頭頸部外科
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18 巻, 1 号
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  • 島田 剛敏, 中野 宏, 中井 茂, 久 男育
    2008 年 18 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     化学放射線治療後に救済手術を行なった口腔・咽頭扁平上皮癌症例31例を検討した。救済手術後の5年粗生存率は35%であった。一次治療時リンパ節転移陰性例は転移陽性例より予後良好であった。また救済手術時病期I,IIの早期例は病期III,IVの進行例より予後良好であった。術後合併症は45%の症例に認め,再建組織移植を要した症例で高頻度であり,術後合併症を有した症例は合併症のなかった症例に比べ予後不良であった。化学放射線治療後の救済手術の治療成績向上には再発の早期診断が重要であると考えられるが,合併症の多い救済手術の減少を図るには化学放射線治療の方法と適応を再検討する必要性が示唆された。
  • 松浦 一登, 小川 武則, 加藤 健吾, 去石 巧, 西條 茂
    2008 年 18 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     動注2回以上かつ60Gy以上の選択動注照射療法後に救済手術を行った24症例の検討を行った。内訳は原発巣切除が3例,頸部郭清が16例,原発巣切除+頸部郭清が5例であった。未照射片側頸部郭清例(平均手術時間206分,平均出血量120ml)に比べ,転移リンパ節に直接動注を行った選択動注照射症例4例の平均手術時間は223分,平均出血量は202mlと有意に増加していた。原発巣切除+頸部郭清例では全例に術後合併症を認めた。救済手術後の5年粗生存率は49.4%,疾患特異的5年生存率は56.5%であった。以上より,救済手術時の高いリスクを十分吟味した上で初回治療時に選択動注照射療法を選ぶべきである。
  • ―特にPlanned Neck Dissectionについて―
    河本 勝之, 片岡 英幸, 竹内 英二, 藤原 和典, 中村 陽祐, 三宅 成智, 北野 博也
    2008 年 18 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     近年,根治的手術ではなく放射線化学同時療法(CCRT)を選択する頭頸部癌患者が多くなっている。CCRTで原発は制御できるようになったが,頸部転移が残存することが多いため,われわれはplanned neck dissection(PND)を治療予定に組み込んでいる。ところがPNDや救済手術では合併症を起こしやすく,機能障害が残存することも分かってきた。 今回,初期治療にまずCCRTを施行し,後にPNDを施行したN2以上の頭頸部癌患者14名(両側郭清4例,片側郭清10例)を検討の対象とした。治療効果は高いが,術後の有害事象は多くなる傾向にあった。術中,術後のトラブルは多くなるが,進行癌の予後の向上のためには積極的にPNDを施行する必要があると思われた。
  • ―Cold instrumentsによる術式―
    福岩 達哉, 黒野 祐一
    2008 年 18 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     全身麻酔下口蓋扁桃摘出術において,従来のメスや剥離子(Cold instruments)を使用した術式について報告した。我々の術式における工夫点としては,扁桃被膜の損傷予防策としての12番メスによる粘膜切開,久保氏扁桃摘出用刀による剥離,Brünings式扁桃絞断器による摘出,摘出後の扁桃窩に対するデルマトール®の使用が挙げられる。Cold instrumentsによる術式で最も重要なものは摘出後の止血手技であるが,モーリス笹木氏深部結紮鉗子による深部結紮を基本とするが,止血困難例では縫合結紮を併用する。特に経験の浅い術者は電気凝固などHot instrumentsを過信し盲目的止血を行う危険もあり,まずCold instrumentsによる手技を習得することで頭頸部外科手術の基本を身につける必要がある。
  • ―甲状軟骨形成術の立場から―
    土師 知行
    2008 年 18 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     甲状軟骨形成術I型は,現在では一側性声帯麻痺の嗄声改善のための標準的手術の一つとなっている。この手術は,手技が比較的容易で侵襲も少なく,局所麻酔下でストレスなく行えて,術中の発声や声帯位置のモニタリングが可能であり,手術の可逆性や調節性にすぐれている。一方で,声門後部の大きい間隙の是正には効果が少なく,発声持続時間が4秒以下のものでは披裂軟骨内転術の併用を考慮する。開窓部への挿入材料としてはゴアテックス®シートがよく用いられている。手術のポイントとしては,開窓部の位置や大きさ,内軟骨膜の剥離ゴアテックス®の挿入方法が挙げられる。
