頭頸部外科
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12 巻, 3 号
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  • ―顕微鏡下微小血管吻合での有用性について―
    冨永 進, 江谷 勉, 妹尾 一範, 米田 孝明
    2002 年 12 巻 3 号 p. 95-99
    発行日: 2002/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     頭頸部再建手術における問題の一つが,手術時間が長時間にわたるということである。とりわけ遊離組織移植を行う際の顕微鏡下微小血管吻合は再建手術の律速段階となりうる。この問題に対して我々は自動血管縫合器:非貫通性チタン製クリップ(VCS)を用い,顕微鏡下微小血管吻合をより短時間に施行し良好な成績を得ている。 直径が2mmを越える血管については縫合糸のみによる吻合より短時間に吻合が可能であった。また口径差を認める場合の吻合においても縫縮や縫合の追加が簡便であった。 本手技は頭頸部悪性腫瘍に対する再建手術において有用性が高いと考えられた。しかし血管壁の肥厚,内皮の障害を認める症例においては従来の血管吻合術が望ましいと考えられた。
  • 八田 千広, 寺田 友紀, 藤久 仁親, 垣淵 正男, 河合 健一郎, 阪上 雅史
    2002 年 12 巻 3 号 p. 101-106
    発行日: 2002/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     最近5年間の喉頭合併切除術を行った下咽頭癌63例の再建方法について検討を行った。一期的再建は61例(96.8%)で二期的再建は2例(3.2%)であった。一期的再建は胃管再建12例,遊離空腸再建19例,大胸筋(PM)皮弁再建21例,前腕皮弁再建2例,一期的咽頭粘膜縫合7例で,二期的再建は全例DP皮弁再建であった。咽頭粘膜の全周性切除の場合は空腸再建が多かったが,基礎疾患などで開腹手術が困難と判断した6例はPM皮弁などの皮弁再建を行った。合併症は再建材料の壊死が3例(5.4%)に認めたが,再建材料で差は認めなかった。瘻孔形成率は7/63(11.1%)でPM皮弁が4/21(19.0%)と高頻度であった。通過障害発生率は7/63(11.1%)で遊離空腸再建が4/19(21.1%)と多かった。全周性粘膜欠損症例に対してPM皮弁再建を行った結果(3例),両側中咽頭高位切除症例は皮弁の部分壊死をきたしたが他の2症例は合併症を認めなかった。
  • 横島 一彦, 中溝 宗永, 粉川 隆行, 矢嶋 裕徳, 中嶋 博史, 青柳 美生
    2002 年 12 巻 3 号 p. 107-111
    発行日: 2002/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     頭頸部癌手術後のせん妄を考察する目的で,1997年7月から2000年12月までに当科で行った頭頸部癌手術257件を検討した。  手術後せん妄の発症率は13.4%であった。また,せん妄発症症例の88%は大規模手術後に発症しており,大規模手術施行症例に限ると,発症率は25.4%と高率であった。  大規模手術118件の検討からせん妄の危険因子として,1)精神疾患の既往,2)不充分な病識,3)術直後呼吸器合併症が考えられた。また,本研究で定義した,せん妄発症危険性スコアを用いることで,せん妄の危険性の推測が可能であることを示唆した。
  • 西嶋 文美, 金子 富美恵, 後藤 さよ子, 山村 幸江, 佐藤 美知子, 篠 昭男, 吉原 俊雄
    2002 年 12 巻 3 号 p. 113-118
    発行日: 2002/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     当科における鼻副鼻腔乳頭腫36例について検討した。inverted papillomaが最も多く,22例にみられた。乳頭腫の基部は上顎洞内側壁に多くみられたが,治療にあたっては,基部の範囲が比較的限局している例はCaldwell-Luc法で,広範囲に渡る例はDenker法や1ateral rhinotomyを選択した。篩骨洞に基部が限局している例は内視鏡下鼻内手術を選択した。再発例はsinonasal papillomaを一部認めるsquamous cell papilloma1例とinverted papilloma2例で,Caldwell-Luc法,Denker法,内視鏡下鼻内手術をそれぞれ施行しており,術式による差はみられなかった。よって,術前にCT,MRI,内視鏡で基部及び占拠部位を充分に検討し,治療の選択にあたることが重要と考えられた。
  • 山田 弘之, 西井 真一郎, 石田 良治
    2002 年 12 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 2002/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1996年から2000年までの5年間に,当科で手術を施行した上皮小体機能亢進症13例を対象に,頭頸部外科医としての今後の具体的な対応を検討した。内科から手術を目的として紹介された症例が9例,精神科からの紹介が2例,腎臓内科からの続発性亢進症が1例,当科で発見した症例が1例であった。術前診断に各種検査を施行したが,局在診断率は不良であった。腺腫のみ摘出が5例あったが,他8例は2腺以上の摘出を行った。術後血清カルシウム値とint-PTH値は全例において正常化した。他科からの紹介を増やすために,頭頸部外科受診患者から本疾患を見逃さないこと,安全確実な手術を行うことでアピールするべきかと考えた。
  • 沖田 純, 高安 定, 八田 千広, 小笠原 寛, 阪上 雅史
    2002 年 12 巻 3 号 p. 125-129
    発行日: 2002/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     唾液腺腫瘍において,Myoepithelial carcinoma(筋上皮癌)は極めて稀な腫瘍で,発現頻度は唾液腺の上皮性腫瘍の0.1~0.7%とされている。今回耳下腺が原発と考えられるMyoepithelial carcinomaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。腫瘍は長径7cmで右耳下腺深葉から副咽頭間隙にかけて存在していたため,下顎正中離断による耳下腺深葉腫瘍切除,下顎骨辺縁切除術を施行し摘出した。組織学的には紡錘型の核が密に増生し,筋上皮細胞の腫瘍性増殖を認め,脈間浸潤も認められた。免疫組織化学的検査ではa-SMA,EMA陽性であり,鑑別診断に重要であった。
  • 中江 香, 岩井 大, 小椋 学, 湯川 尚哉, 永田 基樹, 井上 俊哉, 辻 裕之, 和歌 信彦, 山下 敏夫
    2002 年 12 巻 3 号 p. 131-135
    発行日: 2002/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     中咽頭癌術後に深部静脈血栓症を合併した一例を経験した。深在静脈血栓症は術後8日目に顕著化し,治療にはヘパリンが奏功した。診断にはRIヴェノシンチグラフィーが有用であった。耳鼻咽喉科・頭頸部領域における深在静脈血栓症症例は,今後増加しうると考えられ,ハイリスク患者には本疾患の発症も考慮して,予防的処置や,早期発見,早期治療が行われるべきと考えた。
  • 小山 訓子, 鈴木 さおり, 斉藤 慶子, 河野 聖美, 吉原 俊雄
    2002 年 12 巻 3 号 p. 137-141
    発行日: 2002/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     神経鞘腫はシュワン細胞由来の良性腫瘍で,全身のいたるところに発生する。頭頸部領域は比較的好発部位で,なかでも舌・頸部・咽頭に多くみられる。今回我々は頬粘膜下に発生した神経鞘腫を経験したので報告する。症例は47歳男性。半年前より右頬部腫瘤が出現,硬くなったため受診された。右頬部に直径約20mmの境界明瞭な腫瘤を触知した。CTでは,低吸収で不均一に造影された。MRIでは,T1低信号,T2比較的高信号,Gd-DTPAで不均一に造影された。歯齦部より腫瘍摘出術を施行した。病理組織学的にはAntoni A型の神経鞘腫であった。術中起源神経は同定されず,術後も神経脱落症状は認められなかった。
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