頭頸部外科
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18 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 村上 信五, 伊地知 圭
    2008 年18 巻2 号 p. 97-101
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     顔面神経は側頭骨内を複雑に走行し,鼓室部は薄い神経管に囲まれ中耳腔に面している。側頭骨外科において顔面神経の処理に難渋することは少なくないが,術前の麻痺の発症や状態により顔面神経の処理方法が異なる。すなわち,術前に麻痺がない場合や軽度の場合,また,麻痺が高度でも急性発症の場合は顔面神経を可能かかぎり温存する。しかし,麻痺が高度でしかも数ヶ月経過している症例では神経と病変を合併切除するとともに,顔面神経の中枢端が使用できる場合は大耳介神経による神経移植を,中枢端が使用できない場合は舌下神経と顔面神経のInterpositional jumpgraftを施行する。
  • 小川 郁
    2008 年18 巻2 号 p. 103-108
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     骨迷路の一部が中耳炎の炎症や真珠腫,外傷によって破壊され,膜迷路が中耳腔や頭蓋内に露出する状態を内耳瘻孔と呼ぶ。内耳瘻孔には半規管瘻孔,蝸牛瘻孔,内耳窓瘻孔があるが,臨床的に最も遭遇する頻度の高いのは外側半規管瘻孔である。内耳瘻孔が生じると内耳膜迷路に直接圧負荷が加わり,めまいや平衡障害が生じる。臨床的には内耳瘻孔を疑った場合には瘻孔症状検査および側頭骨高分解能CTにて診断する。内耳瘻孔では瘻孔によるめまい,感音難聴耳鳴の治療または予防のために瘻孔を修復することが治療の最終目的となるが,瘻孔修復の適応,その方法に関してはいまだ議論の別れるところである。本稿では,自験例を中心に,内耳瘻孔の取り扱いについて概説する。
  • 友田 幸一, 村田 英之, 宮澤 徹
    2008 年18 巻2 号 p. 109-113
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     副鼻腔嚢胞に対する鼻外手術として,前頭洞嚢胞では,嚢胞が外側に位置し,鼻内からの操作が及ばない場合,瘢痕組織や新生骨増生で前頭管が狭くなった場合,骨折に起因する場合などである。できる限り含気化を図りルートが確保できる場合はドレナージを,そうでなければ充填術を行う。上顎嚢胞では,嚢胞が前外側に存在している場合,骨壁が厚く,小さい場合,歯原性の場合などである。できるだけ鼻腔への開口部を広く開け,周辺の粘膜を保存し,術後性嚢胞の発生を考慮し充塞性の閉鎖は避ける。篩骨・蝶形骨洞嚢胞は,基本的にESSで対応できるが,海綿静脈洞へ進展している場合や蝶形骨大翼に限局した嚢胞の場合は脳外科的アプローチも考慮する必要がある。
  • 春名 眞一
    2008 年18 巻2 号 p. 115-117
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     副鼻腔嚢胞に対する経鼻的内視鏡手術は嚢胞を大きく開放して排泄路を確保する方法である。術後の開存は,嚢胞の位置,数と嚢胞壁の厚さで術中に可及的に大きく鼻腔に交通路をできるか,術後に創部の十分な清掃を行うごとができるかで決まる。篩骨・蝶形骨洞嚢胞では,根治手術は難しく,経鼻的な内視鏡手術が第一選択となる。一方,上顎洞嚢胞や前頭洞嚢胞で内視鏡にて的確に鼻腔と大きな交通路を作製することが容易になっているが,嚢胞の位置で,経鼻的な開放が難しくあるいは開通できても大きく開放できにくい場合がある。最も空洞性治癒の良好な結果を得ている嚢胞のタイプは,単房性で鼻道に接し,膜性閉鎖している場合である。
  • 河田 佐和子, 上久 保出, 浅野 貴徳, 高橋 直樹
    2008 年18 巻2 号 p. 119-125