  • 我那覇 章, 鈴木 幹男, 又吉 宣, 赤澤 幸則
    2008 年 18 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     鼓室型グロームス腫瘍の2例を経験し,術前の超選択的血管塞栓術により良好な術中の出血コントロールを行い得たので報告する。症例1は65歳女性。左耳閉感を主訴に当科を受診した。症例2は57歳女性。左拍動性耳鳴と左難聴を主訴に当科を受診した。2例とも耳内所見にて鼓室内の拍動する赤色腫瘤を認め,術前の造影MRIにて著明な造影効果を認めた。鼓室型グロームス腫瘍と診断し,手術前日に血管造影検査を施行した。2例とも超選択的血管塞栓術を施行した。腫瘍は経外耳道的に摘出した。術中の出血は2例とも10ml以下であった。術前の血管塞栓術は術中の出血コントロールに有用であると考えられた。
  • ―縫合不全の検討―
    中溝 宗永, 横島 一彦, 稲井 俊太, 酒主 敦子, 八木 聰明
    2008 年 18 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     下咽頭・頸部食道癌全周性切除後は,空腸移植術が行われる。当科では定型的(Is型)再建の他に,2分して一方をパッチする(P型)再建や,中間部をカットする(Ic型)再建も行った。これら非定型的再建の信頼性を明らかにするため,各再建の経口摂取開始時期とその遅延理由を調査した。対象は男:女=56:9例,年齢は48~89歳である。全例の経口摂取の平均は15.1日であり,Is型(n=52)では縫合不全,腸閉塞,血腫,頸皮壊死の各1例で経口摂取が遅延した。P型(n=8)では縫合不全,腸閉塞,膿瘍の各1例,Ic型(n=5)では腸閉塞の1例で遅延した。この結果から,非定型的再建では縫合不全の増加は顕著でなく,その信頼性は確保されうるものと思われた。
  • 袴田 桂, 林 泰広, 鈴木 克佳, 内藤 聡, 臼井 広明, 久保田 亘, 松井 和夫
    2008 年 18 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     化学放射線療法後の再発喉頭癌症例に,喉頭摘出の後,回盲部パッチ法による音声再建を行った。本法は,喉頭摘出後の食道開窓部に回盲部の結腸側をパッチするように縫合し,回腸を気管と端々吻合することで気管食道の間にシャントを作成し,回盲弁を逆流防止弁として使用すると同時に声帯としても利用する方法である。この方法は化学放射線療法後の喉頭摘出症例に対し,局所の血流を補完できると同時に音声再建を施行でき,術式は簡便で複雑な組織形成は不要であるという利点がある。欠点としては開腹操作が必要で,それに伴う合併症の危険が皆無ではないことである。音声再建希望の有無,年齢,癌の進展度等により適応を決定して施行すれば術後のQOLの改善に希望を与える術式のひとつと思われる。
  • 中村 謙一, 田中 秀隆, 篠崎 剛, 西野 宏, 市村 恵一
    2008 年 18 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     症例は嗄声を主訴とする64歳男性。喉頭ファイバースコピー上,右仮声帯の腫脹を認め,直達喉頭鏡下に生検を施行したが,確定診断には至らなかった。その後,仮声帯の病変は増大傾向を認めたため,再度生検を施行したところ,喉頭原発MALTリンパ腫stage IEとの確定診断を得た。標準的化学療法であるCHOP療法にrituximabを併用するR-CHOP療法を行ったところ,病変は速やかに消失した。 MALTリンパ腫をはじめとする低悪性度B細胞リンパ腫では確定診断が得られない場合も少なくなく,血液内科医や病理医と密な連携を取って,治療のタイミングを逸しないことが重要であると思われた。
  • 徳丸 裕, 藤井 正人
    2008 年 18 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     耳下腺腫瘍の手術において,顔面神経の同定,温存は重要な手術操作の一つである。しかしながら副咽頭間隙に進展するいわゆるダンベル型腫瘍や深葉での再発症例などの場合には,顔面神経の同定や温存に難渋することも多い。我々はこれらの耳下腺腫瘍に対して術中の顔面神経モニタリング(メドトロニック社NIMシステム)を用いることにより,安全で確実な顔面神経の機能温存が可能であった。巨大な耳下腺腫瘍症例や深葉再発腫瘍などでは,顔面神経の機能温存に術中の顔面神経モニタリングが有用であると考えられた。
