日本在宅救急医学会誌
Online ISSN : 2436-4738
Print ISSN : 2436-066X
5 巻, 2 号
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目次
原著
  • 方波見 謙一, 木村 尚史, 玉腰 暁子
    原稿種別: 原著
    2022 年 5 巻 2 号 p. 1-7
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/07/03
    ジャーナル フリー

    【目的】平成30年北海道胆振東部地震に伴った停電における、札幌市在宅人工呼吸器患者への対応の実態と入院となったリスク要因を検討する。

    【方法】札幌市在宅医療協議会所属会員を対象として行われたアンケート調査を利用し、本研究を行った。

    【結果】札幌市内の在宅人工呼吸器患者数は230名であった。使用時間が常時(24時間)であれば入院に対するPR(prevalence ratio)は9.07(95%CI:5.10~16.10,p<.0001)、人工呼吸器設定についてはTPPV(tracheostomy positive pressure ventilation)の場合、TPPVではない場合に比べ入院に対するPRは3.57(95%CI:2.29~5.55,p<.0001)であった。年齢と使用時間による多変量解析では、使用時間のPRが9.21(95%CI:5.17~16.39,p<.0001)であった。入院とならなかった患者は147名であり、入院回避の理由として、電源が確保できたが87名(59.2%)で、自家用車からの電源確保が35名(40.2%)であった。

    【結語】災害に伴った停電時には在宅人工呼吸器24時間使用は入院のリスクとなる。リスクが高い患者において日ごろから自家用車などの非常電源を確保しておくことが、災害急性期の停電対策として重要である。

学会報告
特別講演
  • 横堀 將司, 須賀 涼太郎, 鈴木 健介, 小川 理郎, 横田 裕行
    原稿種別: 特別講演
    2022 年 5 巻 2 号 p. 16-20
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/07/03
    ジャーナル フリー

     わが国における救急車搬送は664万件/年を超え、人口高齢化に相まってますます増加傾向にある。個々の患者に迅速かつ最善の治療を施すのが医師の使命であり、救急診療の場においても常に診療の質を保つことが不可欠である。

     しかし今、このコロナ禍で学生教育や若手医療者育成はそれに追いついているであろうか? 医学生・看護学生は国家試験対策、若手医師・看護師は働き方改革による労働時間制限やコロナ禍による実習中断からon the job trainingによる自己研鑽の場が失われつつある。緊迫した救急現場では、患者救命優先のため、医学生・看護学生や若手医師・看護師は患者に近寄ることもできない。現場では、より効率よく、リアルで、インプレッシブな医学教育手法が求められているのである。

     われわれは患者やご家族の許可をいただき、熟練した医療スタッフによるよどみない初期診療をvirtual reality(VR)化し、学生授業や若手医師・看護師教育に生かす取り組みを始めている。学生や若手医療者が救急医学のエキスパートスタッフによる診療を繰り返し疑似体験でき、場所や時間を問わず的確な診療手順を体得できる。GuruVR Smart Syncによるマルチモードにより複数の受講生目線を共有することでタイムリーなフィードバックも可能になっている。遠隔による授業展開をすることで、コロナ禍に負けない医療体制を構築するのみならず、教育の地方間格差もなくすことで医師の地域偏在解決などにも貢献できればと思う。

     「机上の学問」という言葉は従来、実地的でない教育の代名詞としてさげすまれてきた。VR教育ツールがわが国の医療のクオリティを保ち、多くの患者の救命に貢献することで、この言葉の概念を根底から変えることを強く期待している。

  • 鈴木 健介, 原田 諭, 須賀 涼太郎, 土肥 莉里香, 中澤 真弓, 小川 理郎, 横田 裕行
    原稿種別: 特別講演
    2022 年 5 巻 2 号 p. 21-24
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/07/03
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2020年5月からMicrosoft Teamsを活用し、チャンネル機能を活用し8~10名に1名の教員を配置した遠隔実習を行った。同年8月から、補講という位置づけで対面実習を行った。50~100名教室に8~10名の学生、1名の教員を配置し、シミュレーター人形を用いて実習を行った。感染対策として、2週間前からの行動記録と体温管理、当日の検温、手袋、ゴーグル、不織布マスク、アルコール消毒液、大型扇風機による換気、高濃度次亜塩素酸水による機材の消毒を行った。検温にて体温が高い場合は、医療機関受診を促し、PCR検査等陽性の場合は、積極的疫学調査を独自で行い濃厚接触者を1時間以内に特定できるようにした。同年9月より、後学期の講義や実習が開始され、各学年週に1回は対面で実習ができる教育環境が構築できた。

     2021年4月から、前述した感染対策に加えて、CO2濃度を測定した。「CO2が800ppmを超えたら強制的に換気を行う」を感染対策に加えた。同年6月下旬より職域接種を行った。実習では、virtual reality(以下、VR)視聴とシミュレーション実習を行うだけでなく、学生の目線と定点の2つのカメラで撮影し、映像を用いたフィードバックを実践した。2022年1月からオミクロン株による第6波の影響により、積極的疫学調査による早期隔離、濃厚接触者と感染経路の特定を行った。

     コロナ禍において、新型コロナウイルス感染対策に関する最新の医学的知識を学び、感染対策を教職員が学生と一丸となって実施した結果、VRを用いたシミュレーション教育が実施できた。

教育講演
活動報告
編集後記
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