える影響を報告する. さらに, PADによって切断に至った症例に対して透析中運動療法を実施した経験も提示する.

原著
  • 内田 みさ子, 片田 裕子, 岩井 浩一 
    2024 年 5 巻 2 号 p. 83-91
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 糖尿病足病変ハイリスク患者のセルフケア行動に影響する因子尺度を開発することである. 対象は看護師歴10年以上, かつ, 一定のフットケア教育を修了したフットケア実践者106人である.作成した原案を郵送法で無記名自記式質問紙調査を行い回収した. 回収率は47.2% (50人) で有効回答率は100%であった. この50人が回答した原案を基にプロマックス法により斜交回転を加えた探索的因子分析を行い, 原案の質問項目を尺度化し, Cronbachのα係数を算出して信頼性を確認した. さらに共分散構造分析を適用してモデルの適合度を確認した. α係数は, 一部の因子で .798と内的整合性が高いと判断される .800以上を若干下回ったものの, その他全ての尺度で .800以上を示した.モデルの適合度で一部の因子に十分でない値があったが, 再検討すべきとされるα係数 .50を下回る尺度はなかったことから作成した評価ツールを使用することは可能であると考えた. ただし, 十分でない値があったことや看護師が経験した患者を統合して回答したデータで作成したものであるため, 今後, 患者を対象として再検討する必要がある.

  • 上原 文恵, 高橋 良恵, 草間 恵里, 山口 大輔, 丹下 めぐみ, 河合 裕子, 駒津 光久
    2024 年 5 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 糖尿病足病変ハイリスク患者 (以下ハイリスク患者) が足病変を予防するために靴選びでどのようなことを意識しているのか明らかにすることである. 大学病院フットケア外来に通院するハイリスク患者10名 (男性8名・女性2名, 平均年齢63.8±9.2歳, 糖尿病の平均罹病期間19.9±8.9年) を対象に, 半構造化面接による質的記述的研究を行った. その結果, 【足に合う靴の着用】【用途に合わせた靴の着用】【足に合わない靴の着用による弊害】【失敗経験による意識変容】【フットケア外来から受けた療養支援】【既製靴を選ぶ難しさ】の6個のカテゴリーが示された. ハイリスク患者は, 足病変を予防するために自分の足に合う靴を着用したいと考えていたが, 市販靴の中から選ぶことに難しさを抱えていた. フットケア外来や足病診療で行われる糖尿病フットケア療養支援において, 靴の具体的な情報や選び方についての知識提供を継続的に支援していく必要がある.

症例報告
  • 小関 早苗, 藤井 さつえ, 宮本  明
    2024 年 5 巻 2 号 p. 99-103
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     当院循環器病棟は, 2022年1月にCOVID-19の院内クラスターとなり, 包括的高度慢性下肢虚血 (CLTI) を有する透析患者6例 (年齢: 62-80歳, 男性5名) も感染し, 感染エリア (個室4床) に隔離された. CLTI治療における血行再建, 高気圧酸素療法, LDLアフェレーシスやリハビリテーションは全て中止となり, 病室で実施可能な創処置のみを実施した. 透析は隔離病棟内で実施し, 週3回3時間に制限された. 当病棟看護師の1/3も感染したため, 十分なフットケアは困難であった. COVID-19治療は全例にモルヌピラビル投与を含む通常治療がなされ, コロナ肺炎を2例に認め, 1例は, 肺炎回復期に後腹膜血腫を, 1例は心筋梗塞を発症後死亡した. 無症状で経過したのはわずか1例であり, 食事摂取量の低下と廃用症候群の進行のため1例は, 寝たきりとなり転院となった. 続発した誤嚥性肺炎で1例を失った. 自宅退院できたのは6例中3例であった. COVID-19感染による隔離期間はわずか10日間であったが, 感染症と原病による病状悪化に加え, 隔離によるADLの低下, 透析時間の制限, 介護力の低下も予後不良の一因となったと考えられた.

