頭頸部外科
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26 巻, 2 号
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教育パネルディスカッション
学会誌へ投稿するためのよい画像撮影のノウハウ
  • 田中 秀峰
    2016 年 26 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    鼻科領域の手術は2000年代以降,経鼻内視鏡手術が一般的となった。経鼻内視鏡下での画像撮影は,鼻腔という半閉鎖空間の中で行われる。そのため,レンズが汚れやすい点,焦点距離がダイナミックに変化するため,フォーカスをこまめに合わせる必要がある点,内視鏡画面の上下軸方向がずれやすい点など,良い投稿画像を鼻内視鏡で撮影する場合に基本的に改善しておく事項がいくつかある。そのほか内視鏡そのものの特徴として,独特の色特性やハレーションへの対応についても解説する。
教育セミナー1
  • ―基本と上達のポイント―
    児玉 悟
    2016 年 26 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    鼻中隔矯正術は耳鼻咽喉科頭頸部外科医にとって,基本的な手術手技である。大切なことは内視鏡下に良い視野で手術を行うことであり,内視鏡を保持し,視野を確保し,適切な位置に粘膜切開を行い,軟骨膜を確実に切開した上で,軟骨膜下に鼻中隔軟骨から粘膜剥離を行い,ワーキングスペースを広く作成する。これらのステップは鼻中隔矯正術のルーティンであると言っても過言ではない。症例や病態に応じて,適切な術式を選択し,丁寧に手術を行っていくことが重要である。
教育セミナー2
  • 西野 宏
    2016 年 26 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    日本は高齢化社会を迎えつつある。本論文は1970年1月から2014年9月までの間に自治医科大学附属病院で治療を受けた75歳以上のstage III/IV 頭頸部癌患者(甲状腺癌を除く)125人を後方視的に検討した。放射線治療は46人に行われ,3人が嚥下性肺炎とせん妄で治療が中断となった。放射線治療終了1か月以内に6人が合併症を生じた。嚥下性肺炎,せん妄,脳梗塞,急性腎不全であった。34人に手術が行われた。喉頭全摘出術が11人,咽頭喉頭食道切除・再建術が10人,舌切除・再建術が3人,切除術が10人であった。舌切除・再建術3人のうち2人は嚥下性肺炎を認めた。緩和治療は28人に選択された。Performance status 2以上の場合には治療関連合併症出現の割合が多かった。
教育セミナー7
  • ―特に手術適応の判断について―
    和田 哲郎
    2016 年 26 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    聴神経腫瘍の治療方針には,(1) 経過観察 (wait and scan),(2) 放射線治療,(3) 摘出術がある。しかし個々の症例でどれが最善かの選択は容易ではない。耳鼻咽喉科の役割はまず早期に診断することである。更に,診断から治療前の過程では,治療方針決定のガイドとしての役割が求められる。手術リスクが強調されすぎるのは妥当ではない。超音波手術器や顔面神経モニタリングを用いて,より安全な手術を目指すことは可能である。治療から治療後の過程では,神経機能を守る立場から積極的に関与していくことが重要である。耳鼻咽喉科単独で完結できる疾患ではないが,求められる役割は多岐に及ぶ。更に多くの耳鼻咽喉科医が積極的に関わっていくことが望まれる。
教育セミナー8
  • ―病理医からのメッセージ,新しい疾患概念―
    浦野 誠
    2016 年 26 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    頭頸部外科臨床に病理診断は不可欠であるが,患者に益する病理診断のためには適切な検体の取扱い,肉眼診断に基づく手術材料の切り出しと標本作製,適切な病理依頼書の臨床情報をもとにした顕微鏡診断が求められる。これらは病理サイドのみで成り立つものではなく,頭頸部外科医と病理医との協調が極めて大切である。特に病変の肉眼像に習熟することは画像診断や病理所見を理解するのに役立ち,腫瘍径,TNM分類の情報を臨床医-病理医間で共有することも重要である。また近年,頭頸部領域における新しい腫瘍概念として乳腺相似分泌癌,NUT midline carcinomaが認知されつつある。
