頭頸部外科
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14 巻, 1 号
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  • 小宗 静男
    2004 年 14 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     中耳手術の基本である鼓膜形成術と乳突洞削開術の手術術式についてのべた。鼓膜形成術はinterlay法について,局痳,皮膚切開,外耳道皮膚剥離,鼓膜皮膚剥離,筋膜挿入,外耳道タンポンの方法など各項についてそのコッを詳述した。乳突洞削開では,進入点,削開の範囲,外耳道後壁の保存の仕方にポイントを絞って解説した。
  • 鴫原 俊太郎
    2004 年 14 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     鼓膜形成術と乳突削開術は中耳手術の根幹で,この両手技に習熟することにより,他の術式の理解も容易となる。われわれは大穿孔の鼓膜形成術にはサンドイッチ法を用いているが,確実な結果が得られやすい反面,浅在性治癒と術後の真珠腫形成が大きな問題である。手術のコツは非明視下の操作をさけることが重要で,外耳道の屈曲例では削開をおこない,外耳道上皮がたりない場合は有茎弁で覆う。乳突削開術は外耳道後壁をできるだけ薄く削開することと上鼓室前方を削開することが重要なポイントで,耳小骨の周囲ではノミを使用する。また術前の画像で危険部位の状態を確認することが安全な手術への大きな鍵である。
  • 細井 裕司
    2004 年 14 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     再形成真珠腫を防止するためには,術後に中耳腔陰圧などの要因が生じ,外耳道後壁へ陥凹力が働いても,真珠腫再形成につながるretraction pocketが生じないような耳を形成するのが合理的と考える。また,再形成を防止するだけでなく,術後乾燥までの期間が短く,cavity problemが生じない方法がよい。この条件を満たす方法として,我々が1989年から行っている軟素材による外耳道後壁再建を行う鼓室形成術の手術法,retraction pocket形成防止の理論を述べる。次いで,術後の中耳腔の状態の異なる2症例を対比し,また硬素材によって外耳道後壁が形成されていた真珠腫再発例を取り上げて,真珠腫再形成防止における本法の特徴を述べた。
  • 山本 裕, 高橋 姿
    2004 年 14 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     再形成真珠腫を防止するための基本手術として,われわれはcanal wall down法による真珠腫の完全摘出の後に外耳道後壁の再建と乳突腔充填術を採用している。術式の要点は健常な鼓膜,外耳道皮膚をできるだけ温存すること,外耳道後壁のbuttressを滑らかに形成した後に骨パテ板を用いて段差や後退が生じないように外耳道後壁を再建すること,そして乳突腔を緻密に充填することである。本術式の長期成績を検討すると外耳道の形状は97%の症例で安定しており,再形成真珠腫は生じなかった。本法は適切に行えば再形成真珠腫を防止し,かつ術後乳突腔障害を生じる可能性がなく極めて有用な術式と考えられた。
  • 東野 哲也
    2004 年 14 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     外耳道の骨性枠組みを保存するcanal wall up法は,形成鼓膜の再陥凹から真珠腫再形成に至るプロセスが再現され易いことが欠点とされてきた。これを防ぐには乳突削開の際にできるだけ粘膜を保存し,鼓膜陥凹の発生部位である上鼓室を耳管や前・中鼓室から孤立させないための対策を講じる必要がある。交通路造設は前鼓室開放術が基本であるが,耳管上陥凹粘膜弁の利用や粘膜移植等で開存性の維持に努める。tympanic isthmus病変が高度の場合には,キヌタ骨,ツチ骨頭の除去や鼓膜張筋腱切除を行う。その他,耳介軟骨による上鼓室側壁形成,鼓膜換気チューブ,耳管内へのチューブ留置,症例に応じて乳突充填を併用する。前・中鼓室~上鼓室粘膜病変が極めて高度な場合にはシリコンシート留置による段階手術に持ちこむ。
  • 須納瀬 弘, 小林 俊光