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     当科にて経験した側頭下窩膿瘍2症例について報告する。 症例1:64歳男性。近医歯科より当院歯科口腔外科を紹介され受診した。右下顎大臼歯周囲炎にて入院し,翌日,右顔面腫脹が増強し当科紹介となる。CTにて,側頭部,側頭下窩から翼口蓋窩,一部副咽頭間隙に膿瘍を認めた。培養検査ではStreptococcus constellatus/milleriが検出された。症例2:65歳,男性。糖尿病あり。右下顎智歯周囲に痛みあるも放置していた。当院歯科口腔外科を受診し,右下顎智歯周囲炎を認めた。同日,顎下部および歯肉を切開排膿したが増悪し,喘鳴を伴い,当科を紹介された。CTにて右側頭窩から頸部にかけてガス産生を伴う膿瘍を認めた。培養検査ではPrevotella inter-mediaとStreptococcus anginosusが検出された。 2症例とも,側頭部および顎下部の2方向より切開排膿し,両者が交通するドレーンを留置した。同部より洗浄を行うとともに,抗菌薬の投与を行い,著明に改善した。 側頭下窩に進展した膿瘍に対してのドレナージ法として,上記の方法が有効であると考えられた。
  • 望月 高行, 幸子 望月
    2008 年18 巻2 号 p. 127-133
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     鼻・副鼻腔疾患における短期滞在手術の現状を報告した。日帰り手術センターを利用することにより,全身麻酔下の手術でも手術当日来院することを可能とし,術前入院を省略することができた。クリニカルパスを導入したことで情報を共有しバリアンスに対応できた。運営システムおよび麻酔法,手術法の工夫により鼻・副鼻腔疾患における短期滞在手術は十分安全と思われた。また術後成績も以前の入院期間と比べ遜色なく,患者の満足度も高かった。今後定型的手術では短期滞在手術が増加していくものと思われる。
  • 西池 季隆, 柴田 大, 與田 茂利, 村田 潤子
    2008 年18 巻2 号 p. 135-142
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     いままで,通常の鼻外あるいは鼻内前頭洞手術後に鼻前頭管にTチューブを留置した報告はあったが,endoscopic modified Lothrop procedure(EMLP)術後のTチューブ留置の報告はなかった。我々は,EMLP術後に鼻前頭管にTチューブを留置した7症例に関して報告した。術後の平均観察期間は13ヶ月であった。Tチューブは術後2~3ヶ月で抜去しているが,難治例の2例では永続的な留置を試みている。Tチューブを抜去した5例の鼻前頭管の状態は,観察時点ですべて良好であった。Tチューブの形状は,単洞化した前頭洞および鼻前頭管に適合しやすい。Tチューブ留置は,自然脱落がなかったことから安定性に優れていると考えられた。
  • 谷亜 希子, 多田 靖宏, 横山 秀二, 大森 孝一
    2008 年18 巻2 号 p. 143-150
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     多形腺腫は大唾液腺に好発するが,鼻腔原発例は比較的稀である。今回われわれは鼻中隔より発生した多形腺腫症例を経験した。症例は66歳女性。鼻閉を主訴とし,近医耳鼻咽喉科を受診。鼻腔腫瘍の診断で当科へ紹介された。局所麻酔下に生検術を行い,迅速病理組織では紡錘細胞癌の診断であった。腫瘍は鼻中隔から発生しており,後日内視鏡下での摘出術を行った。摘出術では紡錘細胞癌を念頭におき,十分な安全域を設けた。永久病理組織は多形腺腫であった。本症例は腫瘍基部が鼻中隔に限局していること,腫瘍の周囲への浸潤がないこと,内視鏡下での観察が可能であったことから鼻内手術が選択された。
  • 上條 朋之, 浅野 理恵, 海老原 充, 鬼塚 哲郎
    2008 年18 巻2 号 p. 151-158
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     中咽頭癌側壁型に対する手術治療における切除方法を3つに分け検討を行った。対象は2002年から2007年までに手術加療した25例(男性18例,女性7例),平均年齢は58.8歳であった。術式の選択は,1.口内法,2.Combined法,3.下顎離断法が選択され,それぞれ5例,11例,9例であった。口内法は全例Raw surfaceのままとし,Combined法11例のうち8例は遊離皮弁による再建を行い,3例は一次縫合した。下顎離断法9例は全例遊離皮弁再建を行った。術式の決定には腫瘍の進展範囲,特に舌根方向と内側翼突筋への進展の有無に注意して切除方法を決定する必要がある。