  • 杉澤  良太, 岡本 年弘, 稲田 享希子, 鈴木  実, 佐野 真規, 小谷野 憲一
    2024 年 5 巻 2 号 p. 104-109
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     末梢動脈疾患 (peripheral arterial disease: PAD) 患者の救肢において血流評価は重要である. 上腕足関節動脈血圧比 (ABI), 皮膚灌流圧 (SPP), 経皮酸素分圧 (TcPO2)は血流評価法として広く用いられているが, 検査時間の長さ, 検査中の疼痛などのため測定困難例を経験する. また足趾端や踵など曲面部の測定は困難である. 近年, 新しい血流評価方法として, 近赤外分光法 (NIRS法) による組織酸素飽和度 (regional saturation of oxygen: rSO2)値の有用性が報告されている. 今回我々は踵潰瘍を伴うPAD2症例に対し, 周術期にNIRS法を用いた血流評価を行った. 血行再建術後に潰瘍が改善せず, 皮弁形成・移植術を施行した. rSO2 値を測定し皮弁部位を選択し良好な経過を得られたため報告する.

実践報告
  • 牛山 浅美, 中 正剛, 鎌田 順道, 石川  征之, 小島 淳夫, 田澤 賢一, 志村 信一郎
    2024 年 5 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     【目的】弾性着衣の着脱補助具であるスリップおよびゴム手袋について, 摩擦力を測定し, 嗜好性との関係性を検討した. 【方法】摩擦力の測定方法は, 日本産業規格を参考にした. 試料として, スリップ7種類, 手袋8種類と吸着シート2種類を用いた. 外来患者123名を対象に嗜好の種類を聴取した. 【結果】スリップの種類やゴム手袋の種類によって, 摩擦力に有意差を認めた (p<0.001). スリップの滑りやすさは, 縫い目の有無と縫い方の種類による影響を認めた. 直線縫いは, かがり縫いに比べて摩擦力への影響が小さく, 嗜好率が69%と高かった. ゴム手袋の表面の滑りにくさと嗜好は, 必ずしも一致しなかった. ゴム手袋の裏面の摩擦力, 耐久性, 厚さ, サイズなども検討が必要である. 【結論】摩擦力と嗜好性を考慮して補助具を選択することで, 弾性着衣着脱の労力が軽減され, アドヒアランス向上により, 治療効果の向上につながる好循環が期待される.

資料
  • 坂江 千寿子, 宮原 香里, 二神 真理子, ベーレ・ ルッツ, ベーレ・ 操, 依田 英樹, 佐藤 康人, 花里 由美子, 細谷 たき子
    2024 年 5 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     健康の維持のために歩行は重要であるが, 歩ける足と足に合った靴がその前提になる. 本学は2012年から足育に取り組み, A市足育推進協議会のメンバーとして市民の足の相談に応じてきた. しかし, 相談は1回のみで, その後の変化を把握できなかった. また, 担当者が理学療法士の日には歩行や運動の指導を, 靴販売店員の日は靴選びを, という縦割り対応であった. 足のトラブルの対応は, 靴の選び方から運動, 角質ケアまで, 複合的なケアを要するため, 多職種連携による介入の成果を実証したいと考えた.
     そこで, 近隣の靴販売店, クリニックと協力して, 足のトラブルがある市民に, 看護師, 理学療法士, ドイツ整形外科靴マイスター(以下, マイスターとする)が連携して複合的なケアを実施し, その変化を実証する介入研究を試みた. その結果, フットプリント, 歩行速度, 歩容, 胼胝鶏眼等のほか, モニター自身の自覚症状や認識を含めた身体的, 精神的な変化が認められた. 今後, 足のトラブル対策のためには, 職場での足の健診, 適切な靴の選定と調整力をもつ販売店員の役割, 参加者自身の行動変容が重要である.

  • 今井 亜希子, 袋 秀平
    2024 年 5 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     日本フットケア・足病医学会では, 2022年度より在宅医療委員会が新設された. 当委員会は在宅・介護施設で行われているフットケア・足病診療の実態調査と問題点の抽出を目的として, 学会員を対象にインターネットアンケート調査を行った. この結果を踏まえて在宅において必要十分なフットケアの内容や普及に向けた課題について検討したため報告する.

日本フットケア・足病医学会 役員・評議員名簿
feedback
Top