原著
  • 岡崎 雅, 白倉 聡, 畑中 章生, 得丸 貴夫, 藤川 太郎, 服部 夏子, 山田 雅人, 別府 武, 欠畑 誠治
    2016 年 26 巻 2 号 p. 187-190
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    2000年から2013年までの13年間に埼玉県立がんセンターで治療を行った頭頸部原発Neuroendocrine carcinoma (NEC) の8症例について臨床的検討ならびに腫瘍細胞の細胞学的悪性の指標の一つであるKi-67標識率について検討を行った。6例に集学的治療を行った。疾患特異的5年生存率は40%であり,遠隔転移の制御が今後の課題と考えられた。Ki-67標識率が80%未満の症例では比較的予後が期待できる傾向があり,Ki-67標識率と臨床的悪性度がある程度相関する可能性が示された。
  • 小田切 奨太, 松岡 伴和, 芦澤 圭, 森山 元大, 増山 敬祐
    2016 年 26 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    口蓋扁桃摘出術は,耳鼻咽喉科医が最初に取得する手術手技の一つであるが,必ずしも安全とは言い難く合併症の術後出血も決して少なくはない。そこで,手術手技の改善や合併症の軽減を目的に,口蓋扁桃摘出術にカメラシステムを導入しその有用性について検討を行った。執刀医,指導医,看護師を対象とした術後のアンケート調査では,カメラシステムを用いた口蓋扁桃摘出術では,術野の共有ができるメリットが明らかとなった。また,カメラシステム未使用例との術後出血の頻度の比較においては,術後出血が減少する傾向にあり,かつ術後24時間以内の出血は認めなかった。
  • 中原 晋, 花本 敦, 安井 俊道, 竹中 幸則, 山本 佳史, 福角 隆仁, 道場 隆博, 猪原 秀典
    2016 年 26 巻 2 号 p. 197-201
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    甲状腺全摘術直後の副甲状腺機能低下症に対し,ファレカルシトリオールだけで血中カルシウム濃度をコントロールする際の有効性や安全性について前向きに検討した。甲状腺全摘術を施行した20例を対象としたが,解析対象は12例だけとなった。経口カルシウム製剤なしで9例(75%)がコントロール可能であり高い有効性を示したが,高リン血症を10例(83%)に認め,その他の合併症頻度も比較的高かった。年齢や術前のインタクト副甲状腺ホルモン値を予測因子とすることでより安全にコントロールできる可能性はあるが,基本的には個々の症例において検査結果を見ながら適切に用量を調節していく必要がある。
  • ―舌深動脈からの動注―
    富所 雄一, 本多 伸光, 三谷 壮平, 高木 太郎, 西原 江里子, 中村 光士郎, 鵜久森 徹
    2016 年 26 巻 2 号 p. 203-209
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    放射線療法併用超選択的動注化学療法を行った進行舌癌11例の臨床的検討を行った。病期はIII/IV=4/7,T分類はT2/T3/T4a=3/6/2,N分類はN0/N1/N2=3/3/5であった。11例のうち5例では舌深動脈から動注を行った。観察期間は16~80か月(中央値50か月)であった。全対象例の局所制御率は81.8%(9/11),リンパ節制御率は100%(8/8)であり,疾患特異的3年生存率は100%であった。舌深動脈からの動注例では,G3以上の有害事象は粘膜炎が2例,貧血1例,白血球減少が1例であった(すべてG3)。舌深動脈からの動注は安全に行うことができ,リンパ節の制御に寄与する可能性が示唆された。
  • 石井 貴弥, 原 毅, 出浦 健太郎, 西村 晃典, 井川 達也, 四宮 美穂, 草野 修輔, 三浦 弘規, 久保 晃
    2016 年 26 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,頭頸部がん患者37名45肢(男性33名,平均年齢58.9歳)を対象とし,手術後早期の肩関節外転可動域の影響因子を明らかにすることである。手術前から手術後1か月の肩関節外転可動域の変化比(%外転ROM)を算出し,57.6%以上を改善群(25肢),57.6%未満を非改善群(20肢)として分類した。%外転ROMの影響因子として検出されたのは,手術後合併症の有無と両側郭清の有無,手術後の肩甲骨脊椎間距離および握力の4項目であった。なかでも,両側郭清の有無のオッズ比が最も高値であった。よって,%外転ROM改善のためには,両側郭清の有無を考慮しリハビリテーションを実施する必要がある。
