頭頸部外科
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20 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
日本頭頸部外科学会創立20周年記念式典
シンポジウム1
新しく立ち上がった頭頸部がん専門医制度をめぐって
  • 甲能 直幸
    2010 年20 巻1 号 p. 5-7
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    わが国における専門医制度に関する歴史は1962年4月に発足した日本麻酔指導医制度がはじまりである。その後,日本医学会に加入している48学会によって学会認定医制協議会が発足し2001年4月に専門医認定制協議会と名称が変わり組織の強化が図られた。2002年4月,厚生労働省が規定した外形基準を満たしていれば学会が認定した専門医広告の告示が可能になった。専門医認定制協議会も組織の改変が行われ名称も変更され現在は社団法人日本専門医制評価・認定機構となっている。2009年10月には専門医あり方委員会から提言が示され12月には専門医制度整備指針が示された。専門医制度の現状での問題点は多々あるが基本は,トレーニングに基づいて習得した医師の知識・技能・態度を総合的に判断し,その証としての専門医認定が国民に理解され国民の利益に繋がるものでなくてはならない。
  • 丹生 健一
    2010 年20 巻1 号 p. 9-12
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
  • ―米国のシステムを通して学べること―
    中島 寅彦
    2010 年20 巻1 号 p. 13-16
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    頭頸部がん専門医は,多岐にわたる頭頸部がんに対する治療法に関する幅広い知識および医療倫理を併せ持ち,かつ手術を中心とした最新の頭頸部がん集学的治療を実践しなければならない。さらには頭頸部外科学,Head and Neck Oncologyの分野におけるリーダーの育成が本専門医制度の目的でもあり専門医の到達目標といえる。本稿では米国の頭頸部外科専門医制度(Head and Neck Surgical Oncology Fellowship)を紹介しながら,頭頸部がん専門医の到達目標について述べた。
    また専門医育成のための指定研修施設の認可にあたっての考え方,および認可の状況について紹介した。
  • 吉本 世一
    2010 年20 巻1 号 p. 17-21
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    十分な専門医を確保するには効率よい教育システムが不可欠であり,そのためにはカリキュラムが重要な意味を持つ。頭頸部外科学会認定頭頸部がん専門医制度における研修カリキュラムでは,手術手技のみならずがん治療の広範囲な知識や技術を効率的に習得できるように定められている。また各個別目標は研修の進捗を評価できる具体的な表現になっている。一方でカリキュラムや評価が教育の全てではなく,優秀な人材を多く集めるためにはメンターシップの重要性が挙げられる。今後はカリキュラムの定期的な見直し,研修医の「国内留学」,指導者の海外研修などが検討されるべきであろう。
  • 鎌田 信悦
    2010 年20 巻1 号 p. 23-27
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    頭頸部がん専門医制度の目的は高度の専門技術をもって国民医療福祉に貢献することにある。この崇高な目的を実現するためには個々の専門医の熱意と技量は不可欠であるが,最も重要なことは専門医が業務に没頭できる環境作りである。認定研修施設は症例の確保に努力する必要があるものの,個々の努力には限界もある。専門医の労働環境整備には大学間の壁,地域の壁を取り除き,真の意味での「頭頸部がん診療連携拠点病院」を創設することであり,これが専門医制度の成否を決めることになるであろう。頭頸部がん専門医制度の目的実現には日本耳鼻咽喉科学会,日本頭頸部外科学会さらには日本頭頸部癌学会の支援が必須である。
臨床セミナー2
小児耳鼻咽喉科疾患の取り扱い
  • 市村 恵一
    2010 年20 巻1 号 p. 29-32
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    小児の副鼻腔炎について,日本鼻科学会編「副鼻腔炎診療の手引き」と,現在作成を終えて発行寸前となっている「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン」試案を中心に述べる。副鼻腔炎の診断は臨床症状とファイバースコピーを中心とした所見で行い,画像は必須ではない。急性副鼻腔炎の治療は起炎菌が共通するため,急性中耳炎と基本的に同じであるが,局所処置ができる分だけ有利である。急性副鼻腔炎の眼窩合併症の治療は抗菌療法が主になるが,眼窩骨膜下膿瘍例で8歳以上の内側例,その他の部位の例,眼球突出のある例,あるいは保存療法抵抗例については手術適応となる。
ビデオセミナー1
中耳手術:押さえておきたいコツ
ビデオセミナー2
喉頭手術:押さえておきたいコツ
  • 田村 悦代, 岡田 信也, 渋谷 正人, 竹尾 輝久, 和田 吉弘, 福田 宏之, 飯田 政弘
    2010 年20 巻1 号 p. 41-45
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    声帯内自家脂肪注入術は,片側喉頭麻痺のみならず,声帯萎縮や溝症などの声門閉鎖不全疾患に対するリハビリテーション手術として広く臨床応用されている。
