頭頸部外科
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16 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 北原 糺, 久保 武, 三代 康雄
    2006 年 16 巻 3 号 p. 171-175
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     メニエール病患者の最終的な苦痛が難聴・耳鳴の増悪であることは以前より指摘されている。この点に留意して当施設では内リンパ嚢開放と同時に嚢内に高濃度ステロイドを留置する術式を考案した(内リンパ嚢高濃度ステロイド挿入術)。しかしながら内リンパ嚢手術は本手術を含め,機能温存術であるがゆえにめまい発作の再発が問題となることがある。今回,メニエール病再発例に対して再度内リンパ嚢高濃度ステロイド挿入術を施行する機会があり,良好な結果が得られた。再手術所見として,初回手術で開放した内リンパ嚢内に再生した乳突粘膜が入り込み内腔を閉鎖していた。再手術により再度内リンパ嚢を開放するとともに,周辺の骨組織の削開をさらにすすめ乳突粘膜を可及的に除去した。めまい発作の抑制とともに聴力温存さらに改善を期待する場合,再手術は再発例に対する治療法の選択肢の一つと考えられた。
  • 鈴木 敏弘, 任 書晃, 坂口 博史, 山本 聡, 島田 剛敏, 栢野 香里, 牛島 千久, 久 育男
    2006 年 16 巻 3 号 p. 177-185
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2010/09/27
    ジャーナル フリー
     中耳真珠腫手術の際に,露出硬膜と真珠腫母膜の癒着が強い場合,我々はオープン法を選択し癒着した母膜を外耳道に開放している。本術式を要した4症例について検討した。全例で乳突蜂巣の発育は不良であった。癒着部位は中頭蓋窩硬膜3例,後頭蓋窩硬膜2例で,重複が1例であった。2例に後半規管瘻孔,1例に外側半規管にblue lineを認め,高率に半規管瘻孔を合併した。強い癒着の成因としては,真珠腫と外耳道の交通欠如に伴う中・後頭蓋窩側へ進展や,強い炎症の遷延が考えられた。いずれの症例も術中,術後合併症なく乾燥耳が得られており,本術式は露出硬膜と真珠腫母膜の癒着が強い場合に選択すべき術式と考えられた。
  • 大久保 啓介, 塩谷 彰浩, 齋藤 康一郎, 池田 麻子, 亀山 香織, 大塚 邦憲, 深谷 和正, 小川 郁
    2006 年 16 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
     症例は嗄声,誤嚥を主訴とする86歳女性の一側性反回神経麻痺の患者。局麻下,経皮的に声帯内BIOPEX®注入術を施行した。術後嗄声,誤嚥は改善し,喉頭ファイバースコピー上弓状声帯は改善し,声帯は内転した。患者は注入123日後に他病死し,病理解剖が施行された。摘出喉頭に対してCTを施行し,術翌日のCTと比べて明らかな吸収移動を認めなかった。摘出喉頭の肉眼的観察では,BIOPEX®は声帯と甲状軟骨の間に一塊となって硬化していた。また患側披裂軟骨の内転が認められた。病理組織学的には,注入されたBIOPEX®の全周にわたって異物反応は軽微であった。
  • 道津 充, 畑地 憲輔, 川田 晃弘, 大里 康雄, 奥 竜太, 崎浜 教之, 高橋 晴雄
    2006 年 16 巻 3 号 p. 195-199
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
     今回我々は頸部多発性脂肪肉腫の一症例を経験したので報告する。
    症例は79歳女性,頸部脂肪腫で,1996年,1999年に二度腫瘍摘出術を行っているが再発を繰り返し,2002年8月に経過および画像上,悪性の疑いもあり紹介された。初診時,頸部には多発性の腫瘤と咽頭腔にも突出する腫瘤を認めた。2002年9月腫瘍摘出術,左頸部郭清術を行ったが,腫瘍は一部硬く食道後方を通り両側に多発性に存在していた。病理組織診断は高分化型脂肪肉腫であった。術後創部治癒は良好なものの,術前より危惧された誤嚥のため,経口摂取から退院に至るまで難渋した。この症例の経過および治療法について若干の文献的考察を加え報告する。
  • 別府 武, 川端 一嘉, 三谷 浩樹, 吉本 世一, 米川 博之, 福島 啓文, 佐々木 徹, 新橋 渉, 酒井 昭博, 塚原 清彰, 折田 ...
    2006 年 16 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2010/09/27
    ジャーナル フリー
     近年,下咽頭癌においても早期がんの一部には喉頭を温存した部分切除術が選択される機会が多くなったが,進行癌においては未だ咽頭喉頭頸部食道摘出術(以下,喉喉食摘術)が主流である。今回我々はT3N0梨状陥凹癌に対して喉頭温存下咽頭部分切除術を施行し良好な結果を得た。切除範囲は喉頭蓋,仮声帯,披裂喉頭蓋ヒダ,および梨状陥凹のほとんどに及ぶ大きなものであったが,bulkyな腹直筋皮弁を声門上腔に覆い被さるように再建し,患側の梨状陥凹を占拠するようにつぶすことで,術後の嚥下機能には支障をきたさなかった。両側の声帯,披裂運動が保存できれば,T3の下咽頭癌でも喉頭機能を温存した部分切除が可能な症例が存在するものと思われた。
  • ―予後因子数値化による遠隔転移リスク評価の検討―
    島津 倫太郎, 倉富 勇一郎, 田中 剛, 井之口 昭
    2006 年 16 巻 3 号 p. 207-213
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
     佐賀大学医学部耳鼻咽喉科で一次治療を施行した甲状腺乳頭癌158例について臨床的検討を行った。年齢,性別,pTNM分類臨床病期,原発巣最大径の7項目について予後因子としての有用性を比較検討した。55歳以上,男性,pT4,N1b,臨床病期IV期は単変量解析のみで,遠隔転移と原発巣最大径4cm以上は多変量解析でも有意な予後因子であった。さらに遠隔転移に対するリスク比に基づき,55歳以上,男性に各1点,原発巣最大径4cm以上に2点,T4に3点,N1bに4点のスコアをつけ,症例ごとに合計し予後因子スコアとした。スコア0~3:0%,4~6:5%,7~9:21%,10~11:43%であり予後因子スコアと遠隔転移出現率に相関がみられた。予後因子スコア化は遠隔転移出現を推定でき,治療法決定に有用であると考えられた。
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