  • 櫛橋 幸民, 池田 賢一郎, 江川 峻哉, 池谷 洋一, 小松崎 敏光, 古川 傑, 水吉 朋美, 浅野 雅世, 小林 一女, 嶋根 俊和
    2016 年 26 巻 2 号 p. 217-225
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    口蓋に発生する腫瘍は,その他の頭頸部領域に生じる腫瘍と比べて発生頻度が比較的少ない。口蓋粘膜には小唾液腺が広く分布しており,口蓋に発生する腫瘍は小唾液腺由来の腫瘍が多く臨床像から良性,悪性の判断をするのが困難な場合も少なくない。また小唾液腺腫瘍における組織型としては大唾液腺に比して悪性腫瘍の比率が高いことが特徴とされる。今回われわれは,昭和大学頭頸部腫瘍センター開設後1年で5例の口蓋腫瘍に対して手術加療を行った。組織型は粘表皮癌が2例,多形腺腫が2例,腺様囊胞癌が1例であった。5例に関して臨床的検討を行ったので文献的考察を加え報告する。
  • 小針 健大, 鹿野 真人, 佐藤 廣仁, 髙取 隆
    2016 年 26 巻 2 号 p. 227-233
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    輪状軟骨切開術は,輪状軟骨前方部分の鉗除を行う気道確保術であり,皮膚から気管までの距離が短く甲状腺の操作も必要としないため,安全性の高い術式である。われわれは,前頸部膿瘍,出血傾向,短頸および上気道狭窄の緊急度が高く通常の気管切開術が困難な4症例に対し輪状軟骨切開術を施行し,術後に切開孔を閉鎖しえた。これまで輪状軟骨の損傷は肉芽形成の可能性があり推奨されていなかったが,全例で声門下の肉芽増生はなく経過している。輪状軟骨切開術は,手術リスクの高い症例に対しても安全に行える術式であり,また術後に切開孔を閉鎖する場合でも必ずしも肉芽形成による気道狭窄などの理由とはならず,有効な術式であると考えられた。
症例
  • 関根 瑠美, 松脇 由典, 鷹橋 浩幸, 小松崎 貴美, 鴻 信義, 小島 博己
    2016 年 26 巻 2 号 p. 235-242
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    Chondro-osseous respiratory adenomatoid hamartoma(COREAH)は鼻副鼻腔発生の骨軟骨化成を伴う過誤腫である。組織学的には主に成熟分化した上皮組織と間質組織が無秩序に増殖しているポリープ様の良性腫瘤で,疾患の制御には病変の可及的切除を要する。今回われわれは慢性副鼻腔炎を合併したCOREAHを2例経験した。COREAHの報告は全世界で6例と非常にまれな疾患であるため,その疾患的特徴はあまり知られていない。本症例およびこれまでの報告例をまとめて,同じ鼻副鼻腔の過誤腫であるRespiratory Epithelial adenomatoid hamartoma(REAH)やNasal chondromesenchymal hamartoma (NCMH)と比較し,疾患的特徴を考察した。
  • 佐藤 伸也, 森 祐輔, 横井 忠郎, 高橋 広, 山下 弘幸
    2016 年 26 巻 2 号 p. 243-246
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    今回,甲状腺手術のNerve Integrity Monitoring(NIM)使用例において声門下腫脹をきたした症例を2例経験したので報告する。症例1は49歳女性で,甲状腺全摘D2a郭清施行後に呼吸苦を生じた。経鼻喉頭内視鏡検査で声門下腫脹を確認したが呼吸苦は徐々に改善し,気切することなく術後5日目に軽快退院した。症例2は81歳女性で,甲状腺全摘D1郭清施行直後より喘鳴を生じた。経鼻喉頭内視鏡検査で右声帯麻痺と声門下腫脹を確認した。呼吸苦の訴えが強く,入院期間が延長したが,気切することなく術後7日目退院した。NIM tubeの外径が太く硬いことが2例の声門下腫脹の主たる原因と考えられた。
  • 小松﨑 敏光, 江川 峻哉, 池田 賢一郎, 櫛橋 幸民, 池谷 洋一, 浜崎 泰佑, 古川 傑, 水吉 朋美, 浅野 雅世, 小林 一女, ...
