頭頸部外科
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25 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著
  • 山田 光一郎, 田中 信三, 平塚 康之, 隈部 洋平, 渡邉 佳紀, 吉田 尚生, 吉松 誠芳
    2015 年 25 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    目的:耳下腺囊胞性疾患における病理組織型の特徴,穿刺吸引細胞診,術中迅速病理診断の有用性について検討した。
    対象:2004年4月~2013年3月の9年間に,大阪赤十字病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて施行された耳下腺手術症例のうち,術前MRIにて囊胞性疾患が疑われた48例。
    結果:良性腫瘍は33例,悪性腫瘍は7例,非腫瘍性囊胞は8例であった。悪性の鑑別に対する有用性として,穿刺吸引細胞診は正診率78%,感度20%,特異度100%,術中迅速病理診断は正診率89%,感度43%,特異度98%であった。
    結論:囊胞領域の存在は,穿刺吸引細胞診,術中迅速病理診断の感度を低下させる原因となる。
  • 近藤 敦, 黒瀬 誠, 氷見 徹夫
    2015 年 25 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    手術治療を行ったstage III,IV下咽頭進行癌29例について検討した。手術術式は下咽頭・喉頭全摘術が27例で,喉頭温存下咽頭部分切除術が2例であった。疾患特異的5年生存率は60.5%であった。29例中15例に術後照射を施行したが7例で再発転移を認めた。予防的頸部郭清については術前にN0またはN1と診断した症例においては健側の予防的頸部郭清が省略できる可能性が示唆された。また全体の潜在的頸部リンパ節転移陽性率は13%であった。ルビエールリンパ節転移症例5例全例に対して術後照射を施行したが4例で再発転移をきたした。ハイリスク症例に対する術後補助療法として化学放射線療法を考慮する必要性が考えられた。
  • 槇 大輔, 森 泰昌, 岸下 定弘, 小林 謙也, 松本 文彦, 吉本 世一
    2015 年 25 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    血液疾患に対する造血幹細胞移植後の口腔扁平上皮癌(OSCC)症例について報告する。症例は男性5例,女性1例で年齢は37~68歳(中央値46.5歳)であった。全例が造血幹細胞移植後に慢性GVHDを発症しており,移植から3~16年(中央値9年)経過後にOSCCを発症していた。全例が高分化型扁平上皮癌であり,背景には強い慢性炎症所見を認めたため病変の境界の判定が困難であった。そのため切除安全域の設定および術後追加治療の必要性については議論の余地がある。造血幹細胞移植後に慢性GVHDが遷延する症例にはOSCC発症のリスクがあるため,注意深い診察と経過観察が必要である。
  • 上田 勉, 工田 昌也, 古家 裕巳, 樽谷 貴之, 竹野 幸夫, 平川 勝洋
    2015 年 25 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    stage I,II舌扁平上皮癌における頸部の取り扱いは,いまだ標準化されていない。当科では予防的頸部郭清を施行せず,治療後は慎重な経過観察をする治療方針をとってきた。今回当院で一次治療として組織内照射を行ったstage I,II舌扁平上皮癌症例105例について,口腔内超音波検査により計測した深部浸潤の程度(深達度)や腫瘍最大径(長径)なども含めてretrospectiveに検討を行った。頸部非制御に影響を及ぼす予測因子としては,年齢,深達度,および長径が挙げられた。頸部非制御に影響を及ぼす因子がある場合は,予防的頸部郭清術を施行しないときはもちろんのこと,予防的頸部郭清術を施行する場合でも,他の追加治療の必要もあると考える。