  • 辻榮 仁志, 渡邉 昭仁, 谷口 雅信
    2008 年18 巻2 号 p. 159-162
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     症例は62歳男性。1998年に食道癌で手術と放射線治療,2001年に喉頭癌で喉頭全摘の既往があり外来通院中であった。2006年2月13日の再診時に下咽頭にNBIで病変を認め,2月22日に内視鏡的粘膜切除術を施行した。病理結果は上皮内癌であった。頭頸部領域は重複癌が多く,喉頭癌治療後に下咽頭癌が発生することはfield cancerizationの概念から十分に考えうる現象である。喉頭癌治療後に長期間経過し発生した同部位の扁平上皮癌は局所再発または放射線誘発癌などが原因とされることもあるが,これらの中に今回のような新たな癌が含まれている可能性もあると思われた。
  • 馬場 美雪, 馬場 信太郎, 中原 はるか
    2008 年18 巻2 号 p. 163-167
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     症例は76歳の男性,嚥下障害,嗄声を自覚し,内科で精査されたが特記すべき異常がみられず,3年前に発症した脳梗塞の後遺症とされ経過観察されていた。嚥下障害,嗄声は進行し,呼吸困難を伴ってきたため当科を初診した。初診時の喉頭ファイバースコピー所見で咽頭後壁の著明な突出と左声帯麻痺,右声帯の開大制限が見られ,同時に行った頸部単純X線撮影でForestier病と診断された。当院整形外科へ紹介し,前縦靭帯骨性増殖性病変の切除術を施行され,嚥下障害および右声帯の可動性改善が認められた。本症例におけるForestier病と嚥下障害,嗄声,呼吸困難の関連について若干の文献的考察を加え報告する。
  • 古川 孝俊, 長瀬 輝顕, 千田 邦明
    2008 年18 巻2 号 p. 169-174
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     一般にMALTリンパ腫は低悪性で,進展が遅いと言われているが,今回我々は,甲状腺原発のMALTリンパ腫が気道狭窄を生じるまで進展し,緊急照射により救命しえた症例を経験したので報告する。頸部腫脹・気道狭窄音が主訴で当科初診し,CTにて甲状腺両葉の著明腫大を認め,気管は最小径4.1mmにまで狭窄し,狭窄の上下幅は59.0mmに及んでいた。緊急の多分割照射と,その後の回転原体照射にて気道は著明に開大し,窒息を回避できた。甲状腺腫瘍生検にて,MALTリンパ腫の診断となったが,予後良好といわれるMALTリンパ腫でも今回のような生命に関わる事態になることもあり注意を要すると思われた。
  • 岡本 英之, 岡本 倫朋, 家根 旦有, 細井 裕司
    2008 年18 巻2 号 p. 175-179
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は77歳女性。主訴は頸部腫瘤で,甲状腺全摘出術,左D2a郭清術を施行した。pT4a pNlbpEX2-左反回神経で気管浸潤は認めず,高細胞型乳頭癌と診断された。2ヵ月後から呼吸困難が出現し,症状が増悪したためCT検査を施行したところ,輪状軟骨直下から気管内に腫瘍を認め,穿刺吸引細胞診では低分化型乳頭癌が疑われた。鎖骨を部分切除して,胸骨上縁レベルまで気管を喉頭および食道の一部と共に合併切除し,右頸部郭清術,前腕皮弁パッチによる食道再建術を施行した。病理組織は扁平上皮癌で,TTF-1やthyroglobulinの発現は認めず,原発性気管癌の同時重複と考えられた。術後照射50Gyを施行したが,半年後肺転移,多発骨転移を生じ,手術から1年1ヵ月後に永眠(原病死)された。
  • 佐藤 慎太郎, 田中 剛, 倉富 勇一郎, 島津 倫太郎, 門司 幹男, 鈴木 久美子, 草野 謙一郎, 横川 恭子, 井上 明子, 井之 ...
