頭頸部外科
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19 巻, 1 号
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シンポジウム1
頭頸部癌治療における化学放射線療法の役割
  • 篠崎 剛, 林 隆一, 海老原 充, 宮崎 眞和, 斉川 雅久, 海老原 敏
    2009 年 19 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌は初診時既に進行していることが多く,予後不良の疾患である。患者のQOLを考え,進行度に応じて機能温存を考慮した治療が必要である。当院では喉頭温存手術が困難な症例に対しては手術とCRTの両者を提示している。化学放射線療法(CRT)では胃瘻や気管切開への長期依存を余儀なくされることがあり,機能温存が達成されないこともある。治療後の機能や合併症,再発時の対応,重複癌に対する治療などを十分考慮して手術,CRTの適応を検討する必要がある。CRTでは胃瘻を用いた栄養管理とオピオイドを用いた疼痛対策などをはじめとする支持療法によって治療完遂率を高め,粘膜炎の遷延や腎障害を予防している。
  • 大月 直樹, 斎藤 幹, 丹生 健一
    2009 年 19 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    近年,早期のみならず進行喉頭癌に対しても局所制御と喉頭温存を両立させる治療法として,化学放射線療法の有用性が示されている。欧米では多施設共同ランダム化比較試験の結果より,生存率を低下させることなく,喉頭温存率を向上させるという目的から,進行喉頭癌の標準的治療法として化学放射線療法が推奨されている。しかしながら,最近,化学放射線療法による嚥下障害や誤嚥といった晩発性の有害事象や再発に対する救済手術の合併症が問題となっている。喉頭癌症例では,化学放射線療法および喉頭温存手術それぞれの合併症,後遺症および予後についてインフォームドコンセントを行い,治療法を決定する必要がある。
シンポジウム3
副鼻腔周辺疾患に対する経鼻内視鏡的アプローチ
  • 唐木 將行, 森 望
    2009 年 19 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    内視鏡下経副鼻腔眼窩アプローチは解剖学的構造から手術困難とされる眼球後部病変に対する手術方法である。近年,内視鏡手術器械の発達,手術技術の向上とともに,内視鏡下鼻内副鼻腔手術は鼻副鼻腔周辺臓器に手術適応を拡大した。最近9例の手術を行い,骨膜外・内病変に分けて眼窩手術の適応と限界について検討した。骨膜外病変では液性病変であれば内・下方,一部眼窩上方まで可能であり,充実性病変は内・下方の場合手術適応となる。この場合,出血の制御が重要である。骨膜内病変では視神経と離れていることが大前提,外眼筋の確認ができる,術前に視力障害を来していることが条件となる。その場合も十分に手術適応を考慮する必要がある。
  • 比野平 恭之
    2009 年 19 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    本稿では従来,鼻内法では困難とされてきた眼窩下壁への安全で容易なアプローチ法とESSに基づいた手術手技を解説する。
    視野と操作性を確保するため粘膜下下鼻甲介骨切除を行い,鼻中隔の彎曲があれば矯正する。経中鼻道的に上顎洞を大きく開放し,眼窩内容の逸脱が高度な場合は経下鼻道アプローチを追加する。上顎洞内に逸脱した眼窩内容に陥入,癒着する骨片を摘出し,眼窩内容を鉗子や吸引管で鈍的に持ち上げる。眼球運動障害改善度を眼球牽引試験で確認する。症例によりバルーンで眼窩底を4~6日間挙上する。
    吹き抜け骨折の整復をESSで行うことで整復操作がより繊細で緻密となり,術後経過観察も経中鼻道的に行える利点がある。
ビデオセミナー1
中耳手術―軟素材による外耳道再建を行う鼓室形成術―
  • ―20年間の経験と本法における外耳道入口部拡大法―
    細井 裕司
    2009 年 19 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    真珠腫の再形成性再発の防止を目的として行っている「軟素材による外耳道再建型鼓室形成術」の20年の経験から本法を解説するとともに,本法における外耳道入口部拡大法を示した。解説事項としては,本法の手術法,中耳真珠腫手術法における本法の位置づけ,再形成性再発防止の理論,軟素材による再建の歴史と現況,適応,手術の注意点,本法におけるcavity problem,本法における真珠腫の再発,中耳真珠腫手術の考え方,本法によって使用されるようになった用語である。本法の理解のために特に耳鼻臨床の論説(97:183-192,2004)の参照を勧めた。
ビデオセミナー3
頸部郭清術
  • ―全頸部郭清術―
    寺田 聡広, 花井 信広, 小澤 泰次郎, 平川 仁, 川北 大介, 丸尾 貴志, 三上 慎司, 長谷川 泰久
    2009 年 19 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    全頸部郭清術は頭頸部外科医にとって必ず習得するべき基本的な手術手技である。下顎下縁,顎二腹筋後腹を上縁,鎖骨上縁を下縁,僧帽筋前縁を後縁,頸動脈鞘,前頸筋を前縁としこれを深頸筋膜の深層と浅層で包んだ状態で切除する。筆者らは先に郭清の上縁の処理をした後,下縁を処理し,郭清組織を後方から前方へ向かって,深頸筋面から剥離する。温存すべき神経,脈管を確実に同定温存することが肝要である。頸部解剖を理解し正しい剥離面を正確に進む技術が必要である。
教育セミナー1
鼻内視鏡下手術「適応と私の手技」
原著