  • 嶋根 俊和, 江川 峻哉, 櫛橋 幸民, 池谷 洋一, 下鑪 裕子, 中村 泰介, 河村 陽二郎, 藤居 直和, 北田 良裕, 小林 斉
    2015 年 25 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    2005年4月から2014年3月までの間に当科で被膜間摘出術を施行した31例の頸部神経鞘腫のうち,迷走神経由来であった10例を対象とし検討を行った。術後に神経脱落症状を認めた症例は3例であった。2例で喉頭麻痺(嗄声・嚥下障害)が認められ,1例で喉頭麻痺(嗄声・嚥下障害)と咳嗽発作が認められた。喉頭麻痺だけを生じた2例は術前に神経症状を認めておらず,1例は永続性の声帯麻痺,1例は3か月で改善した。喉頭麻痺と咳嗽発作を生じた症例は,喉頭麻痺は3か月で改善したが咳嗽発作は改善しなかった。この症例は,術前から咳嗽発作のみが認められていた。
    迷走神経由来の神経鞘腫は,摘出により嗄声,嚥下障害,咳嗽発作などをきたす可能性があり,術後患者のQOLに重大な影響を及ぼすため,手術には十分なインフォームドコンセントと手術経験が必要と考えられる。
  • 鈴木 健介, 藤澤 琢郎, 八木 正夫, 宮本 真, 阪上 智史, 友田 幸一
    2015 年 25 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    口腔・咽頭癌切除後の組織欠損に対するPGAシート+フィブリン糊被覆法は,疼痛軽減,出血予防,瘢痕拘縮軽減などの利点から,近年その有用性が報告されている。当科で2012年12月から2014年7月までに本法を施行した口腔・中咽頭癌45例を対象とした。舌癌26例とその他19例との比較では,PGAシート脱落時期は舌癌が平均8.0日目,その他が平均13.3日目と舌癌症例においてPGAシートが早期に脱落する傾向を認めた(p=0.0953)。術後出血は舌癌26例中9例(34.6%),その他19例中1例(5.3%)と舌癌症例において有意に術後出血を多く認めた(p=0.0497)。経口摂取開始時期とPGAシート脱落時期には有意な相関関係を認めず,早期経口摂取は可能と考えられた。
症例
  • 櫛橋 幸民, 嶋根 俊和, 寺崎 雅子, 江川 峻哉, 石橋 淳, 北田 良裕
    2015 年 25 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    腎明細胞癌は血流豊富な腫瘍であり全身のあらゆる組織へ転移する事で知られている。その中でも頭頸部への転移は比較的まれであるが,文献報告ではしばしば散見される。今回われわれは腎摘出術後26年を経て右副咽頭間隙,右肺S10,膵体尾部へ同時期に転移を来した腎明細胞癌の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。
  • 松本 信, 西村 文吾, 大原 浩達, 中山 雅博, 廣瀬 由紀, 田中 秀峰, 田渕 経司, 和田 哲郎, 原 晃
    2015 年 25 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性。いびきを主訴に受診した際に中咽頭左側壁の腫脹を認め,MRIで左副咽頭間隙に6cm大の腫瘤を認めた。全身麻酔下に経頸部的に腫瘍にアプローチを行い,腫瘍を摘出した。病理組織検査では紡錘形の腫瘍細胞が増殖しており,異型を呈する核を認め,免疫染色でCD21が陽性であり,濾胞樹状細胞肉腫と診断した。PET/CT検査ではその他の部位に明らかな異常集積を認めず,副咽頭間隙リンパ節原発の濾胞樹状細胞肉腫と考えられた。術後照射60Gyを行い,術後1年8か月現在,明らかな局所再発・遠隔転移を認めていない。
  • 尾股 丈, 松山 洋, 正道 隆介, 山崎 洋大, 植木 雄志, 山崎 恵介, 山本 裕, 髙橋 姿