    2004 年 14 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     再形成真珠腫は術式選択上考慮すべき重要な要素である。我々は,耳管機能障害の根本的治療が困難な現状において,上皮が再陥凹するスペースが縮小して真珠腫再形成が起こり難いOpen法を基本術式として積極的に適用している。手術のポイントは術後にトラブルを起こさないcavityの作製であり,そのために1)創腔辺縁を落とした広い削開,2)sinodural angleや迷路周囲等の蜂巣の十分な削除,3)facial ridge,耳管上陥凹,外耳道前壁などの処置による丸いcavityの作製,4)有茎筋膜弁・有茎筋骨膜弁・軟骨を用いた部分的充填による再陥凹防止と上皮化促進,5)入口形成が重要である。
  • 池田 稔
    2004 年 14 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     中耳真珠腫に対して外耳道削除型鼓室形成術・外耳道再建術を行った場合の,術後の真珠腫再形成をできるだけ防止する方法について述べた。本術式は多くの利点があるが,欠点として指摘できるのは,再形成真珠腫の危険性を常に伴う点である。この術式を採用する場合にはこの点を十分認識しておくべきであろう。本術式を行うに当たっての重要なポイントは,形成した乳突腔にaerationをつけられるように,すなわち,再建した乳突腔が含気腔として治癒できるように,条件を整えていくことである。本論文では,そのための症例の選択や手術手技におけるいくつかの注意点について指摘した。
  • 平野 明喜
    2004 年 14 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
  • 梅野 博仁, 白水 英貴, 千年 俊一, 佐藤 公則, 中島 格
    2004 年 14 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     一側声帯麻痺52症例に対して声帯内脂肪注入術を行った。脂肪は脂肪吸引法で採取し,注入は直達喉頭鏡下にラリンゴ用注入針で行った。術後3年を経過した症例や,術前発声時の声帯突起間に間隙を認めた症例でも,脂肪を披裂軟骨楕円窩にめがけて注入し,披裂軟骨を内方に移動させることで,最長発声持続時間・平均呼気流率・基本周期変動率,最大振幅変動率・規格化雑音エネルギーの有意な改善を認めた。両側声帯突起間距離が声帯膜様部長の10%以上・最長発声持続時間が3秒未満・平均呼気流率が400ml/sec以上,の症例であっても本術式のよい適応であった。しかし,術前の発声時に両側声帯に上下間の間隙を有する症例は適応がないと考えられた。
  • 大森 孝一, 小川 洋, 多田 靖宏, 諸橋 美香
    2004 年 14 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     片側声帯麻痺の外科治療として,甲状軟骨形成術I型,声帯内注入術,披裂軟骨内転術などがある。甲状軟骨形成術I型(一色原法)について術前の声門間隙の画像と術後の発声機能を調べた結果,声帯突起間の距離が膜様部声帯の長さの10%を越えると発声機能不良で,これが一つの定量的基準といえる。次に,摘出喉頭標本で手技を手順ごとにシミュレートしてみると,開窓部の軟骨片摘出,内軟骨膜の処理,ゴアッテクス(R)など挿入材料の工夫により,声門後部の間隙が大きい症例へも対応できることがわかった。さらに,声帯内転障害で失声を呈した機能性発声障害例に対して,手技の工夫を加えて甲状軟骨形成術1型を行い,劇的な音声改善が得られた。
  • 牧山 清, 吉橋 秀貴, 茂木 立学, 中井 百, 香朴 理沙, 正木 稔子, 木田 亮紀
    2004 年 14 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     我々は片側性声帯麻痺に対する音声機能改善手術として声帯内注入術,甲状軟骨形成術I型,被裂軟骨内転術を行っている。これらの手術法は予め設定した基準に従って選択している。注入術は声帯質量増加を目的としてアテロコラーゲンを用いて行う。披裂軟骨内転術か甲状軟骨形成術の選択は,発声時声門間隙の大きさ,左右披裂軟骨声帯突起の位置関係で行う。甲状軟骨形成術と披裂軟骨内転術を行った症例の術前後のNIH Imageを用いた発声時声門面積比およびPS-77Eを用いた発声機能検査結果を比較し,手術選択基準の妥当性について検討した。選択基準に沿って施行した症例では声門面積比,発声持続時間,呼気パワー,発声効率の全ての項目で手術後改善した。手術選択基準から外れた手術を施行した例でも評価項目によっては改善が認められたが,選択基準内の手術を施行した場合よりは手術効果が低かった。われわれの設定した選択基準は妥当と考えられた。
  • 吉本 世一, 三谷 浩樹, 米川 博之, 鎌田 信悦, 川端 一嘉, 苦瓜 知彦, 三浦 弘規, 別府 武福, 福島 啓文, 佐々木 徹, ...