  • 野村 正猛, 村下 秀和, 米納 昌恵, 田渕 経司, 原 晃
    2009 年 19 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性で,主訴は咽頭痛,呼吸困難であった。CT所見から咽頭後間隙から食道,胃噴門部にかけての膿瘍を疑い頸部外切開にて開放を行うも咽頭後間隙には膿瘍を認めず,食道直達鏡,上部消化管内視鏡にて咽頭,食道,及び胃を観察した。咽頭から食道胃粘膜下の腫脹を認め穿刺,排膿した。術中所見,画像所見より咽頭食道胃壁内膿瘍と診断し薬物加療を行った。その後播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併し,カルバペネム系薬剤のtime above MICを考慮しMEPM 1回0.5mgを1日4回投与に変更し救命し得た。通常深頸部膿瘍は,頸動脈間隙や咽頭後間隙,危険間隙を介し縦隔に進展するが,今回は膿瘍が咽頭食道胃壁内に生じた非常に稀な症例であった。
  • 成尾 一彦, 宮原 裕, 家根 旦有, 細井 裕司
    2009 年 19 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    急性喉頭蓋炎に続発した披裂部膿瘍例を経験した。3日前より急性喉頭蓋炎の診断で近医入院加療されていたが,呼吸困難が生じ当院に転院となった。喉頭内視鏡所見では,喉頭蓋の発赤腫脹を認め,披裂部が高度に腫脹していた。頸部CTで披裂部に周囲に造影効果のある低吸収域を認め膿瘍形成が疑われた。急性喉頭蓋炎に続発した披裂部膿瘍と診断し,緊急の気道確保と切開排膿の適応と判断した。気管内挿管により気道確保後,気管切開を施行した。その後,直達喉頭鏡を挿入し顕微鏡下に切開排膿した。急性喉頭蓋炎で披裂部の腫脹を合併している例は,気道確保の必要性や頸部膿瘍へ進展する可能性も念頭におき治療にあたることが大切である。
  • 井上 俊哉, 辻 裕之, 南 豊彦, 山下 敏夫
    2009 年 19 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    当科における遊離移植の現況を検討した。当科では,腸管移植を除いて,皮弁挙上から皮弁縫着,血管吻合まで全て頭頸部外科医がおこなっている。1987年に遊離組織移植を導入し,20年余りが経過したが,現在までに468症例(470皮弁)を経験した。使用した再建材料の内訳は,前腕皮弁147例,腹直筋皮弁128例,空腸173例,骨付き肩甲皮弁10例,腓骨皮弁6例,などであったが,近年は腹直筋皮弁と空腸が多用される傾向にあった。移植組織の生着率は94.0%であった。壊死症例の検討では,空腸使用例が多くみられ,原因として静脈血栓に起因するものが多かった。当科における根治的化学放射線療法の導入の時期に一致して,空腸壊死症例が増加していることから,術野における何らかの影響が示唆された。
  • 西村 俊郎
    2009 年 19 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    耳下腺の唾液腺導管癌3症例を報告した。症例1は腺内に限局する多形腺腫由来で,切除術後に放射線療法を行い,2年10ヶ月再発を認めない。症例2は顔面神経を温存した耳下腺全摘及び頸部郭清術と,術後にドセタキセル併用化学放射線療法を行うも,多発肺転移のため術後1年11ヶ月で死亡した。症例3は術前から顔面神経麻痺を伴っており,顔面神経を含む耳下腺全摘及び頸部郭清術と,術後にドセタキセル併用化学放射線療法を行い,術後1年11ヶ月再発を認めない。現在まで,唾液腺導管癌治療に対するエビデンスは充分ではないが,乳癌との類似性が指摘されるなど,今後,様々な治療法の可能性とその有効性についての検討が必要である。
  • 籠谷 領二, 物部 寛子, 戸島 均
    2009 年 19 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    咬筋内に発生した血管腫で口外法による手術を施行した1例を報告する。症例は14歳女性。5歳頃からの左耳下部腫瘤を主訴に当科へ紹介された。初診時,咬合時に出現する左耳下部腫瘤を認めた。造影MRI検査にて咬筋内にT2強調画像で高信号を呈する領域を認め,内部に静脈石と思われる低信号領域を認めたため咬筋内血管腫を疑い,口外法による腫瘍摘出術を施行した。病理組織検査にて血管腫の診断であった。術後は審美的・機能的に問題なく経過し,口外法による確実な摘出が有用であった。
  • 村上 大造, 松吉 秀武, 蓑田 涼生, 鮫島 靖浩, 湯本 英二
    2009 年 19 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは3例の小児・若年者(19歳以下)甲状腺乳頭癌症例を経験し,主に治療方針について文献的考察を加えて報告する。3症例とも広範な両側頸部リンパ節転移を有し,1例に多発性肺転移,また,残りの2例にも肺野に小結節陰影を認めた。全例に甲状腺全摘出術,両側頸部郭清術を行い,1例は患側の反回神経浸潤を認めたため,神経切除のうえ神経再建術を行った。また,全例,術後にI131大量療法を施行した。多発性肺転移例は現在も肺野に結節陰影を認めているが,治療後16年経過し明らかな増大傾向はない。また,1例に術後鎖骨下リンパ節にI131の集積を認めたが,リンパ節径の増大傾向やサイログロブリン値の上昇がないため,現在は外来にて厳重経過観察を行っている。全例生存し,日常生活に支障を来す合併症は認めていない。小児・若年者甲状腺乳頭癌の場合,腺内転移,リンパ節転移,肺転移の頻度が成人症例よりも高いという特徴がある。そのため,甲状腺全摘出,徹底した頸部郭清術を行い,必要に応じてI131大量療法を施行する必要があると考えられる。
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