    2015 年 25 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域に再発を繰り返した類上皮血管内皮腫の1例を報告する。症例は40歳女性で,過去12年間に頭蓋骨左側,下顎骨左側,左耳下腺,鼻中隔左側の類上皮血管内皮腫に対して複数の医療機関で摘出術を施行され,経過観察目的に当科紹介となった。初診時は頭頸部領域に腫瘍性病変を認めなかったが,経過中に鼻中隔左側に腫瘤が出現した。生検にて類上皮血管内皮腫再発の診断となり,腫瘍切除術を施行した。腫瘍径と病理組織像から低危険度群に分類されたため,追加治療をせず経過観察を行っており,術後18か月再発を認めていない。本症例では頭頸部領域の片側性再発を繰り返しており,今後も慎重な経過観察が必要と思われた。
  • 池田 雅一, 松塚 崇, 鈴木 政博, 西條 聡, 仲江川 雄太, 松井 隆道, 大槻 好史, 大森 孝一
    2015 年 25 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    頸部郭清術後に発症した乳糜漏症例に外科的治療を計画したが,創部感染から敗血症を来たし,全身状態増悪のため外科的治療が困難となった。そこで頸部郭清術後24日目からオクトレオチドを投与した。オクトレオチド投与開始後11日目でリンパ液の排液は停止した。オクトレオチドはソマトスタチンのアナログ製剤である。ソマトスタチンは消化管蠕動運動と消化管ホルモンの分泌を抑制する作用を持つペプチドホルモンである。オクトレオチドは治療効果を早期に判断でき,副作用が少ないため全身状態が悪い症例にも適した治療である。乳糜漏治療における有効な治療法であると考える。
  • 前田 恭世, 崎谷 恵理, 吉原 俊雄
    2015 年 25 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは第1鰓溝由来の鰓性瘻孔再発例を経験したので報告する。症例は2歳女児。出生時より右下顎の陥凹を認め,同部位の腫脹と感染を繰り返し,某病院形成外科で手術施行。耳側に向かう瘻管を認めたため,腫脹部のみの切除とデブリドマンで終了となり,その後も感染を繰り返していた。当科紹介され手術施行。瘻管は顔面神経内側を走行,外耳道軟骨に付着し盲端となっていた。病理では重層扁平上皮とともに皮膚付属器(毛包)を有しており,組織学的・解剖学的・発症年齢の見地から第1鰓溝由来の鰓性瘻孔と考えた。
  • 柴田 博史, 久世 文也, 水田 啓介, 青木 光広, 伊藤 八次
    2015 年 25 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    肝転移で発見された両側悪性頸動脈小体腫瘍の1例を経験したため報告する。症例は25歳男性。他院内科腹部CTで肝腫瘤を指摘され,外科にて切除術を施行。病理検査で傍神経節腫肝転移と診断された。FDG-PETで頸動脈分岐部に集積を認め,原発の精査加療目的で当科紹介。画像から両側悪性頸動脈小体腫瘍と診断し,術前にMIBGシンチグラフィ,balloon occulusion testで評価後,摘出術を一期的に施行した。顕微鏡下でのイリゲーターバイポーラが剥離に有用であった。術後長期間経過しても再発の報告があり,慎重に経過観察する必要がある。
  • 武田 淳雄, 清水 顕, 船戸 宣利, 野本 剛輝, 勝部 泰彰, 田村 理恵, 伊藤 博之, 鈴木 衞
    2015 年 25 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    化学放射線療法は頭頸部癌,特に局所進行頭頸部癌の治療において,局所制御率が高く,喉頭機能温存の点で優れた治療法である。しかし化学放射線治療は皮膚障害,粘膜障害,造血障害などの早期合併症や喉頭壊死,骨壊死,嚥下障害,放射線誘発癌などの晩期合併症を招く可能性がある。中でも喉頭壊死は保存的加療で制御困難な場合,喉頭全摘出術を要することもあり慎重な経過観察が必要である。
    今回われわれは喉頭癌に対して化学放射線療法後,約10年を経て喉頭狭窄から喉頭壊死,頸椎壊死および椎骨動脈破綻と次々に重篤な合併症を併発し,治療に難渋した症例を経験した。本症例のように重篤な合併症を重複した報告はないが,晩期合併症は感染を契機に発症するため,同一照射野に同時に症状が出ることを念頭に置いた治療が重要であると思われた。