    2008 年18 巻2 号 p. 181-186
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1991年から2006年の間に佐賀大学医学部附属病院で経験した甲状腺分化癌縦隔進展例15例の治療成績について検討を行った。症例は男性6例,女性9例,平均60歳で,初発例が5例,再発例が10例であった。縦隔進展のパターンは縦隔リンパ節転移が14例,縦隔への直接浸潤が1例であった。縦隔郭清術を施行した症例は7例で,すべて胸骨縦切開法により胸部外科医によって行われた。初発時に頸部手術と縦隔郭清術を行った症例が4例,再発時に縦隔郭清術を行った症例が2例,再発時に頸部手術と縦隔郭清を行った症例が1例であった。縦隔郭清術施行7症例の5年生存率,10年生存率はいずれも85.7%であった。非施行例8例のうち6例は手術不能により根治手術を施行しなかった。これら6例は診断後4年以内に死亡しており,このうち4例は気管狭窄あるいは気管内出血という苦痛の大きな死因であった。このような大きな苦痛を取り除くために,非根治例でも今後は症例によっては縦隔隔清を選択すべきであると考えられた。非施行例のうち2例は手術拒否例であり,1例は診断後89ヶ月,もう1例は120ヶ月になるがいずれも担癌生存中である。縦隔郭清術に伴う合併症として縦隔洞炎と反回神経麻痺が1例ずつみられ,縦隔洞炎は抗生剤投与と縦隔内洗浄で制御できた。甲状腺癌縦隔進展例に対する縦隔郭清術については,耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が単独で行う胸骨柄切除や胸鎖関節切除などの術式が一般的であるが,耳鼻咽喉科と胸部外科のチーム医療で臨む胸骨縦切開法は充分な視野が得られ比較的安全に行い得る術式であり,有用な術式の一つであると考えられた。
  • 山田 弘之, 宮村 朋孝, 福家 智仁, 富岡 利文, 福喜多 晃平
    2008 年18 巻2 号 p. 187-191
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     51例のバセドウ病手術症例中,30例に亜全摘が,21例に全摘が行われた。当科では,亜全摘は一側葉の全摘と対側葉の亜全摘を行っている。反回神経は喉頭入口部まで露出し,副甲状腺は可能な限り温存する。亜全摘30例中,残置量が2g未満が5例,2~4gが19例,4~6gが5例,6g以上が1例であった。術後の甲状腺機能は13例が機能正常,16例が機能低下であった一方で,再発は1例のみであった。再発の1例は安全に再手術ができ,合併症も認めなかった。51例において,術後反回神経麻痺は1例も認めず,副甲状腺機能低下は2例のみであった。術後成績比較的安全な再手術が可能である点から,当科の亜全摘術は選択する価値がある。
  • 山下 拓, 今西 順久, 新田 清一, 渡部 高久, 和佐野 浩一郎, 稲垣 洋三, 塩谷 彰浩
    2008 年18 巻2 号 p. 193-198
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     下咽頭癌術後の咽頭再建には遊離皮弁が用いられることが多い。しかし高齢者や全身状態不良症例では,その適応を躊躇する場合もある。今回,喉頭全摘中下咽頭部分切除後に頸部有茎(筋)皮弁であるsubmental island flapにより咽頭再建を行った下咽頭癌症例を経験した。症例は81歳男性。下咽頭右梨状陥凹癌T4aNIM0。右選択的頸部郭清術(level II-V),喉頭全摘中下咽頭部分切除術,sub-mental island flapによる咽頭即時再建術を行った。術翌日から歩行開始,手術10日後から経口摂取開始した。現在まで再発もなく経口摂取も良好である。遊離皮弁の代替としてsubmental island flapは有用なオプションの一つであると思われた。
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