    2016 年 26 巻 2 号 p. 247-251
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,原発性肺癌疑いの精査でCT検査を行ったところ甲状腺に腫瘍を認め,穿刺吸引細胞診の結果悪性腫瘍と診断し,摘出術を行った。病理組織学的結果は,肺癌からの転移性甲状腺癌と診断した症例を経験した。
    転移性甲状腺癌は進行すると,呼吸や摂食に関係し,その後患者のQOLを著しく低下させるため,原発腫瘍の治療状況,全身状態,PS,腫瘍を摘出してその症例のQOLが向上するかどうかを総合的に判断して治療にあたるべきと考えられた。本症例のように急激な増大を認める症例もあり摘出時期を逸しないことも重要と考えられた。
  • 宮澤 徹, 下出 祐造, 河野 美幸, 安井 良僚, 三輪 高喜, 辻 裕之
    2016 年 26 巻 2 号 p. 253-258
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    喉頭気管食道裂は呼吸窮迫,誤嚥性肺炎等の症状を呈し,同時に多臓器形成異常を合併することが少なくない。今回,われわれは,重症心奇形を合併することにより早急な心臓手術が必要であるが,Gross C型食道閉鎖症を伴う喉頭気管食道裂Ⅳ型により誤嚥性肺炎が遷延し,心臓手術の施行が困難である症例を経験した。本症例では患児が1歳7か月の時点で喉頭気管分離術を施行することにより肺炎のコントロールが良好となり,心奇形に対する手術が無事施行され,現在は退院し自宅で生活している。多臓器形成異常を合併する本疾患に対する治療は,呼吸器症状に対する治療ばかりでなく,各合併奇形に対する手術時期・術式などを総括的に考慮することが重要である。
  • 松尾 美央子
    2016 年 26 巻 2 号 p. 259-263
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    甲状腺分化癌は,外科切除にて良好な予後が期待できる疾患だが,一部には局所進行が激しく手術不能な症例が存在する。一方,甲状腺未分化癌は,手術,放射線,抗癌剤治療の集学的治療を行っても,平均生存期間数か月と予後不良である。このような甲状腺癌の治療に,最近レンバチニブが新たな治療選択肢として追加となった。症例1は手術と放射線治療後に多発肺転移が出現した71歳の甲状腺未分化癌症例で,レンバチニブ投与にて,病変は6か月間不変を維持している。症例2は,87歳の反回神経麻痺を伴う甲状腺乳頭癌で,ヨード治療未実施のまま,レンバチニブを投与。6か月間病変は増大なく,かつ反回神経麻痺は改善した。以上,現段階ではその適応において慎重投与に入る2症例の投与経験について報告した。
  • 御子柴 卓弥, 宇野 光祐, 小澤 宏之, 伊藤 文展, 渡部 佳弘, 冨田 俊樹, 小川 郁
    2016 年 26 巻 2 号 p. 265-269
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    今回,喉頭浮腫をきたしたHER2陽性腺癌による原発不明頸部転移癌の1例を経験したので報告する。症例は55歳女性で,両側頸部腫脹を主訴に当院受診した。経過中に喉頭浮腫を認め,保存的加療も奏功せず,顔面・頸部浮腫も出現した。頸部リンパ節生検では腺癌の転移を認め,腫瘍細胞はHER2陽性であった。同時に行った皮膚生検では癌性リンパ管症の所見を認めた。全身精査の結果,原発不明頸部転移癌と診断された。腋窩リンパ節転移も認め,乳癌に準じて抗HER2薬を含む化学療法を行ったところ,浮腫は著明に改善した。喉頭浮腫の鑑別として癌性リンパ管症を念頭におくべきである。また,HER2陽性原発不明腺癌では,腋窩リンパ節の評価を踏まえた上で抗HER2薬の投与を検討すべきである。