    2004 年 14 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1997年1月から2001年12月までに当科を初診した舌・喉頭・下咽頭癌全例にCT・MRI・エコー下吸引細胞診による頸部リンパ節転移の検索を行った。その結果NOと判断されたもののうち,予防的郭清で頸部転移を認めたものと経過観察中に後発転移を生じたものとを併せたリンパ節転移の比率は,T1/2舌癌が27%,T3/4舌癌が36%,進行舌癌健側が8%,T3/4喉頭癌28%,T3/4下咽頭癌47%,進行下咽頭癌健側が15%であった。T1/2舌癌の経過観察群の原病制御率は91%であった。また各々の好発リンパ節転移部位を示した。これらの結果を基にそれぞれの症例に応じ予防的郭清の適応を決定すべきと考えられた。
  • 愛知県がんセンター頭頸部外科における現状
    寺田 聡広, 小川 徹也, 兵藤 伊久夫, 伊地 知圭, 有馬 忍, 安藤 篤, 鈴木 康士, 長谷川 泰久
    2004 年 14 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     愛知県がんセンター頭頸部外科では,2000年11月より臨床的N0口腔癌に対し99mTcフチン酸を用いてセンチネルリンパ節同定を行ってきた。15例に対してこれを行った結果,センチネルリンパ節は個々の患者の頸部リンパ節転移状況を正確に反映し,センチネルノードコンセプトが成立することがわかった。15例中5例,延べ6個のセンチネルリンパ節に転移を認め,4例は最もカウントの高いものに,他の1例は2番目のカウントのものに転移を認めた。またその3分の2は微小転移であった。以上の結果より,術中センチネルリンパ節生検および診断による頸部郭清適応決定に関する指針が得られ,現在も引き続き研究を遂行している。
  • 菅澤 正
    2004 年 14 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     現状では,咽頭後リンパ節の取り扱いに関して統一した基準はなく,各施設に任されている。臨床的に取り扱いが重要となるのは,下咽頭癌手術時の予防郭清の必要性の有無である。実際どの程度の転移頻度であるかは報告により62%から5%とばらつきが大きく,その数字によって,施設の対応も異なっていた。東京大学にでは,下咽頭癌咽頭後リンパ節転移は7.4%に認められ,StageIVあるいはN2b以上の進行癌症例では10%を越えていた。術後のQOL等を考慮すると咽頭後リンパ節郭清を全例に行うのはoversurgeryであり,術前画像診断で疑われる症例,あるいはStageIVの進行癌に施行するのみでよいと考える。
  • 斉川 雅久, 海老原 敏
    2004 年 14 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1906年Crileによって提唱されたRadical neck dissection(根治的頸部郭清術)は,Martinの功績により全世界に普及したが,術後後遺症の多いことが問題となった。治療成績を保ちつつより後遺症の少ない術式が追求された結果,機能温存に主眼をおく多数の術式が開発された。今日では機能温存を主眼とする頸部郭清術が頸部郭清術の中心となっており,それはわが国でも同様である。ただ,あまりにも多くの術式が開発されたため,術式名や適応,術式の細部などに大きな混乱が認められ,この点が問題となっている。現在,これらの混乱を収拾するための様々な試みが行われている。
  • 藤井 隆, 吉野 邦俊, 上村 裕和, 赤羽 誉, 栗田 智之, 藤久 仁親, 鈴木 基之, 宇和 伸浩, 佐藤 武男
    2004 年 14 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1992~2001年に根治治療を行った中咽頭前壁扁平上皮癌34例を対象に検討を行った。喉頭全摘9例は全例頸部リンパ節多発転移例であり,手術のみでは喉頭温存例に比べむしろ予後が不良であった。しかしながら,喉頭全摘例では特別な嚥下練習を行わなくても術後2週間で経口摂取が可能であった。早期からの自宅での生活や速やかな術後治療の開始が可能な点は,喉頭全摘を行った場合の利点と考えられた。中咽頭前壁癌では予想される切除範囲と意欲や理解力も含めた全身状態を考慮して,症例毎に術後の嚥下練習の成否を予想する必要がある。特に,広範囲リンパ節転移を伴った進行癌に対しては,喉頭全摘を行った場合の利点についても配慮すべきである。
  • 道津 充, 川田 晃弘, 大里 康雄, 奥 竜太, 崎浜 教之, 小室 哲, 田丸 直江, 林 徳眞吉, 高橋 晴雄
    2004 年 14 巻 1 号 p. 105-108
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     成人の多くは,サイトメガロウイルスに不顕性感染しており,成人におけるサイトメガロウイルス腸炎は,悪性腫瘍や臓器移植後など免疫不全者に生じる。今回我々は,下咽頭癌術後に,移植遊離空腸に限局したサイトメガロウイルス腸炎による多発性難治性潰瘍を形成した一例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。症例は68歳男性。平成6年1月28日喉頭癌声門型(T2N0M0)にて喉頭全摘出術後のfollow中,平成13年7月より嚥下障害出現し,下咽頭癌の診断にて平成13年8月15日下咽頭頸部食道摘出術,両側頸部郭清術,遊離空腸による食道再建術施行し,術後照射としてLinac 61Gy追加した。同年12月より吐血が持続し,内視鏡下に移植遊離空腸に限局した全周性の潰瘍性病変を認めた。局所再発もなく移植空腸よりの生検にて,サイトメガロウイルス感染症の診断であった。
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