    そこで,筆者らの行っている声帯内自家脂肪注入術の方法を報告する。
    1.脂肪採取部位:頬部脂肪体を利用する。
    2.注入部位
    1)片側声帯麻痺:声帯膜様部中央よりやや後方から針を刺入し,声帯筋中央から外側を目標とした深さに注入する。
    2)声帯溝症や声帯萎縮:声帯膜様部中央で,筋層の浅い部分と粘膜に注入する。
    3.注入器具
    1)注入針:喉頭注入用の長さ28cm,18Gを使用する。
    2)注入器:電動注入器を使用して,一定速度で徐々に注入する。
ランチョンセミナー2
進歩を遂げる放射線治療
  • 三橋 紀夫
    2010 年20 巻1 号 p. 47-55
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    高齢化社会を迎えたことや放射線治療や化学療法が進歩したことで,がん治療に「切らずに治す」というパラダイムシフトが起こっている。そこで,今世紀に入って急速な進歩を遂げている放射線治療について,物理学の進歩がもたらした治療機器の進歩と,生物学の進歩がもたらした放射線増感の両面について概説する。今後,さらに放射線治療が進歩するためには,放射線物理学の進歩に伴って発展してきた新しい放射線治療技術のさらなる充実に加えて,機能画像診断学や放射線分子生物学の進歩が必須と考えられる。
原著
  • 能田 淳平, 濱田 昌史, 松本 昇, 宋 碩柱, 兵頭 政光
    2010 年20 巻1 号 p. 57-61
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    幼齢の閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(以下OSAHS)症例に対する外科的治療の安全性を検討するため,2004年4月より2008年12月までに当科にて治療をした147例を年少群(0~3歳)と年長群(4~6歳)に分けて比較検討した。検討項目は口蓋扁桃摘出術及びアデノイド切除術の手術時間,術中出血量,術後肺野異常陰影の出現,後出血の有無,術後在院日数である。その結果,年少群のアデノイド切除術において有意差をもって手術時間が短く,出血量が少なかった。他の検討項目には有意差がなかった。以上より幼齢の症例においても,OSAHSに対する外科的治療を安全に行えると結論した。
  • 大高 隆輝, 坂東 伸幸, 野村 研一郎, 高原 幹, 林 達哉, 原渕 保明
    2010 年20 巻1 号 p. 63-68
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    食道に発生する腫瘍は癌腫がほとんどを占め,良性腫瘍は比較的稀である。今回頸部食道に発生した神経鞘腫の1例を経験したので報告する。症例は69歳女性,左甲状腺腫瘍を指摘され,経過観察していたが,増大傾向があったため精査した。CTでは甲状腺と頸部食道に腫瘤を認め,それらの境界は不明瞭であった。内視鏡では食道右側壁の隆起が認められた。甲状腺腫瘍と食道腫瘍とが併存している可能性を考え,手術を施行した。甲状腺腫瘍は頸部食道と容易に剥離可能であった。拡張した食道を切開し,内腔を観察したところ食道壁内側から有茎性の腫瘤を認め,摘出した。病理組織診断では腺腫様甲状腺腫と食道神経鞘腫であった。
  • 酒井 あや, 石政 寛, 辻 裕之
    2010 年20 巻1 号 p. 69-74
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    リンパ管腫は胎生期における原始リンパ嚢の遺残組織より発生する。90%が2歳までに発症し,成人になって本症を認めることは稀である。今回われわれは,成人の耳下腺から発生したリンパ管腫症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。
    症例は,64歳男性。主訴は右耳下部腫脹。1年前より右耳下部の腫脹を自覚していたが,放置していた。他科受診時に指摘され,精査,加療目的に2008年11月20日初診となった。既往歴は45年前,窓ガラスに右顔面を強打し,血腫を形成した。初診時現症は右耳下腺に3cmの可動性のある軟性無痛性腫瘤を触知し,顔面神経麻痺は認めなかった。CT,MRIでは右耳下腺に境界明瞭,内部均一な隔壁構造を有する円形嚢胞性腫瘤を認め,耳下腺嚢胞性病変を疑い,2009年3月12日全身麻酔下右耳下腺部分切除術を施行し,現在,再発は認めていない。
    成人の耳下腺に発生した嚢胞性腫瘤の鑑別として,本疾患も考慮する必要があると考えられた。
  • 小野 智裕, 嶋根 俊和, 森 智昭, 古矢 彩子, 小林 斉, 三邉 武幸
    2010 年20 巻1 号 p. 75-79
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    甲状腺分化癌,特に乳頭癌,濾胞癌は進行が遅く生存率が高い。また進行癌であっても適切な手術を行うことで死亡する例は少なく,姑息的な手術でも長期間の生存を可能にすることができると言われている1, 2)。しかし腫瘍浸潤のために気管,喉頭,食道等を圧排し,生命予後を短くすることがある。また,気管の狭窄や圧排により,手術時に気道の確保が困難となる可能性があるため,術前に気道確保の方法について十分に検討する必要がある。
    今回我々は気道狭窄をきたし,手術時に気道確保が困難な甲状腺乳頭癌(T4aN1bM0)に対し,全身麻酔導入時に経皮的心肺補助下に気管切開を行い,気道確保した後,腫瘍を摘出,救命し得た症例を経験したので報告する。
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