  • 大森 裕文, 若崎 高裕, 西 憲祐, 力丸 文秀, 藤 賢史, 福島 淳一, 檜垣 雄一郎, 益田 宗幸
    2016 年 26 巻 2 号 p. 271-276
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    縦隔気管孔造設後に腕頭動脈出血を来し,血管内ステントグラフト留置にて止血を得られた症例を経験した。症例は61歳男性。頸部食道癌cT4N2M0に対し根治的CRTを施行し,一旦はCRを得たが治療後5か月で原発巣再発rT3N0M0を来し,咽頭喉頭頸部食道全摘出術,両側頸部郭清術,遊離空腸再建術とあわせて縦隔気管孔を造設した。術後10日目に縦隔気管孔の気管断端壊死を契機として腕頭動脈の露出を認めたため,壊死した気管を切除し大胸筋皮弁を充填し直した。しかし再手術後15日目,縦隔気管孔の腕頭動脈が露出していた部位付近から腕頭動脈出血を来した。一時止血を得た後に腕頭動脈内に血管内ステントグラフトを挿入し,救命し得た症例を経験したため報告する。
  • 大上 研二, 戎本 浩史, 酒井 昭博, 杉本 良介, 槇 大輔
    2016 年 26 巻 2 号 p. 277-281
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    中咽頭癌に対する経口的低侵襲手術は様々なものが報告されている。しかし前壁癌に対しては,術野の展開や,視野,機器の問題から困難であった。近年われわれはTransoral Videolaryngoscopic Surgery(TOVS)を導入し,今回前壁癌に対して応用したので報告する。症例は69歳男性,食道癌,下咽頭癌の経過観察中に中咽頭前壁,舌根部やや左よりに表在癌を指摘された。生検で扁平上皮癌と診断,T1N0M0舌根部癌に対してTOVSで腫瘍を切除した。FK-WO retractorによる舌根部の術野確保と先端彎曲ハイビジョンビデオスコープにより,腫瘍の安全確実な切除操作が可能であった。
手技工夫
  • 児嶋 剛, 庄司 和彦, 堀 龍介, 岡上 雄介, 藤村 真太郎, 奥山 英晃, 北野 正之
    2016 年 26 巻 2 号 p. 283-288
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2016/11/17
    ジャーナル フリー
    甲状腺の手術には皮弁挙上,層の剥離,血管の処理,神経の剥離など頭頸部外科における基本的手技がすべて含まれる。腫瘍を摘出する,反回神経麻痺等の合併症を起こさないというのは当然のことであるが,基本的な手術であるからこそ修練度の違いにより手術内容に差がでてくる。われわれは従来の手術をより洗練,工夫することで皮膚切開をさらに短くする手術を行っておりそれについて報告する。すべての症例に適応があるわけではなく,術者も限定してはいるものの,皮膚切開が短いほど創部が目立ちにくいのは自明のことであり,基本的な手技は従来の方法と変わらないため創部の綺麗さ,術後の治癒について考えると有意義な手術である。
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