  • 細川 誠二, 岡村 純, 望月 大極, 名倉 三津佳, 峯田 周幸
    2008 年 18 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     異所性甲状腺発生原因は甲状腺原基の下降障害によって生じ,その発生部位の多くは,頸部正中である。今回我々は舌根に存在する異所性甲状腺が増大したために,呼吸困難を来たし,手術を必要とした症例を経験したので報告する。症例は71歳女性,咽頭違和感と睡眠時ENT Nagura Clinic呼吸困難のため近医を受診し,舌根部腫瘤を指摘され当科を紹介された。生検にて異所性甲状腺と診断された。その後も徐々に増大傾向を認めたため,頸部外切開にて摘出術を行った。術後,呼吸困難もなく経過良好である。
  • ―OK-432による硬化療法―
    工藤 典代, 有本 友季子, 仲野 敦子
    2008 年 18 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     乳幼児にみられる嚢胞状リンパ管腫は,生後1,2ヶ月で急速に腫脹し気道圧迫症状を呈することもある脈管系の先天異常である。巨大な顔面頸部腫脹は審美的にも心理的にも患者や家族に大きな負担が生じる。治療の第一選択はOK-432による硬化療法である。今回1994年から2005年に経験した症例につき,治療法とその結果を報告した。当初の3症例は摘出術を施行したが,1998年以降の12例に関しては第一選択として硬化療法を行った。1例は感冒を契機に急激に腫脹し他施設で摘出術を受けたが,10例は硬化療法が著効している。注入量は1KEを基本とし,超音波下で嚢胞内容液吸引後注入している。効果判定には3から6ヶ月の経過観察が必要であった。
  • 力丸 文秀, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    2008 年 18 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     頸部郭清術前の化学放射線治療の有無による手術の難しさや合併症の違いを検討するために,化学放射線治療後の症例と頸部郭清術を先行した症例で頸部郭清術における手術時間,出血量,合併症について臨床的に比較検討を行った。平均手術時間,平均出血量については両者の差はなかったが,術後咽喉頭浮腫の頻度は化学放射線治療先行群で頸部郭清術先行群より有意に多く認めた(p<0.05)。リンパ漏の頻度に差はなかったが,その治療では70Gy以上の照射例で4例中3例75%に植皮やDP皮弁による再建術を要した。化学放射線治療後は術後の咽喉頭浮腫やリンパ漏の発生に留意し,手術手技をより丁寧に行い,術後の気道狭窄への注意が必要である。
  • 宮原 裕, 成尾 一彦, 伏見 博彰, 梶川 泰
    2008 年 18 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     極めてまれな頸部悪性末梢神経鞘腫瘍と下咽頭癌の合併症例を経験したので報告した。症例は65歳男性で,主訴は右頸部腫瘤,当院外科での穿刺細胞診で腺癌の診断であったので,胸部X線,CT,腹部超音波検査,消化管内視鏡検査がなされたが原発巣は不明であった。当科受診時右中頸部に50×60mm大,弾性硬の固着した腫瘤を触知した。右梨状窩外側の張り出しを認めたが,唾液貯留はなかった。頸部腫瘤の組織生検を行い,病理診断は悪性末梢神経鞘腫瘍であった。脳外科で精査後,皮膚合併切除,右頸部郭清術,下咽頭部分切除術,甲状腺右葉切除術,前腕皮弁による再建術を施行した。下咽頭梨状窩に扁平上皮癌を認めた。予後は極めて不良で術後6ヶ月後原病死した。
  • 小笠原 寛, 井之口 豪
    2008 年 18 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     1985年より下鼻甲介粘膜を一時的に剥離し上顎洞自然口の開大を行う内視鏡下副鼻腔手術を行ってきた。下鼻甲介粘膜を剥離し上顎突起と篩骨突起を落とし,鈎状突起とともに自然口を開大する。さらに大きな術野が必要な時には自然口開大部を鼻腔底まで広げたり涙骨を除去したりする。 この術式による大開窓は重症副鼻腔炎,上顎洞性後鼻孔ポリープ,術後性上顎洞嚢胞,良性腫瘍,甲状腺眼症の減圧や眼窩底骨折に有用である。自然口開大は篩骨洞手術時の重症合併症予防となる。
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