  • 大和谷 崇, 杉山 健一, 岡村 純, 瀧澤 義徳, 高橋 吾郎, 三澤 清, 水上 高秀, 峯田 周幸
    2015 年 25 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    甲状腺癌による広範囲気管合併部分切除および気管壁の再建を行い,術後経過良好であった症例を経験したため,報告する。
    症例:25歳男性。他院にて甲状腺右葉の乳頭癌の診断で手術を施行された。術中気管および右反回神経に癒着があり,完全切除できず,当科紹介となった。初診時は右声帯の正中位での固定を認めた。術前の造影CTで,気管右側に造影される気管を内側へ圧排する腫瘤を認めた。
    手術および経過:3か月後に残存腫瘍と気管合併部分切除,肋軟骨を用いた二期的気管壁の再建を施行した。気管の右側は膜様部,左側は気管輪1/3まで,上は輪状軟骨から約6気管まで合併切除した。肋軟骨を採取し,一部を縦2枚に割り軟骨板を作成,1枚で気管側壁を形成,残りを後の前壁再建用に気管孔左側の皮下に埋没した。約半年後,気管孔閉鎖術を施行した。皮下に埋めた軟骨を含めた皮弁を作成し,気管前壁を閉鎖した。皮膚欠損部は両側頸部の皮弁を前進させ閉創した。術後気管の形態は良好で呼吸苦もなく,発声も良好であった。
  • 端山 昌樹, 吉波 和隆, 津田 武, 大崎 康宏, 川島 貴之
    2015 年 25 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    含歯性囊胞はその囊胞壁に埋伏歯を有し,その歯冠を腔内に含む囊胞性疾患である。埋伏歯と囊胞の全摘出が一般的な治療であり,上顎洞への進展例では通常のESSでは操作が及ばないことから犬歯窩アプローチを要することが多かった。今回われわれは上顎洞含歯性囊胞に対して,Endoscopic Modified Medial Maxillectomy(EMMM)の手法を用いて手術を行った2症例を経験したので報告する。本術式は鼻腔側壁に粘膜弁を作成し,下鼻甲介,鼻涙管を含む鼻腔側壁を温存できるのが特徴である。いずれの症例も本術式を用いることで上顎洞内病変を直視鏡で観察することができ,埋伏歯の摘出と囊胞の開窓または全摘出が可能であった。2症例を比較し,文献的考察を加えて報告する。
  • 矢吹 健一郎, 佐野 大佑, 西村 剛志, 百束 紘, 荒井 康裕, 小松 正規, 田口 享秀, 折舘 伸彦
    2015 年 25 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    症例は77歳 男性。下咽頭癌への化学療法併用放射線療法後の局所再発に対して,咽頭喉頭頸部食道摘出および遊離空腸再建術を施行した。術後22日目に遊離空腸・食道吻合部の瘻孔を認め,トラフェルミンスプレー塗布,大胸筋弁による充填術,吸水性ポリグリコール酸シートによる被覆等の処置を行ったところ瘻孔は縮小したものの残存した。術後140日目に施行したフィブリン糊の瘻孔内充填術によって瘻孔は消失,常食摂取可能となり退院した。
    術後瘻孔は頭頸部癌術後の難治性合併症の一つであり,放射線治療後症例では特に時間を要する。救済手術後に生じた難治性瘻孔に対してフィブリン糊の瘻孔内充填術は治療法の一つとなりうると考えられた。
  • 上前泊 功, 林 健太郎, 髙橋 邦明
    2015 年 25 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    壊死性降下性縦隔炎(DNM)は発症すると進行性で重篤化し,高い致死率が報告される。今回われわれはDNMから救命されるも,治療後に嚥下障害を併発した2例を経験した。いずれの症例もCTでDNMと診断され,ドレナージ,気管切開,抗生剤の使用により軽快した。経口摂取開始後,嚥下障害を認めたため,長期的な嚥下障害を想定し胃瘻造設した。嚥下障害改善までの時間は異なるものの徐々に改善し,経口可能となった。DNM治療後に嚥下障害を併発した2例につき若干の文献的考察を加え報告する。
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